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▼シリアス将校 輪廻転生ボツ


あの鋼が、聞いたこともない音をたてて壊れてゆくのは、なんて恐ろしいものだろうか。
普段から頑丈で固くて、私たち人間を護るような役目を果たす鉄銀が、脆いと感じたことはない。事故でぺちゃんこになった状態の車とかはテレビでしか見たことがないし、いつも無残な姿を見て、ああ凄い衝突だったんだな、と、言い方が悪いが私にとってはテレビはほとんど他人事だった。もちろん同情は、したけれども。
だからこそ余計に、背筋が凍ってしまったし、まじまじと見詰めてしまったのかもしれない、彼の胴体がいとも簡単に離れてしまったのを。

叫び声は喉を通ったのは感じたが自分自身が聞いたとはいえないくらいに掠れていた。そんな私の悲痛の叫びを嘲笑うかのように、敵軍のリーダーは彼を無造作に地面に落とす。私は更に脳天を打たれたような衝撃を受けた。とにかく名を呼んで、呼んで、駆け寄る―――。


ふと目が覚めた。
しかし私は咄嗟に目を瞑った。ものすごく、後味が悪い、恐ろしい夢だったのである。
欝すらと開けた視界にはいつもの天井に、私の部屋。重々しい上半身を起こして、溜まっていた息を吐き出した。


嗚呼、何回目だろう。
あの、金属のような生き物が何かに引き裂かれた瞬間に、夢の中の私が思い切り叫んで、駆け出して寄って行った時に、"彼"を見た途端にくらりと視界がブラックアウトする悪夢。
悪夢なのかどうかも微妙なのだが…あれは、人の死に際に居るときの、絶望した感覚。


(確か、ジャズって)


私は叫んでいた気がする。
しかしその名に見覚えなどなく、ましてやあの世界の建物などは見たこともない。アメリカ西海岸にしか住んだことのない私は、一体、夢で何処へ行っていたのだろうか。

見当する余地もなく、再びやって来た睡魔に私は瞳を閉じる。

頭にこだます、"彼"が最期に私を呼ぶ声。つまり"彼"は私を知っているということ。
そこまではいつもたどり着く。"彼"は私を知っていて私は"彼"を知らない。寧ろそれだけが、夢の中でわかる事実だ。

夢というものは過去現在未来に関係すると言われているが、"私"に何か起因するものでもあるのだろうか。―やはり、何も思い付かない。


――――


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2014.07.19 (Sat)


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