14 卒業式
私のなけなしの告白は、お弁当に向けたものと思われて見事にスルーされた。卒業式もあと一週間というのに、校門の桜は咲かずもどかしい。
「やっぱりカラオケかな?」
放課後、LHRの延長戦として 私たちは春休みの集まりを話し合っていた。
「佐藤…、」
「なに?」
「明日さ、アルバム配られるでしょ?」
「うん。」
「私、佐藤のページにメッセージ書いていいかな?」
「じゃあ、僕も山田のに書くよ。」
私は緩んだ口元がバレないように佐藤に向けていた顔を黒板に戻して、頷いた。
「クラス会、くるの?」
「卒業式の次の日が合宿だから、無理だ。」
「…じゃあどうして?」
私が聞くと佐藤は声を小さくして言った。
「山田と話したかったからかな?」
「えっ?」
あんまりにもいきなりで、間抜けな声が出てしまう。
「山田と友達になれて、よかったと思ってる。」
「?」
「いつか話せたらいいと思う事があるんだ。でもいつになるか、分からないけど それは5年後かもしれないし、10年後かも…。山田に話せたらいい。」
「……。」「だから、いつか絶対話すから。」
「…ずっと待ってる。」
私は近い未来の事を考えて、唇を結び 佐藤に小指を出す。
「約束だよ。」
「うん、約束。」
熱を持っているという事が、直に伝わる。
卒業を前にして感傷的になっているのかもしれないけれど、もっと前に出会って もっとよく見ていたかったと思う 過ぎた時間たちは都合の悪い部分は全て当事者の胸の中だけの出来事となるから、思い出話はいつも楽しい。だけど 人に話したくないと思える様な事もいつかは佐藤に話したいし、もっと佐藤の事を知りたいと思う。つまりそういう関係になりたい。
「あ、卒業する前に写真撮ろうよ。」
卒業。
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