小説 | ナノ
Life5-1
失敗した。
きっとクラウドに怒られるだろうなと思いながら、今はそんなこと考えてる場合でもないなとも思う。

目の前にはごろつきがひーふーみーよー……いっぱい。
最初は二人だから楽勝と思ってたのにさ。
あとからぞろぞろ出てきやがって!しかも獲物ありかよ!
こっちは手ぶらだっつーの!

ただの観光だったから、別荘にフラタニティを置いて来ちゃったよ!

……俺、素手のやり取り苦手なんだよな。
スコールとかフリオと組合いたことあるけど、あの二人って本当になんでも出来るよな。
職業柄なんだろうけどさ。
ていうか、あの二人じゃそもそも俺みたいな状況にならないか。

うー……スピラはシンに対するやり方から敵対するようなことはあっても悪人っていない世界だったよな。
人々が寄り添って生きていかなきゃいけない世界だったからな。悲しみが溢れてたけど、その中でも優しさに満ちた世界だった。
なにせ謎の初対面の男の面倒も普通にみてくれるようなところだからな。

だから……まぁ……スリとかあるなんて全く考えてなくて。
クラウドに治安悪いから気を付けろと言われてたのにな。

ぼんやり歩いてたらクラウドとはぐれて、しかもスリとかにあっちゃって。
踏んだり蹴ったりだ。

そんな風に思いながら、ナイフを取りだしてきた男にちょっと足を引く。
くっそー!!
腹立つ!魔法使ってやろうか!?

俺はそう思いながら、詠唱する暇もなくとりあえず相手の攻撃を回避してからカウンターを喰らわせる。
攻撃が外れた時の隙は大きい。
だからそこを的確に狙っていけば……。

「ぐっ……!」


後ろから来た衝撃に足を踏ん張り、僅かに体を捻ることで相手の攻撃を避けた。
けれど紙一重なそれは大事に至らなかった程度で、頬を掠めた熱さに切られたと分かる。

ああ、くそっ!!
複数人は面倒くさい!!

背中に走った衝撃に、囲まれるべきじゃないと判断し壁を背にする。
けどこれじゃ回避が難しいなと思いながら、ぐっと拳を握りなおす。

えーっと、スコール先生の格闘技レッスンではこういうときはどうするって言ってたっけ?

そんな風に思い出に逃げそうになった時、じゃりという砂を踏む音が聞こえた。
続いて響いた打撲音に俺は驚いたけど、音を作り出してる男は表情ひとつ変えない。

ごろつきどもは驚いて喚いてるけど、それもあっという間に聞こえなくなった。
なにしろ全員が地に沈んだからだ。

「……えーっと…?」
「大丈夫か、と」


ごろつきをボコボコにした特殊警棒で肩を叩く男はこれはまた見事な緋色の髪をしていた。
顔はスコールやクラウドには劣るがイケメンだ。目付きがちょっとキツすぎるのか。
けど、このくらいの方がワイルドだといえばワイルドか。

黒いスーツの男はごろつきの連中がの懐から財布を抜き取るとそれを俺に投げて寄越す。

「わっ!」
「少年のものだろ、と」

黒いスーツの男の言葉に俺は頷く。
幸い中身はまだ抜きとらえてなかった。

「助けてけてくれてありがとッス」
「気にするな、と」

この口調は癖なのだろうか。
変わっているが……まあ、助けてくれた恩人だしな。

「俺はティーダ。あんたは?」
「レノだぞ、と」
「レノか。宜しくな!!」

俺がそう言えば、レノは少しだけ驚いた表情をして、それからにっと笑った。
その笑みがニヒルな感じがして、やっぱりクラウドとはタイプが違うなと感じる。

「あ、そうだ。なんかお礼したいッス。大したことできなけど」

俺が『飲み物とか奢るんでいいッスかね?』と聞けば、レノはにっと笑って頷いた。


bkm
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