▽ 03
「なあマックス、名字が言ってたのをやるとどうなるんだ?」
「そんなの僕がわかるわけないじゃん、馬鹿じゃないの半田。ま、やるだけやってみようよ」
少し呼吸を変えるだけだしさ。
練習を再開したサッカー部の皆さん、はーい火の鳥ドラゴン竜巻炎なトルネードに魔神となんでもござれな感じに超次元サッカーが目の前にあります。怖い。
んで、今のところ練習は問題ない。まあ一年生辺りはズレてきてるけど、めんどいからスルーしよう。
目に見えて皆ズレが出るのはまだ先かなー…それまで暇だから木野さん達の手伝いしようか。
「木ー野さーん、何か手伝うことある?」
「あれ、名字さんは練習に付き合わなくても…?」
「あ、名前でいーよ。僕には超次元サッカーなんてわかんないし、どのみち僕の出番はこの後だからね」
「そう?よくわからないけど…だったらドリンク作るのを手伝ってもらえるかな?あと、私も秋でいいよ」
にこっと笑う秋は天使だと思った。ということでれっつお手伝い!
++++
「うわ、これをいつも二人で?大変だねー」
「とか言いつつ、先輩の作業かなり早いですよ?」
「マネージャーとして来てほしいくらいだわ…って、」
「終わりー」
話してる間にドリンクも作り終わった。春奈ちゃんが先輩すごい!って見てきたので敬礼したよ、ノリで。
「半分の時間もかかってないわ…名前ちゃん、本当にマネージャーやらない?」
「それは無理だけど、暇な時に手伝いにくるよー」
のほほんとした空気が流れていた部室に、外から染岡くんのくそっ!という声が響いた。ちっ、この至福の時を邪魔するなんて…でも、そろそろ僕の出番か、な?
三人で部室の外に出ると、染岡くんが悪態をついてた。他のメンバーも、少し焦ったような顔で練習を続けてるけど、やっぱり何か、動きがズレてる。
「またタイミングが合わなくなっちゃったみたいね…」
「最近いつもですよね、練習の後半になると皆さん何か…って、あれ?」
春奈ちゃんが何かに気づいたらしく、松野くんと半田をじーっと見た。気づいた秋もそっちを見て、しばらくしてあっと声をあげた。
「あの二人、前半と同じままできてる…?」
「ですよね!他の人は必殺技の威力とか落ちてきてるのに!」
そろそろだ。こっからは僕の出番。秋にホイッスル貸してと言うと、少し不思議そうな表情を浮かべつつ快くホイッスルを渡してくれた。
息吸ってー、いーちにーさんっ、
ピィィィィィィ!!
「サッカー部集合ー、駆け足ー!」
思い切りホイッスルを吹いて叫んでやったら、一番遠くにいたはずの守が一番にすっ飛んできた。次いで松野くん達が来て、キャプテンが動いたことで他も動いてくれて、うんやっぱ僕凄い。睨んでくる染岡くんを無視して、まず二人に尋ねた。
「松野くん半田くん、どうだった?」
「え?あ、何かタイミングが合ったぜ!」
「途中からまたズレたけど…長く走れたよ。あと、僕のことはマックスって呼んで」
「わかったよマックスー」
きらきらしながら報告する半田、さりげなく名前呼びなマックス。わお、僕の予想は当たってたと。
「確かに、マックスと半田は皆より長くズレなかったな…名前、何したんだ?」
守が真剣な顔で聞いてきた。やっぱりキャプテンなんだね、守。鬼道くんも先を促すようにこちらを見てきた。
「僕はただ、呼吸の仕方を変えるように言ったんだよ」
「呼吸の?」
「うん。あのさ、サッカー部の皆は」
「呼吸ができてないから、体力をフルに使えていない…そうだったわね?」
「…へ?あ、その通りです夏未さん」
台詞の途中でどこかから出てきた夏未さん、と俯いてる水希と、びっくりしたような表情を浮かべてる柚。夏未さんはこちらまで歩いてくると、ざわついたままのサッカー部に向かっていきなり宣言した。それはないよ夏未さん、急過ぎる。
「サッカー部はこれから約三週間、吹奏楽部のスケットに入って呼吸を学んでもらうわ。響木監督もそうするようにとのことです」
「…えぇぇぇ!?」
ファンファーレは高らかに(え、何?心当たりってサッカー部だったの?)
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