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君が居る朝/Megatron
そう、この時期は毎日のように、起きた時は嫌になるくらいむしむしとしていて憎たらしいほど、暑い朝なのに。
今日は、隣が銀一色で埋め尽くされていた。それもそうだ、何たってあのメガトロンが同じベッドに居るのだから。
けれども私は、それを思い出するまで時間がかかった。綺麗な銀色を確認して、少しばかり湿り気が減り冷たさが漂うような雰囲気を纏う彼が、居ることを忘れかけていたからだ。
まじまじとそれを見詰めて、数秒、赤い瞳がおもむろに開かれるのと同時にとくんと胸が鳴る。
首筋に張り付く髪が若干鬱陶しく思うけど、それより静かな涼しい朝だと、純粋に思った。
もう起きるのか、と、とんとんとした口調の低音が部屋に木霊す。それも心地好くて、そうだね、と私は曖昧な返答をして腕を彼の方へ伸ばした。ひんやり。
『なんだ、』
「何でもないよ、」
そのまま私は機嫌良さげに彼の上にゆるりと乗っかっる。だらんと胸に頭を預けていれば、いきなり近付いて来た唇に驚いたものの、一先ずゆっくりと応えておく。
お互いに段々と密接して、満足げに離れてゆくその軌跡の先で、それは次第に優美に孤を描いて、瞳はスッと細められる。相変わらず厳かながらも気品あるものだ。
とすん。
『今日も暑くなりそうだな。』
「メガトロンは良いなぁ、暑くなくて。」
『羨ましいか、』
「羨ましいよ。」
形態逆転した背後で、私は小さく苦笑する。
やれやれといった具合に、このまま暑さに負けてられないと決心はしているものの、やる気は起きそうになく。
これにもメガトロンは人間は複雑だなと軽く鼻で笑い、私の髪に指を通し、くれぐれもバテるでないぞ、と忠告めいたものを口にする。
「えー、」
『"えー"とは何だ"えー"とは。仮にお前が倒れたならば、俺の仕事も増えるのは確実であろう。』
「そうだけど、」
『まさかバテるつもりだったのか?』
そう、首筋に近付いて来ながら怪訝げに訊いてくるものだから、私はちょっと面倒くさそうに、バテたらバテたらで、メガトロンと居られるし、と言い放つ。
それもそうだな、と今度はさも納得したかのように、何かを思い付いたように感嘆する。
次いでリップ音が鳴りちくりと肌が痛み、身動ぎしたところで私の名を呼んだ。
なに、と応えると、それはそれは優雅に口角を上げてみせる。
『望むならば、俺が直々に疲れて動けなくしてやっても良いぞ、』
「それは…遠慮しておくよ、」
『そうか、』
遠慮など要らんのにな、と何処か残念げに、けれども愉しそうに紡ぐメガトロン。
では俺が介抱すると言ったらどうだ、と意味深に続いたおかげで、私は吹かざるを得ない。
彼はその終始余裕そうな表情から、ちょっと虚を突かれたようなものへ変化してみせた。
「メガトロンが私を看病とか?」
『何が可笑しい、仮にお前が倒れたら俺が看るしかあるまい。』
「ああ確かに、」
チラッとラチェットとかが頭に浮かんだが、その逞しい首に私は腕を絡ませるともう雑念は捨てる、こつりと額同士が当たったところでキスしてほしい、と囁いた。
すると間近で赤が笑い、言ったのは私なのに羞恥が込み合げてきたのは、不思議なものだ。
暑いのを忘れて熱く愛す夏の朝――――
サイト休止中に司令官とお留守してくれた破壊大帝でした
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2014.03.07 (Fri)
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