小説 | ナノ
Life5-2
この辺知らないんだといえば、レノはお勧めというカフェを教えてくれた。
そこで苺のスムージーとキャラメルコーヒーを勝手に広場のベンチに座った。
お店じゃなくて広場のベンチにしたのはレノの希望。

どうやらレノも俺と同じく連れとはぐれたらしい。
だから広場にいれば向こうが見つけてくれるだろうと言って広場に来たんだけど……。

「レノは携帯持ってないのか?」

苺のスムージーを吸いながら、ふと思った疑問を口にした。
この世界は基本的に大人は誰でも携帯を持ってるようだった。
クラウドもティファも持ってる。
俺は遠出もしてないし、ティファの店の手伝いくらいしかしないし、家に固定電話あるしで持ってない。
リーブの手伝いでたまに魔物退治するから、収入はないわけじゃないけど凄い不定期だし。
あとはティファからお小遣い程度に貰うけど、居候で家賃ただだからあんまり貰わないようにしてる。
だから、俺は携帯を維持する財力も必要もないから持ってない。
……まあ、持っていたらクラウドにさっと電話かけて合流できんだけどさ。

でも、俺はともかくレノが携帯を持ってないようには思えなかった。
大人だし。だからそう聞いてみたんだけど……。

「ん?携帯か?持ってるぞ、と」

レノは携帯をポケットから取り出すと俺に見せた。
黒い携帯と、ワインレッドの携帯だ。

「二つもあんの?」
「一個は仕事用。もう一個はプライベート用だぞ、と」
「へえ。仕事用は会社支給とか?」
「そうだぞ、と」
「二つもあるのって面倒くさいッスね」

俺がそう言えば、レノは可笑しそうに顔を歪めた。
そんなに可笑しいことを言ったつもりはないけど……大人の事情ってのは大変なのかも知れないとスムージーをすする。

視線を前に向けて、俺もクラウドの姿を探すけど……都合よく見つかるわけないか。
まあ、別荘への帰り道は知ってるから戻ればいいだけだし。

「なあ、携帯あるなら電話すればいいんじゃないのか?」
「お互い番号を知らないぞ、と」
「連れなのに?」
「仕事用の携帯番号は入ってるぞ、と」

レノは黒い携帯を振るとそれを俺に放った。
なんで放ると思ったが、受けとり折り畳まれた携帯をみる。
外付けのディスプレイは真っ暗になっていて……。

「なんだよ。電源入れてないんスか?」
「休暇中だからな。プライベートな時にはつけないぞ、と」

ぱかりと携帯を開いてもやはり、ディスプレイは真っ暗で、電源が入っていない。

「連れって同僚とか?」

携帯を返せば、レノはストローを噛みながらこくりと頷いた。
連れが同僚で、番号知らないって……プライベートの番号を知らないってことだよな。
なんか変なの。

俺はそう思いながら、また広場を行き交う人々の群れに目を向けた。
確かにここは人がよく通るけど、人が多すぎてクラウドは通らないんじゃないだろうか。
たぶん、クラウドは別荘に帰ってるよな。

そう思い、ぐっとスムージーを飲みこもうと思ったら、横から視線を感じたので振り返った。

「なに?」
「いや?少年も誰か探してるのか?」
「ああ、うん。仲間とはぐれちゃってさ。俺は携帯持ってないし」

俺がそういえば、レノも前を向いて誰かを探すように視線を巡らせた。

「買わないのか?」
「携帯ッスか?今のところは予定はないかな」
「ふーん……」

レノはそう言うと、仕事用だという携帯の電源を入れた。

「あ、なに?やっぱり同僚に連絡するんスか?」

俺がそう言えば、レノはにぃっと笑って携帯に耳をつけた。
コール三回で、ぶつりという音がして向かう方に切られたのがわかった。

……同僚に切られたのか?悲しいだろそれ……。
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bkm
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