ネタ | ナノ




kmtプラス「窓際の君」



その子はいつも窓際にいた。
いつも静かで図書委員の作業する音とページをめくる音だけがしている教室。俺の耳みたいに良くなければ大体そんな感じだと思う。その子の心音は落ち着いていてゆったりしていて、紙の音と相まってとても心地良かった。
その子はいつも窓際にいた。
本を見て、たまに外に目を向ける。ボーッと外を見てから少ししてまた本に目を戻す。なんだか無性に気になって宇髄先生にパシられたからと理由を付けて通うようになった。

それが半年ほど続いたある日、初めてその子がいなかったことがあった。珍しく図書委員もいなかったし、俺の方が早かっただけなんだけどそれがなんだか新鮮でよく覚えている。ゆっくり近付いてくる聞きなれた心地良い心音と小さめの足音。静かにスライドされる扉。そして─────

「こ、こんにちは……!」

俺は耐えきれず声をかけた。ドキドキしてその子の心音が全く聞こえない。あぁもう、うるさいなぁ。

「こんにちは。」

スゥー…澄んだ水の中のような、くぐもって聞こえているはずなのに透明感のある音がする。声は高くもなく低くもないちょうどいい高さ。そのままボケッとしていると俺の横をその子が通り過ぎて、チラと俺を目に映した。
───────射抜かれた。
淡いブラウンの瞳から目が離せない。ぱっちりと開いたブラウンにトキメキと心音が鳴り響いたまま騒がしくてこっちがたまらない。

「あ、の!」

ぐい、その子の左手を勢いよく掴んでしまったけれどそれどころじゃないんだ。

「初めて見た時から、ずっと好きでした…!」

#kmtプラス



[*prev] [next#]




TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -