「今日のシズちゃんさー…」
いつものように学校の屋上で昼休みを過ごしていると、臨也が満面の笑みを浮かべながら話しかけてきた。
こいつの二言目には必ずと言ってもいい程に静雄の名前が出てくる。
当の本人は否定しているが、静雄のことが好きなんだと思う。じゃなきゃ、毎日飽きず、静雄に喧嘩吹きかけるか?
元々、人間が大好きだと言っている臨也だが、静雄のことだけは嫌いだと言う。それって、静雄は臨也にとって特別視されてるってことだろ。
そんでもって、すごい静雄のことが気になって仕方なくて、ちょっかい出さないといられない。こんな歪んだ愛情表現しかできないんだよ、 こいつは。
そんなこいつが好きだという俺も相当歪んでるんだろうが…
「ドタチン、聞いてる?」
「ん?あぁ、相変わらず静雄はタフだな」
「だよねー、本当に化け物だよ。シズちゃんだけは愛せれないよ」
そう言いながら校庭で暴れている静雄を眺めている臨也の目は愛おしいものを見る目だった。
そんな視線を向けられる静雄がすごく羨ましく感じる。だから、俺だけを見ていてほしくて呟いた愛の言葉。
「俺はお前を愛せるよ、イカれたお前でも、」
だけど、その言葉は虚しくも春風にかき消されてしまって臨也には届かなかった。
「ん?何か言った?」
「いや、なんでもない」
もう一度言い直せばよかったのかもしれない。でも、こいつの笑顔を見たら留まってしまった。
(歪んだ笑みに魅せられて)
叶わぬ恋をしてしまった俺は憐れなペテン師なんだろう。
Fin..
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