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独り占めしたいだけ/Optimus prime



「あっ、」


今まで自分が持っていたものが、ふとした瞬間にひょいと視界の端に揺れるのを目撃した。
それは、パステルカラーの水色が途中でほんのりと、違和感無く赤く変化している、所謂かき氷のアイス。
ザクザクとした氷の食感がこの夏場には丁度良く、わざわざ機械を用意してまで塊を砕いて食べるよりかは圧倒的に楽にかき氷(に似たような物)が食べられるということで、私はよく好んでいる。
味は見ての通りソーダといちごだ、私の食べていたものでほとんどいちごが無くなっているけれど。


『もう3本目じゃないか、』

「オプティマス…!」


そのアイスの行方を辿ると、いつの間にか私の背後に居た彼が肩眉を下げて苦笑していた。
次いで片手に収まっているそれに私の目線が行ったことに気付いたのか、食べ過ぎは良くないと言っただろう、と、まるで私が幼子のように柔らかめな口振りでこれ以上食べちゃ駄目だと制止する。
しかしそんなことで、暑さを打開するべく冷たい物を取り込んでいる私が、押し込まれるわけがない。


「返してオプティマス、それ私の命綱、」

『駄目だ。』

「かーえーしーてー」

『だーめーだ、レノックスもアイスの摂取し過ぎで腹を壊したんだ、君にはなってほしくない。』

「大丈夫、私はならないから、」


だから返して。

そう言って、半ば子供っぽいなぁとか思いながら思い切りありったけに手を伸ばす。けれども身長のせいでアイスには及ばず。
何となく最初から解っていたけど、あからさまに届かなくて悔しい。でも相手がオプティマスだから、私は渋々と服の裾を引っ張るに至る。

むー、と膨れっ面になるのを自覚しつつあると、いい加減にしなさい、と彼は若干呆れ気味にやれやれと微笑む。


『君の代わりに私が食べておくから、』

「そういう問題じゃないのー、」


そう言って、暑いーと続く私の傍らで、今まで私が食べていたというのに、それを躊躇なく口に含むものだからじわりと奥ゆかしい恥ずかしさを感じた。
暑いのに、熱くさせるなんて。

ごまかすように、ソーダだけ一口、とねだってたけど、お見通しかのように駄目だと言っただろうとあっという間に平らげてから、彼は再び困ったように笑う。
私は無言になってから、むすっとする。ふいっ、と彼を視界から外して、一瞥してから、


「まさかオプティマス、私がアイスしか見向きもしないからアイスに嫉妬とか、」


ぶっきらぼうに、頬を膨らました。これこそ子供であるようだ。しかし改めるつもりはない。


だが、今のこの発言は、暑さのせいにしておく。この時の私の発言は、何故アイスが奪われなければいけなかったのかという執念と、何故あのオプティマスが頑なにアイスを渡さなかったのかという原因を、暑さのせいで正常運転していない思考で考えた愚かしいものであった。


ぽつりと呟いてから、おもむろに彼の方を私は見た。奪ったアイスの罪は大きいぞ、なんてじとりとした目線で彼の方を見たのだが、彼は平然としていて、爽やかに、


『そうだな、君の唇が欲しかったのかもしれない。』


確信犯かというふうに、―その時普段は穏やかなアクアブルーが真っ直ぐに私を射抜いていて―まだ冷たさの残る私の唇に、そっと、しなやかな指が乗っかり、その縁をすらりとなぞったのだった。





垣間見えた君の舌に欲情したことは確かなことだ





――――
サイト休止中に拍手でお留守してくれた司令官でした


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2014.03.07 (Fri)


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