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「まぁ、仕事とは言っても手伝いらしいが」
『らしい』

 新堂にしては珍しく曖昧な表現に、想がハテナと首を傾げる。立ち上がった新堂に想が手を伸ばすと、抱えようと腕を絡められて想が慌てる。手を借りようとしただけのつもりだった。

『おもいからっ』
「まぁ、まだなんとか持ち上がりそうだな」

 口端を上げて笑みを作る新堂がわざと抱き上げたと知って想はムスっとしながらも首に腕を回す。

「働き先だけど、今日のカフェ。凌雅君と行っただろ」

 三咲龍一の店のことかと、想が話に耳を傾ける。リビングのソファに下ろされ、隣に座った新堂がネクタイを緩めてローテーブルに置いてあった携帯電話を想に差し出した。

「オーナーがひとりで切り盛りしてるそうだ。だから雑用が欲しいと。凌雅君の口添えだから」

 携帯電話にはやり取りの文面が表示されており、凌雅からだった。
 内容は想の仕事についてで、三咲に話をしたところ想のことを気に入ったと書いてあった。
 明日の昼前に一度面接し、来週辺りから働いてみてはどうかとある。朝の8時から18時。
 雑用ならば話すことが出来なくてもやれることがあるに違いないと、想は笑顔で頷いた。

「こっちの職場にも近いし、何より凌雅君がよく寄ってるから様子も分かっていい。……俺が安心できる」

 想は携帯電話を放り投げて新堂をソファに押し倒す勢いで抱きついた。共にソファに埋もれてしまったが、新堂は上に乗る想の頬に指を滑らせる。 

『がんばる』

 想は頬を滑る新堂の手を握ると指を絡めた。『ありがとう』と口を動かしながら新堂の上に乗っかったまま頬や首にキスを繰り返す。

「頑張れよ」

 じゃれつく想の後頭部を撫でてやり、Tシャツの裾から手を忍び込ませて素肌を楽しむ様に背中を撫でた。ぴくっと反応した想が、そろそろとゆっくりとした動きで新堂を見た。

「どうした?」

 少しっとりしたすべすべの肌を手のひらが通る。背中から脇腹を通り、胸にたどり着き小さな先端を新堂の指先が潰すように撫でた。
 息を詰めた想が反射的に目を瞑る。想は乳首をほとんど弄られたことは無く、擽ったさにはいつまでも慣れない様子だった。

「好きじゃないよな。ここ」

 潰すのを止めて優しく撫でる指先に困惑した表情で想が身を捩る。くすぐったい、と言うように苦笑いして新堂の手を退かすために握る。

「感じる?別におかしいことじゃない」

 胸を弄られて感じるなんて女性みたいだと思っていた想が眉を寄せて新堂を見た。表情から悟った新堂が小さく笑う。

「俺が触るから感じるんだ」

 ぐい、と引き寄せられた身体が密着する。相手が新堂だから、と言われた想は身体が一気に熱くなるのを感じて顔まで赤くなった。
 ズボン越しでも分かるほど想のペニスが熱を帯びている。

「そうだろ?」

 囁く様に耳元に言われ、耳朶を甘く噛まれて想はビクッと身体を強ばらせた。熱い吐息が漏れ、腰が甘く疼く。
 新堂の言葉ひとつひとつが想を高ぶらせる。期待や興奮、少しの羞恥の入り混じった表情だが、視線を逸らすことなく自分を見つめる想に新堂が困ったように笑う。

「……そんな顔、誰にも見せるなよ」
『しらないよ』

 早口に『どんな顔だ!』と怒ってみても新堂は口端を上げるだけ。
 スウェットのズボンを下着ごと下げられれば想の立ち上がったペニスか空気に晒された。根元から裏筋を撫で、先端を指先で擦ると先走りが溢れた。新堂の指を濡らす。
 自分の上に覆い被さりながら、新堂の手に感じている想の淫らな姿に新堂も熱くなり始めていた。

「っ……、っ」

 声にならない息がしきりに漏れ、もどかしい愛撫に想がイヤイヤと新堂の肩に額を擦り付ける。甘え方を無自覚でも知っている想に笑みが漏れる。
 思いが繋がってからの心地良い図々しさも、小さなことでも隠さない素直さも、必死な前向きさも、全て自分とは正反対でとても魅力的に思え、新堂は絶対に想を手放したくないと実感させられた。

「ホント……誰にも触れさせたくねぇ」

 新堂の感情的な言葉に、想は胸がぎゅっとなった。
 求められることが嬉しい。自分も同じ気持ちだと伝える様に唇を重ねて積極的に舌を絡める。くちゅ、と合間に漏れる音と、想のペニスを弄る水音に紛れてどこかで着信を知らせるバイブ音が聞こえる。
 二人が同時に止まる。

『しごと』

 少しの間を置き、想が携帯電話を放った方へ視線を移動させた。画面が発光し、長く続く着信から察するに電話のようたが、新堂は想の頬にキスしてそのまま唇をペロリと舐めた。

「ほっとけ。急用なら何度もかけてくるだろ」

 ぐい、と腰を掴まれて想の剥き出しのペニスに新堂の立ち上がったペニスが衣服越しに主張している。

「仕事より想が好きだ」
「ッ……、っ!」

 『仕事より想が好き』と言う声と腰に食い込む新堂の指先の強さに想の背筋を得体の知れないモノが駆け抜けた。ビクッビクッと身体を震わせ、想は新堂のスラックスへ精液を飛ばした。
 腰が戦慄き、想は唇を引き結んだ。

「……くくっ……可愛いな」

 楽しそうな新堂とうって変わって、想はあまりの醜態に視線を合わせる事が出来ない。Tシャツの裾でゴシゴシと新堂のスラックスを擦る。俯いていても耳まで赤い想をからかうのは止め、新堂は起き上がって想を抱っこの形でベッドへ運ぶ。

「言葉で感じるなんて高等技術だ」
『いみふめい』

 想はやり場のない恥ずかしさにキツく目を閉じるのと同時に新堂の首に絡めた腕に力を込めた。










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