仁介が苦しそうに唾液を嚥下した頃、那須川は仁介の身体を拘束するベルト同士を繋ぐ金具を外した。
 自由を得た仁介の身体は途端に両手両足を伸ばして、力を失うようにベッドで伸びた。
 165センチと、決して大きいわけではない仁介だが、細いながらに喧嘩で鍛えられた体躯は傷を持っていながらも若々しく美しい。左腕には肩から手首まで謎のトライバルが黒々とした模様で占めている。
 那須川は脱力して目を閉じている仁介の腹筋に指先を滑らせた。
 仁介の鋭い眼差しが那須川を睨む。

「疲れたから」
「でも……ちんちん勃ったままだから。イかせたい……」
「いいって。何回もイッたから出ねぇよ。それよか秋日はやっぱ勃たねぇ?」
「……この通り」

 濡れたアナルからディルドを引き抜き、ベッドの下へ放った仁介に、那須川は股間を指さした。
 タイトなボクサーパンツの中は無反応な雄。
 表情に表れるほどにしゅんと眉尻を下げた那須川は俯く。染められた灰色の髪がライトの下で光り、仁介の小さな溜め息を誘った。
 仁介はくたびれた身体を叱咤して起き上がり、俯く那須川の正面に座った。

「気にしてんのか?だっせぇな」
「気にするよ……」
「興奮しねぇ?」
「するよ……じんが感じてるの見て、腹の奥が熱くなって、じんを俺だけのモノにしたいって欲望がぐるぐるする。でも……それでお終いなんて、気にする……よ」

 俯いたきり顔を上げない那須川の顔面へ手のひらを押し付けた仁介は、そのまま力任せに彼の後頭部をベッドへ押し倒した。
 驚いて目を開く那須川を、仁介は舌舐めずりしながら見下ろす。
 どか!!っと腹へ跨がり、勃起したままのペニスをゆっくりと擦り始めた。本当は疲れていて、眠ってしまいたいほどだったが仁介は熱いペニスを擦りながらピアスが光る乳首をもう片方の手で撫でた。

「しゅーか!お前のチンコだと思って見てろ。ほら、ガン勃ちで今にも出ちまう……はぁ、っ、先が、ひくひくってしてんだろ……な?」
「う、ん……でも、僕は自分の乳首触ったりしない……かも」
「あ"ぁ?じゃあテメェが弄れや」
「……可愛くない……」
「よく言うぜ。可愛いのがイイんなら他当たれよ」

 熱い息を吐き出し、誘うように唇を舐めながら仁介は那須川を睨み付けた。
 己の腹に跨がり、熱い身体を震わせながらも高圧的な態度で見下ろしてくる仁介にゾクゾクしたものを感じて那須川は頬を染めた。

「じんじゃなきゃ……ヤダよ……」

 『じんじゃなきゃ……』その言葉に仁介は胸の奥が震えた。呼応するように腰がズンってと甘い重さを訴えてきて、腰が揺れた。
 那須川は急に切なげに眉を寄せ、唇を噛んで俯いた仁介の胸の先へ指先を伸ばした。ピンとピアスを弾くと、仁介は大きく背を反らして短く甘い悲鳴を上げた。

「あ"ッ……んん!!」
「じんは乳首も好きだよね。僕のあげたピアス、すごく……似合ってる」

 乳首の特注のストレートバーベルを軽く引っ張り、那須川は興奮気味に腹の上で悶える仁介を見つめた。
 息を荒げ、顎を伝う唾液を気にする事も出来ずペニスを擦りながら乳首の刺激に身体を震わせる仁介。

「あぁ"っ……イく、すげ、イィッ……しゅ、う……かぁ……ッ……!」
「ん、じん……どうして欲しいか、言って?すごく、イイ……」
「ふ、あ……っイきそ……早くッ、ちんこ、触って……!」

 那須川は腹の上で喉を反らせて喘ぐ仁介のいやらしい様に喉が鳴った。身体を起こそうとすると、それを仁介は許さずに押さえつけた。

「んッ……しゅーか、は……寝てろ!」

 仁介は爆発しそうなペニスから手を離し、乳首を摘む那須川の手を叩いた。

「ほら、てめぇで……シゴいて、出せ」

 いやらしく唇を舐めながら腰を揺らせば、固いペニスが揺れた。那須川は促されるままにそれに触れた。熱く、脈打つ、存在。

「じん、エロい……」

 那須川が仁介のペニスを擦り、先端を指先でぐりぐりと潰せば彼は腰を浮かせて小刻みに腰を揺らした。
 一方の仁介は涎を滴らせながら片手は乳首のピアスを弄り、片手はをアナルへ。自分の二本の指をぐずぐずのアナルへ押し込み、那須川の名を切なげに溢した。
 互いの潤んだ瞳がぶつかり、息を詰める。
 那須川は腹の上で腰を揺らす仁介の卑猥な姿に煽られ、少し上体を起こした。自分の指を既に仁介の指が蠢くアナルへ二本、押し込んだ。

「っひぃ……!んぁああっ!!しゅ、かぁああぁッ!あ、ぁあああ…あッひ、アッ、あ、あッ……ーーーーッ!!イ……く……ッ!」

 那須川の手の中で仁介は達した。放たれた精液が那須川の腹へ飛び散り、白いTシャツを汚した。ぎゅーっとアナルが締まり、二人の指を離さない。
 確かな熱に身体中が震え、自分が射精した訳でもないのに快感を感じているように那須川は思えた。
 仁介がアナルから指を引き抜くと、自然と那須川の指も糸を引きながらヌポッと音を立てて抜けた。
 那須川の腹の上で、仁介は乳首を弄ったまま緩く腰を揺らし続けた。快感の余韻に酔うように荒い息を繰り返しながら目を閉じる。
 ふと、腰を掴まれて怠い目蓋を開いた。

「じん、ありがと……」
「……はぁ?」

 『なんの感謝よ?』と仁介は眉を寄せて言いながら、ゆっくりと身体を倒した。那須川の上に重なるように抱き付き、逆らえない眠気に今度こそ目蓋を閉じた。
 那須川は自分の胸で寝息を立て始めた仁介の坊主頭を撫でた。様々な体液で汚れていても、心地よい指触りに口元が優しく緩む。

「こんな気持ちを味合わせてくれるのは……じんだけだから。ありがと……」

 那須川はそっと額に唇を寄せながら目を閉じて、出会った頃を思い出した。












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