:: ▼D軍の誰か

▼クリスマス


昼間の、がやがやと騒がしかった町は、少し静寂さを含めた夜へと移行したのを感じた。未だに人影の途絶えないイルミネーションのあるストリートを、その先にある大きなクリスマスツリーを、その周りにある明かりの灯る建物を、私は白い息を吐きながらゆったりと眺めた。

今私は、そんな町のシンボルである展望台の、普通より少し下の"隅"で、彼の腕の中に居る。壁に寄っ掛かる態勢の彼からはじんわりと暖かいものが伝わってきて、たまに彼の一定の間隔で為される吐息が私の髪を揺らす。それには流石に熱は含まれてはいないけども、私は確かに暖かさを感じるのである。

しかし、そもそもどうしてこんな高い所に? ―それは、人混みを人一倍嫌う彼が取った、サプライズとも言える行動であった。誰一人とも私たちに近寄ることは出来ない。時間も空間でさえ邪魔されない。"人"ではない彼だけができる、私への夜景のプレゼント。
明日の為の昼間の買い物を済ませ帰宅した矢先に、手を引かれて此処に降り立った時には、肌寒さなんて頭からすっ飛んでしまった。寧ろ、熱い。この安定した密着感が、とても心地好い。そして何より、


『……満足したか?』


この低音が、じんわりと心に響いて、私を窺ってくる紅い瞳に全てが惹かれるのである。




――――
過去memoより


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2014.02.22 (Sat)


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