:: ▼航空参謀

▼航空参謀 シリアス


生きるのが辛かった。
どうしてこうなったのだろうと考えても考えても、もう熟考することすら出来なくなっていたから、結果など出る訳がない。

好きな人が居たけど、もう居なくなってしまった。
突然現れた、いわば運命的な出会いだったのかもしれない、非人間的な容姿に忽ち惹かれた私は虜になって―自分だけが一方的に好きになっていたかもしれないけど―愛していた彼を、突然消えた彼の背を見ることもなくただただ絶望しかない世界に浸り佇む。

大惨事であったシカゴのこともあるし、それにおいては家族と友人の生命を何個も失った。私自身も治る程度の怪我をした。
しかしこれほどのショックの連続。脳天を打ちのめされた感覚は未だ治らない。治る筈がないのだ、私は死んだも同然であるし、もうこの世に居ても無意味である。あの人に会えないのならば、尚更だ。どうしようもない。


―あの人の正体を、私は薄々と気付いている。きっと、エイリアン。それも、人類の敵側の。
あの人の発言を聞いていれば、人間に嫌悪感を持っているのは確実だから。あの、人間離れした身体能力、容姿―何より、赤い瞳が印象的過ぎた。忘れられない色。濃く深く、残虐な火を灯した色。それらがある限り、私はあの人を"人"とは呼んでいない。

にもかかわらず、私に接したあのヒトは、どうして私に近付いたのだろう。あれだけ離れといて、人に近付くだなんて、私が優越感と好意に浸る要素しかない。
気に入られることで満足して、それ以上なんて望まず。一緒に居られるだけで、傍らに立っているだけでどんなに心地好かったか。
とにかく好きになった。好きだった。あのヒトが。愛していたよ、本当に。

しかしシカゴはエイリアン敵側からの和解で終わった。和解という名の殲滅。
彼は生きていない。彼のリーダーしか残っていないことを、私は知っている。彼が死んだということを知っている。何故なら帰って来もしないし、彼の声が聞こえないからだ。

願わくはもう一度会いたいけど、生憎これっぽっちも期待していないし、私はもう覚悟をしている、このビルの上から落ちたら、きっと楽なれると信じてやまないという覚悟をしているから。
辛いの、貴方が居ないから。
死にたいの、貴方が居てくれないから。
涙なんて既に枯れたているから、もう痛みで泣くことはないから、安心して逝ける。私は貴方に会いに逝けますか。


重力に身を任せて一瞬で終わるであろう痛みを想像しながら、風に打たれて空を舞う。そこらへんの人がどう反応するかなんて知ったことではない、私はただ貴方に会いに行くだけのことをしているのだから。
嗚呼、落ちてる。初めての感覚だ。私を抑えるものは、何もない。そう、無かったのに。

急に持ち上げられて、轟音と共に抱えられて、私は完全に宙を舞った。どうして。何が起きたの。目を開けたいけど風で開けられない。



――――
スタスクが(すくって)帰ってくる

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2014.07.19 (Sat)


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