刺激が欲しい。
 金が欲しい。


 それがふたりの出会いの始まりだった。





「なっすかわぁ!なぁ、今度は何する〜??」

 大学の講義室の隅で、俯きながらイヤホンからの洋楽を聞いていた那須川は、後ろから肩に抱き着かれて顔を上げた。
 少し後ろ見ると、なぜか一緒にいる事の確率が高い二村と五藤と言う、かなり派手めな二人組が満面の笑みで那須川に触れていた。
 いつも取り巻きが何人かいるが、今は二人。そう言う時は決まって『ある遊び』をしたい時だ。
 那須川はスッと目を細めてイヤホンを外した。
 
「那須川、朝ヤリ部屋来なかったじゃん」
「あそこ臭い……タバコ嫌いなんだよ……ね」
「え〜ッ。ノリ悪〜い」

 那須川が目蓋を閉じてわざと大きなため息を吐き出した。

「まぁ、いいけどさ。那須川目当ての女の子も結構多いんだぜ?たまには食べちゃえよ。今どき彼女としかしねぇなんて、ダサすぎて笑える」
「だれかれ構わずの方がキモい。……だいたいお前らと同じ女なんて触りたくない……し」
「ひどっ!那須川ひどっ!」

 那須川は冷めた口調で言ってから、仕方なくスマホで何かを調べ始めた。
 二村と五藤はそんな那須川を見て嬉しそうに笑った。

「……いつも通りゴミみたいなヤツ二人探して。買った方に3000万……かな。どんなゲーム……させたい?」
「ゴミ箱の針山に手を入れてシャーペンの芯みつける」
「結構前にやったサイレント爪剥ぎは?」
「は?……つまんない」
「えぇ……だって、どうせどっちかが負けて、カワイソーな事になるって決まってるじゃん?そのカワイソーを楽しみにしてるんだよ〜?この間の硫酸の玉、口に入れて腕相撲させるの面白かったな〜」
「あれはもうヤダね。……汚いし、濃度考えたり準備が意外と辛かった。っていうか……お前ら過程とか楽しみたくない……わけ?」
「那須川に任せるよ。俺たちは金を少々とターゲットを厳選して来る。那須川は場所と金な」
「……はいはい」

 那須川は適当に返事をして再びイヤホンを耳に押し込んだ。二村と五藤が肩を叩いて楽しげに笑いながら去っていくのを気配で感じ取りながら、那須川は頬杖を付いて目を閉じた。
 なんの刺激もない日々。五年も引きこもっていて、大学には行ってみるか…程度の気持ちで入学して二年目。退屈で仕方ない。講義は調べれば何倍も簡単に答えを得られるし、面倒な人付き合いも、苦痛だ。

「そろそろ二村と五藤は切るか……な」

 二村も五藤も金持ちのボンボンで、その金とツラに群がる人間は多い。だが、それで何を得られるかと言えば、何も。
 彼らはヒエラルキー上位で、毎日楽しそうに見えて退屈していた。『刺激』が足りない…という目をしていた。彼らは笑顔の裏で、自分と同じように『非日常』を求めていた。那須川はそれを敏感に感じ取り、契約した。
 他言せず、金を出し合い、ゴミクズなような人間で『遊ぶ』。
 金のためならなんでもするような、クズだ。借金まみれ。そんな連中がターゲット。
 那須川は視線だけでふたりを見送り、冷めた心に火を灯す何かを求めたくて二台目のスマホを取り出した。
 取り敢えず目の前の娯楽を終わらせようと、ゲームを考えた。手早く終わらせるために、ロシアンルーレットでいいか……と銃か改造モデルガンを譲ってくれそうな人間を電話帳を眺めながら考えた。

 

 




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