伸ばした手


……ああ、掃除しないと。畳が駄目になっちゃいますねぇ。
間の抜けた声を上げながら、最後のペットボトルを放った転坂恭助は、笑顔のまま綾鷹の肩を蹴った。
足で軽く押しやっただけだ。たいした抵抗も無く綾鷹は仰向けになった、が。

綾鷹は普段はつまらなさそうに細めている目を、これでもかと言うくらいに見開いていた。
これは、この赤は本当に転坂なのだろうか。綾鷹の知る彼は、ぞんざいに扱ったりなど一度としてしなかったのに。
先生どうしたんですかぁ、と手が伸びてくる。

やめろ、くるな。

ずりずりと後ろに身じろぐと、伸びてきた手が逆光に晒されて表情が読めなくなった。


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bkm
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