09 修学旅行 2



何ヶ月も前から準備をして、ずっと前から楽しみにしていた修学旅行は本当にあっという間に残すは1日だった。つまり、3泊4日の2泊目が過ぎて 少し愛着が湧いた旅館もあと1泊だけなのだ。

しかし今日は修学旅行の大目玉。

「ごめん!制服のリボン探してた!」
「まだ予定の出発時間になってないから大丈夫だよ。先生に出席確認して貰おう。」
「ふふ」
「山田、なに笑ってんの。」
「いやなんでも!」

今日1日、佐藤と過ごせるなんて胸が弾む。思わず出てしまった笑いをつぐんだが、二度目がまたきてしまいそうだ。友達に脇腹を小突かれながら、私達は旅館を出る。

粗方、有名な建造物はクラス行動で回るということで私達は京都の街並みを楽しむをねらいにコースを組んだ。佐藤が地図をたまに見ながら、私達を連れて行く様にリードする。お父さんみたいだなあと感心するが、私には今いちお父さんの記憶がなくて笑えた。

それから、ひとつ気になる事があった。1度、休憩を挟んで私は佐藤と2人でみんなが御手洗いに行っているのを待った時があった。特に話す事もなく、私は手遊びをしていたりしたがちらりと横目で佐藤が何してるか気になり見ると、休憩に入る前までの活気溢れる様な表情とは真逆に無表情で遠い何処か一点を見つめていたのが、何故か胸のしこりとなった。

1日は凄まじい勢いで過ぎていった様で、足のむくみを感じる以外は不条理な早さで夕方に至った。旅館には予定通り着いて、予定というのも本来の自由行動の集合時間よりも1時間半程早く着く様に設定したので 随分と貸し切った旅館は朝と比べると、静かなものだった。

「じゃあ30分後に佐藤達の部屋で。」
「しおり忘れんなよ。」

倉本君の言葉を頑張る頑張ると軽く流す。幸せな気持ちいっぱいに部屋に入り、私は友達よりも先にシャワーで汗を流した。

30分経つ前に準備が出来てしまって、佐藤の部屋に向かう。

「え、佐藤いないの?」
「ああ、まだ時間じゃないしな。戻ってくるだろ。」
「……。」
「山田?」
「あ、ああ。私もまだ時間あるし、飲み物買ってくる。」
「私も行くよ。」
「大丈夫大丈夫、好子何飲みたい?」
「炭酸。」

リクエストを聞いて、私は入りかけた佐藤達の部屋から踵を返す。仲のいい倉本君にも何処へ行くか言わずに行く佐藤は少しおかしいと思ったけれど、そんな事より昼前に飲み物がきれてから 何も飲んでいなかったから、私の頭の中でそれは一瞬よぎっただけだった。

「炭酸炭酸、」

いくつかある炭酸飲料の中から、記憶をめぐらせて 好子が一番好みそうなものを選ぶ。取り出し口に缶の落ちる音がするのをそのままに、私はまた飲み物を選んだ。

「オレンジジュース、かな。」

+150mlとかかれた、いわゆるお徳用。ふたつ缶を手に持ち、元来たところを辿る様に戻っていった。途中、私は視線をまどに向ける。するとそこから見える旅館の庭でバットを振る佐藤がいた。


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