「タダでも俺には嬉しいんです」
「てかさ、理玖、俺のプレゼントは喜んでくれねぇの?」 

 智也にシャツを着せながら理玖がムスッとする。

「見たいですよ。でも見る間もなくここに居るんです。先輩のせいで」
「あー理玖が怒ってるー」

 茶化すように智也が言って理玖にじゃれつく。身体を寄せて首に抱き付いた。反射的に智也の身体を支えて、ぎゅっとするとお互いに愛おしさが溢れる。
 もとより怒ってなどおらず、いじけているようなものだった。

「はー…腹減りました」
「アタシのこと食べてぇダーリーン」
「絶っ対嫌です!」
「即答かよ!しかも超嫌そう!」
「よし、パスタ茹でますね」

 切り替えの早い理玖にがっかりしながら、キッチンに向かう彼にくっついて一緒にベッドを出る。腰がだるく、違和感まみれの身体に小さく溜め息をする智也を理玖が抱っこの形で連れて行く。智也は笑顔で腕と足を理玖の身体に絡めた。




 休み明けの学校。
 理玖が友人の過去問題の答え合わせをしていると、ついに理玖は盛大な溜め息を吐いた。朝からクラスメイトの視線に苛立っていた理玖が向かいの席の友人を睨む。

「なに、まじでウザいんだけど」
「はい?」
「みんなジロジロ見てくる」

 くんくんと腕を嗅いでみたりするが、異臭もしない。理玖が真面目に気付いていない様子で、友人が笑う。理玖が無言で睨みつけると笑うのを止めた。

「江崎の右耳の後から首とか、キスマークじゃん」
「は?」
「みんな受験真っ只中なのにーって。医学科志望のくせに、お前はヨユーこいてるからさぁ。みんな羨望と興味と侮蔑ですよ」

 理玖が右耳を押さえる。
 一昨日の誕生日のことを思い出して一気に赤くなった。軽く夕食を食べて、一緒に狭いベッドで寝ようとしたところ智也にペニスを舐められた。
 散々理玖が弄くり倒したアナルが落ち着かない!と智也に誘われるまま二度目のセックスをした。その時しつこく右の首もとばかり智也が舐めていた事が脳裏に現れる。

「江崎の彼女はどこ校?タメ?」
「いや…一個上だけど」
「進学校の受験生のくせに年上の彼女有りなのね。はーウザい!リア充死ね!早く答え合わせしてくれっ!」

 次の年の過去問題に取り掛かる友人に、理玖が真顔で携帯電話を差し出した。

「撮って。鬱血跡ってことだよな。消える前に撮って」
「………ホント、江崎って変わってるよな。変人っていうか」

 軽く引き気味で理玖の申し出に答えた友人が苦笑いで写真を撮る。それを確認した理玖はへらっと笑った。

「…せんぱい、好きだ…」
「…!!!そんな顔する!?何、いまのデレデレ!江崎が壊れた!いつもの江崎じゃないぞ!」
「は?とっとと問題やれよ。こっちは付き合ってやってんだから」

 自分に向けられるドライな視線と言葉に、友人は益々理玖を変人だと痛感した。

「冷たい…それでも江崎のことが好きな俺はもっと変人?」
「さっさと死んでください」

 サラサラと答え合わせをしながら吐き捨てるように笑って理玖は言った。
 元々他人に興味の薄い理玖にとって特別なのは智也だけ。誰とでも上手く付き合えるし、ノリを合わせる事も出来るが、あまり連まないタイプだ。
 そんな理玖だが今日も智也にバイトで会えるのを楽しみに、彼の学校生活は消費されていった。


end.






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