響け僕らの | ナノ


▽ 七夕

「みんなー、実は僕お願いがあるんだー」

「突然だなおい」

「僕七夕やりたいー!」



今日は七月七日、七夕当日ですから!七夕らしくなんかしようよ!



「いきなりきて何言ってんだお前は」

「何さ、駄目なの?」

「駄目ってか突然すぎるんだよ馬鹿。当日にいきなりやりたいって言ってもできるわけないだろうが!」

「ちょ、馬鹿って竜吾ひどい」


一年に一回の七夕だよ?今日晴れてて天の川よく見えそうだし…しかも去年は雨で天の川見れなかったんだよ?やっぱりやりたいじゃん、短冊にお願い書いて笹に吊したいじゃないか…!
まるきり相手にしてくれない竜吾、それを見てる他のメンバー。………うう、だってやりたいんだもん…!


「…う、」

「は?」

「…う、ふぇぇぇ…」

「あー染岡が名前のこと泣かせたー!」

「なっ…待て待て俺何も悪いことしてないぞ!?」


慌てる竜吾と騒ぎ始める周り。違う、僕まだ泣いてないもん泣きかけてるだけで!だって、だってさ。


「柚は彼氏さんと七夕だし、水希は家族で七夕らしいし、母さんと父さんは旅行行ってるし…一人でなんて、寂しいから…」


むーっと自分が膨れっ面になるのを自覚しつつ、顔をあげて皆を見た。…はずだったのに、なんか視界から皆が消えた。というか塞がれた。


「もー可愛いなあ名前ってば!泣きながら寂しいだなんて可愛いすぎるよ?」

「けちな染岡なんて気にしなくていいよ名前。僕は七夕でお願いとかしたいしね。てか抱き着くなよ一之瀬」

「な、なら俺もやるぜ?」

「む…ぎゅぎゅ…!」


マックス…半田…!だけどなんも見えない、てか視界だけじゃなくて呼吸も塞がれてるんだけど、そろそろ苦し…!
ばたばたもがいていると、ばこん!って感じの凄い音が。同時に塞がれてた視界も呼吸も元に戻った。


「あたた…ひどいよ土門」

「名前ちゃん苦しがってたろ」

「ありがとうジスタ、僕七夕する前に死ぬかと思った…!」


土門、感謝。んでマックスに飛びついた。そこで倒れてる一之瀬なんて僕知らないよ。
とりあえずマックスと半田ありがとう!あ、うん?一年生もやる?ジスタと一之瀬も?てか鬼道さんあんた、その折り紙とハサミと糊の工作セットはどこから出したんですか、「マントからだが」「えええ本当に四次元マント!?」「冗談だ」ですよね。

ふはははは竜吾、これはもうやるしかないだろう!みんな願い事考えてるし鬼道さんなんて少林と一緒に笹飾りとか短冊作ってくれてるし!やるよねー?と竜吾に尋ねれば、しょうがないなと呆れた顔をされた。やったー!

じゃあまず笹がないと七夕じゃない、と、笹探しに飛び出そうとした時だ。
大きな音をたてて扉が開く。現れたのはそういえばいなかった風丸と、大きな笹を担いだ守だった。


「よっ、みんな!突然だけど、今から俺の家来ないか?七夕ぱーてぃーするんだ!」

「ま、守?」


喜べよ名前、ほとんどお前のために準備したようなもんだぜ!と笑いながら言う守。と、いいますと?びっくりして固まると、風丸が口を開いた。


「お前、一人でイベントとかやってると毎回寂しくて泣いてるし…たしか去年の七夕が雨だったから、円堂と俺が電話であやしただろ?」

「だから今年はちゃんとやろうと思って準備してたんだぜ!」


な?と顔を見合わせる二人に本気で抱き着いた。そんなこともあったね、すごい、嬉し過ぎる…!

++++

てなわけで、皆で円堂家にお邪魔させてもらってます。
買い出しから戻った秋ちゃんと春菜ちゃんも誘って、一応豪炎寺兄妹にも連絡を入れた。柚は滅多にないデートの機会だろうからそっとしておいた。ただ、夏未さんだけはどうしても都合がつかなかったらしい。またの機会にお邪魔するわと言っていたから、今度何かに誘ってみよう。

守と風丸が探してきた笹に鬼道さんと少林が作った飾りを吊って、庭に立て掛けた。短冊は現在鬼道さんと少林と竜吾で制作中です。
で、手持ち無沙汰な他のメンバーはといいますと。


「ぎゃあぁぁミミズっすぅぅぅ!」

「うるさいでやんすよ壁山、草むしりくらい黙ってやるでやんす!」

「風丸くん、このテーブルはそこでいいかな?」

「ああ、大丈夫じゃないか?」

「いやーさっきの名前は可愛かったね、ちゃんと写メっておいたよ!」

「死にたいの一之瀬」

「ちょ、まてまてマックス!」


お庭の草むしりとか、テーブルの用意とか、…一之瀬一哉抹殺計画が発動されかけてたり止められたり、なんてことをしてるみたいだ。
んで、僕は何してるかっていうと、守の後について階段を上がってるところ。草むしりをしてたら守にちょいちょいっと手招きされた、何故かこっそり。なので僕もこっそり抜け出してきたわけだ。どうやら部屋に行くらしい。

守の部屋に入るの久しぶりだなあ。最近は遊んだりしてなかったけど部屋の中は全然変わってなくて、ちょっと懐かしい。


「守、どうしたの?草むしりは?」

「あれなら大丈夫だろ!それよりさ、上行かないか?」


まさかの発言だよ守。そういえば窓から外に出て屋根に登るなんてこともしたっけ、…楽しいんだよね、あれ。


「行こうか守!」

「おう!」

++++

屋根の上に登って並んで座る。下は変わらず…変わらず、に、ぎゃああああとかうわああああとか叫びが飛び交ってる。近所迷惑だがとりあえず抜け出したことはばれてないらしい、よかったよかった。


「ありがとう、守。まさか守たちの方からやってくれるなんて思わなかったからさ、すごく嬉しい」

「どういたしまして!だって昔っから一緒なんだ、今も一緒、だろ?」

「えへへー、守は昔から変わんないね。優しくてあったかいよ」

「名前も意外に淋しがり屋なのは変わんないよな!」


あははーと笑い合う。下には、どうやら豪炎寺兄妹が到着した様子。


「ああもうありがとう守、大好きー!!」

「お!?ああ、俺も大好きだぜ名前ー!」


頬っぺたとかくっつけて叫んでみた。あったかい。

…まあ、それで下の人にばれたんだけどね。


「あああ円堂と名前が屋根でくっついてるー!!」

「まさか、キャプテンが誰かといちゃいちゃっ!?」

「…円堂」

「だから落ち着けよマックス」

「わー、あの嬉しそうな顔!写メろう!」

「こら、一之瀬くん!」


一度に全部聞こえてきてるから、正直何言ってるかわかんないけどとりあえずケータイしまえ一之瀬。


……僕、今、幸せだなあ。嬉しい嬉しい、すごくあったかい。寂しくないよ。


「そういえば名前、何お願いするんだ?」

「えー、言ったらお願い叶わないんだよー?」

「あ、そっか!」


それに僕、少なくとも今は今のままで十分だよ。七夕のお願いは君が叶えてくれたんだ。淋しくないように、ってね!


天の川の下にて、幸せです

(ありがとう守、もうほんとに大好きだ!)

綺麗な天の川の下、屋根の上。いつの間にか繋いでた手は、やっぱりいつもあったかい。


++++

性別なんて気にせず、とにかく仲良しな幼なじみです。七月中はフリーです。
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