響け僕らの | ナノ


▽ コウモリの羽模様

「わーいトリックオアトリートー!お菓子お菓子ー」

「はしゃぎすぎだろ…」

「完璧にお菓子目当てじゃん」


お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞーとか言ってお菓子を貰う日、ハロウィン。なんと今年のハロウィンはちょうど日曜日、しかも部活なしの日。やっほーい!



そんなわけで現在、学校のある教室を使ってハロウィンパーティーをしています。もちろん全員仮装参加で。メンバーはお馴染み雷門サッカー部と帝国サッカー部数名、プラス、僕を含めた吹奏楽部数名です。
学校の教室でパーティー、なんて普通は怒られるだろうけど、なんとこのパーティーの主催者は夏未さんなのだ。要するにほとんど理事長公認のパーティーなため、怒られる心配はなしっていう。
夏未さんいわく、「吹奏楽部の誰かさんがやりたいって駄々をこねるでしょうから、先に準備しただけ」…だ、そう…だ。

…とりあえず全力で楽しむってことでお菓子貰いに行こうか!

++++

「そんなわけで風丸、トリックオアトリート!お菓子!お菓子!あ、守はいいからね」

「おう!」

「わかったわかった。ほら今回はケーキだぞー」

「っしゃぁぁさすが風丸いつも通り手作りだね!」


まずは毎年恒例、風丸の手作りお菓子!今回は紅茶パウンドケーキ!知ってるかみんな、例え紅茶は飲めなくても紅茶クッキーとか紅茶ケーキはおいしいんだぜ…少なくても僕はそうなんだ…!守は僕と同類(ひたすらお菓子貰う派)に分類されるためスルーします。

お菓子をゲットしたところで二人の仮装チェック。しかし風丸、普通の私服にしか見えない。いや、僕も私服という名のジャージだけれども。そして守は白い布被ってるだけ。それはあれか、もしかしてあれか。


「守はゆ……幽…霊…の仮装?」

「よくわかったな名前!」

「まさかの大当り…風丸は何?」

「…一部分だけミイラ?」

「二人ともクオリティ低いなおい」


苦笑いして服の袖をめくった風丸は、確かに腕と脚と首だけ包帯を巻いていた。あの、服の下に隠れちゃ巻く意味ないよね。
とりあえず、僕は二人から保健室の臭いがしてても気にしない。…けど、シーツは洗ってから返した方がいいと思うよ。


気を取り直して、次は誰にお菓子を貰いに行こうかと考えていると、なんか(雰囲気的に)すごそうな二人がいた。いやでもまさかあの二人が仮装なん、て。


「うぁぁぁ怖っ、えええええ!」

「おい、いきなり叫ぶな名字」


雰囲気怖くてつい叫んでしまった。クオリティ高いよ。というか鬼道さんと豪炎寺の二人が仮装しているなんて予想外すぎた。…仮装、ですよねその犬歯と頭…!


「ええと、そ、の頭とか歯はどうなってるんですか」

「…今日はワックスをな。ネジを作ったのもさしたのも夕香だ」

「俺の犬歯は春菜から渡された物だ」


鬼道さんは吸血鬼らしい。口元に犬歯をつけて、ゴーグル外してマントを装備。赤い瞳と黒い私服がよくお似合いです。似合いすぎて怖い。豪炎寺くんは頭にネジ、フランケンシュタインだろう。ごめん、頭もとい髪の毛に直接ネジ貫通とかそれ、ギャグまたは本気の恐怖にしか見えないです。

とりあえずトリックオアトリートでお菓子は貰った。叫んですいませんでした。

++++

その後もお菓子を貰いに回って、ついでに仮装を楽しんだ。
半田は犬、マックスは猫耳を装着してて面白かったけど、鹿の角つけた竜吾は厳つかった。秋ちゃん達マネージャーと水希は魔女。一年組は河童とか雪男とか…何か違う。帝国から来た辺見はデコで、咲山くんの釘バット怖かった。他と怖いの意味が違う。佐久間と柚は近寄れないから放置した。

そんな感じでだいたいのメンバーからお菓子を貰うことに成功した。しかも半数が手作りお菓子で、僕としてはかなり嬉しい。それじゃあ食べようと中央にあるテーブルに向かおうとした僕の頭に、なんか衝撃が。


「その様子だと、今年も大量みたいだな…また身長縮んだか?」

「あ、名前さんは仮装してないんだ」


衝撃の原因は幸次郎と成神の手により叩かれたことによるものだった。どうやら今来たところらしく、僕が見ている前で幸次郎は狼の耳を装着し、成神は仮装こそしてないものの、黒を貴重とした服にコウモリの羽模様のついたヘッドフォンなど、ハロウィンっぽい私服だ。


「自分で仮装するのは面倒だからさ。あと縮んでないし座ってるからだし」

「はは、気にするなよ。今年も悪戯するのもされるのもなしか?」

「え、名前さん、お菓子貰うだけ?」

「そうだよ、悪戯よりお菓子派だからね僕。とりあえず二人とも、来たからにはトリック…」

「待った名前さん、オレからトリックオアトリート」


僕の言葉を遮り、お菓子くださいと手を出した成神。待ったって、遮るのってありか。まさか僕が言われる側になるなんて…!
こちらを見て笑っている幸次郎が憎たらしい。しかもそこで、貰ったやつは駄目だからとか追い打ちをかけてきた成神。貰ったのしかないし。にやりと笑う成神に悪い予感しかしない。うわこれ何、どうなんの僕?


「…うー」

「やっぱないみたいっすね。はい悪戯決定ー」

「ななな成神ちょっと待、」

「…たまには悪戯しないとね、名前さん?」


僕の肩に腕回して(要するに抱き着いて)、笑った顔が近い。んでそのまま頬っぺたに何かの感覚して、音が。
ポカンとしている僕のすぐ目の前で、「あ、悪戯するじゃなくて悪戯されないと、か」なんてニヤニヤしててなにこいつ、う、あれ、今こいつはなに、ななにして、…っうぁぁぁ!?


「おー見事に顔真っ赤」

「あ…ぅぁぁぁぁ……!?」

「名前から離れろ成神ぃぃぃぃぃ!」


幸次郎の叫びやら誰かの呆れたような叫びやら疑問の声が様々にあがるものの、気にしている場合じゃない。回された腕の力が緩むどころか強くなったりとかして、ああもうこいつまじで油断しちゃだめだ。


コウモリの羽模様
(コウモリ?いや違う悪魔が化けた姿だよ絶対に)

++++
ハロウィン企画物!
響け…久々すぎて名字のキャラ忘れたような。
成神との絡みをということで、絡みというかオチで成神にしてみた。
10/10/31
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