響け僕らの | ナノ


▽ 02


というわけで、今日から運動部のスケットを引き抜くことになったんだけども。
当たり前というか何と言うか…とりあえず、外にいる二人の様子を見る限り引き抜きは難航してるらしい。

僕は留守番してろって言われたから、いつも通り外を見ながら練習。もともとサックスは僕一人で掛け持ちだから練習はいつも一人。一応もう一人いるけど、数えるくらいしか来てないっていう幽霊部員。最後に来たのは確か体育祭、


「おーい名前ー!」

「え?」


何か突然呼ばれた。びっくりした。廊下を見た。守だった。以上。


…じゃない、何で守が校内にいるのさ?扉を開けて入ってきた守は砂だらけの泥まみれ、練習してる時のままの格好。ちょ、楽器が汚れちゃうよ!


「守、練習じゃないの?あとこれで手と顔は拭いて」

「サンキュー、明日返すな!今は休憩中だけど、鬼道達はミーティングしてる。最近、何かタイミングが合わなくてさー」


タオルを渡してほー、と相槌を打っておく。考え事してる間に休憩に入ったんだ。それなら僕も休憩ーと楽器を置き、守は何しに来たのか聞いた。


「ねー守、何しに来」

「よし名前、一緒にきてくれ!」

「っのぉぉぉ!」


聞いた直後に手を繋がれて全力疾走、あれ、本人の意思は?というかさぁ!


「速すぎて僕足浮いてるんだけど何これ超次元、っ、気持ち悪い…」


本当何しに来たのさ守、超次元ならサッカーだけにしてよ……!


++++


んで、連れてこられたのはサッカー部の練習場所。超次元スピードで来たためまだ休憩時間は終わっておらず、へたりこんでいる僕はサッカー部の皆さんから微妙に注目されてます。そしてサッカー部美形率が半端ない!


「ま、守…こんなに急いで僕に何の用事が…うぉぉ気持ち悪い…」

「あ、言ってなかったか?」

「ふざけるなよばか」


僕の休憩時間を返せ。これで用事までふざけてたら耳元でトランペットの出せる限りで一番高い音を最大音量で吹いてやる。


「さっき夏未から連絡で、練習に名前を連れてきて付き合わせろだってさ」

「…は、何故に?それに僕も練習が」

「あと、バトラーさんが頑張ってくださいねって言ってたって」

「わかった守、サッカー部の練習付き合うよ!」


バトラーさんにはいつもお世話になってるからね、僕頑張るよ!そう意気込んで守とわいわいやってると、後ろから鬼道くんと染岡くんがやってきた。あれ、染岡くんからぴりぴりした視線を感じる。


「円堂、こいつは?」

「俺の幼なじみで、吹奏楽部の名字名前!夏未の指示で今日の練習に付き合ってもらうことになったんだ」

「どーもです鬼道くん染岡くん、はじめまして。何故かよくわからないんだけどよろしく」


鬼道くんはそうかと頷き、すぐに守に向き直る。タイミングとかが合わないってのを話してるみたいだ。
しかーし、染岡くんは僕を一瞥してこう言い放った。


「今、俺達は真剣にやってんだ。部外者が下手なことして邪魔すんじゃねーぞ」

「…はいはーい」


やばい、めちゃくちゃカッチーンてきた。カッチーンて。いやまあ部外者なのはそうだけど、そんな最初っから睨まれれば、ねえ。…ちょっとばかりやってやろうか。
幸い、隣の守と鬼道くんの話を聞いていて、夏未さんが僕に何を求めてるのかはわかったし。

なら早速やってあげるよ、練習風景は遠目からだけど確認済み。まずは…器用な松野くんと普通な半田に教えてあげよう。


「松野くんに中途半田くーん」

「中途半田違う!」

「なあに、えっと…名字さんだよね?」

「あ、そうそう。えっとねー、」


それを言うと二人とも不思議そうな顔をしたけど了解してくれた。うん、これでよし!


「よーし、練習再開するぞー!」


丁度守の掛け声で練習も再開。ちらっと染岡くんを見れば、相当不機嫌な顔。原因は部外者な僕だろうけど、吹奏楽部というか僕をナメてもらったら困るからね?


速さはMarch
(さあ、吹奏楽部と僕の力を思い知るがいいよ染岡くん!)
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