いつものように校舎の屋上で横になっているのは風紀委員長の雲雀恭弥。
その横で小さな黄色の小鳥、通称ヒバードが彼の愛して止まない並中の校歌を歌っていた。
だけど、彼は不機嫌であった。

その大きな理由はいつもならこの時間にやってくる人物がここ最近、彼の前に現れないからだ。当の本人はそのことにまったく気付いてない様子で、きっと伝えたところで認めないだろう。

「ヒバリ!ヒバリ!」

ヒバードが彼の名前を連呼する。何度呼んでも反応のない彼は心ここに在らずな状態だった。

「ヒバリ!ヒバリ!ヒバリ!」
「‥‥」

(イライラする、)

居ても居なくてもイライラさせられる。
こんな感情に振り回されるのが初めてな彼だから、一人で葛藤するものの、この苛立ちが意味するものを分からないでいた。
その葛藤の中、微かに聞こえるヒバードの声。

「ヒバリ、ヒバ‥」
「恭弥、」

その声に混じって一人のたしかな声が頭の中に響いた。
ヒバードの呼び方には一切反応しなかったのだけれど、その呼び掛けに待っていましたと言わんばかりに寝転んでいた身体を起こした。

「何か用?」

そっけなく返したつもりだった。だけど、少し緩む顔は隠しきれなくて。
数日ぶりに呼ばれた名前に熱くなる耳に速くなる鼓動に戸惑いながらも彼は声のする方へ視線を送る。そこには彼の苛立たせる原因の人物が笑顔を見せていた。

「ちょっとは素直になれるようになったか?」
「は?」
「オレの顔を見て嬉しそうに笑ってるじゃねぇか!なっ?」
「嬉しい顔なんてしてないし、笑ってない!」

彼の顔は少し赤らんでいて図星のようだ。
それを認めずに否定する彼にディーノは声を上げながら笑い、彼の頭を力強く撫でた。

「ホントに恭弥は可愛いな」
「くっ‥咬み殺す!」

彼は照れながら小さな笑みをみせていて優しい微笑みで、じゃれ合う二人はまるで恋人そのものだ。

この恋情に彼が気付くのはまだまだ先のことだけれど‥‥



Fin..

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