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 ローションにまみれた指が想のアナルを広げるように内部で蠢く。

「はぁっ……ッ、………!」

 想は音にならない声と甘い呼吸を繰り返しながら、アナルからの快感に時折、腰を揺らす。
 なんともいやらしく愛おしい様子に、新堂は首筋を舐めた。
 次第に指だけでは足りなくなってきて、手を新堂のペニスへ伸ばす。風呂上がりでシャツとボクサーだけの新堂のそこは下着越しにも分かるほど熱い。
 そっと指先でなぞれば、反応を示した。
 想が目を瞑って甘い息を小さく零す。それに内側を暴かれる期待に、声にはならなくても名前を呼んだ。何度も。

「想」

 指が出ていき、ソファからラグへ引きずり下ろされると、直ぐに熱の塊がアナルを押し広げる。
 この瞬間が堪らなく良くて、それだけでイきそうな想に、新堂は容赦なく腰を打ち込んた。

「っ!……っ、……!」

 想は激しい絶頂の最中にもかかわらず、止まらない新堂の動きに息を詰める。
 もっと、もっとと蠢く内部と反対に頭はもう、ダメだと、真っ白になりかけた。
 想が動きに翻弄されていると、突然引き寄せられて想が上になる。深く抉られる感覚に腰が抜けそうになって想は慌てて新堂の腹に手をついた。
 下から見上げる新堂の舌が唇を舐める様は色気があった。想はごく、と喉を鳴らした。誘われるがまま、新堂を見下ろし腰を揺らす。
 少し浮かせて再び奥へ。砕けそうになる腰を新堂が支え、時折下からちょっかいを出せば大袈裟に反応を返す想に目を細める。

「良いか?」

 生理的な涙を溜め、想は何度も頷いた。
 耐えるように目を瞑って俯き気味に、甘い呼吸を繰り返す想の内股を撫でる。程よく鍛えられていて女のそれとは違うし、傷も多い。心の傷も。それが想であり、新堂の愛する存在なのだ。
 新堂は愛しさを込めて頬に指を滑らせる。
 その手を取り、想は指先に口付けた。いつも、少し冷たい綺麗な指。

『きもちい』

 新堂の手が離れる前に想が手を重ねる。自分の頬に新堂の手を戻して微かに笑う。
 新堂は聞かれているように感じて想をじっと見つめて応えた。

「ああ、最高」

 動きにあわせて新堂が想のペニスを擦る。
 途端に内部が反応し、食われそうな勢いでしゃぶりつくアナルの感触に熱い息を零した。
 想も新堂もイきそうで、自然と唇を合わせる。
 新堂は乗っている想を再び押し倒して片足を担ぐように肩にかけた。
 角度が変わり、想は腰が浮くほどの感覚に目を見開いた。
 イッている?まだ?おかしくなりそうな快感に涙が溢れた。ペニスでは達していないが、確実に絶頂を迎えている。なかなか引かない快感の波が、想の意識を塗り潰す。
 想は一瞬意識を手放したがローションでぐずぐずに溶かされたアナルが新堂のペニスを離さない。
 新堂は耳元で名前を呼びながら、腰を掴んで抉るように打ち込む。
 ビクッと足が跳ね、想の意識が浮上した。視界でハッキリと新堂の姿を捉え、震える唇で想は新堂を呼んだ。

「『れんっ!……れん』、ッ……!」

 想が達すると、一層の締め付けに限界が近い新堂がペニスを抜こうとする。
 だが、息を乱したまま想が腕と担がれていない足を新堂の身体に絡める。更に想は促すように身体を引き寄せて、切なげな視線をぶつける。

『なかに、だして』
「……おい、っ……」

 眉を寄せて中で達した新堂の感じている顔に、想が満足そうに笑って目を閉じた。

「悪い……中出しなんていいことねぇぞ」

 謝った新堂が呆れながらも、繋がったまま腰を押し込み、想が喉を反らす。その様子に微かに笑った新堂に想は怒って肩を押すが、『お返しだ』と笑われてさらにぐりぐりと抉られる。

『むりやだ』

 唇を大きく動かして、頭を振るが身体は正直で、達したのに再び熱を持ち始める。
 精液で濡れたペニスを新堂がわざと音を立てるように扱いた。
 親指で先端を擦られて喉が反る。新堂がそこに噛み付いて笑った。

「先が好きだな」

 荒く息をしながら睨み付ける想に涼しげな笑顔を返して内側の性感体をペニスで擦りながら先端ばかり擦ってやると、あっけなくイった。

「甘えられるのは嬉しいが、……なんでだろうな。拒否られると興奮する」

 真顔で告げた新堂に、はぁ?!と想が新堂の下から這い出そうと身体を捩ったが、腰は怠いし腰骨あたりを掴まれたままでアナルに埋まる新堂のペニスまではっきりと感じて上手くいかない。

「なんだ。バックでもしたいか?」
『ちがう』

 中途半端に背中を向けたまま即答するが、きゅっと想のペニスが握られて刺激されると、途端に抵抗が弱くなり顔が赤くなる。身体を震わせてラグに額を擦るように、『やだ』と弱く頭を振っても遅かった。
 またしても襲い来る甘く激しい快楽に引きずり込まれて、何度もイかされた想が目覚めたのは明け方だった。









「おはよう。コーヒー飲むか?」

 まだ外はあまり明るくない。
 コーヒーの良い香りに目を開ける。
 6時を表示するデジタル時計を見てから想はゆっくりと起き上がった。ベッドの端に朝食を乗せたトレーを膝に置いた新堂が微笑む。
 すでにスリーピースをしっかり着ている新堂の隣に座って彼の背中をポンと叩いた。トーストと目玉焼き、ベーコンの良い香りが食欲を刺激する。想がトレーの朝食を指差してからその指を新堂に移す。

「いや、これは想の。俺は食べたからゆっくり食えよ」

 部屋はエアコンで丁度良い室温だが起き抜けは肌寒くて、想は薄手の毛布にくるまったまま新堂に凭れて、あーん、と口を開いた。

「またそうやって」

 呆れて新堂が想の頬を摘む。

「お前を喰ってやろうか」

 寄りかかったまま小さく頷く想の頭を新堂が撫でる。
 想は喰われて一つになりたいと思った。血肉となって彼の中で生きていられたら、と。
 この部屋でだけ生きることは出来ないことではないが、人として終わっている。本当は新堂の隣に立って彼の見ているものを一緒に見たい。支えられるだけではなく、支えたい。同じ仕事をしたいわけではないが、新堂のように周りに認められるような人間になりたい。
 想が確かな意志を持って新堂を見ると、視線が合う。
 何かを感じて優しく笑った新堂から想へ唇を重ねた。









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