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「ティエル、可愛い…綺麗だし…カッコイイ…」

 ガドは幼いような精一杯の褒め言葉を繰り返し、ティエルの首筋を大きく舐めた。いい匂いに混じり味覚が刺激され、一瞬、あまりに興奮しすぎて耳がブワッと現れる。
 ティエルは驚きに目を見開いた。すぐに獣化すると分かっていたため、落ち着けと声を掛けようとした。しかし、ガドは興奮した様子ながらも己を落ち着かせるように息を吐き出し、耳が人に戻る。懸命に制御しようとするガドの姿にティエルは優しく頭を撫でながら頬にキスした。

「ガド、抑えられてる。すごいぞ」

 褒められたガドは、自分のどこがすごいのか分からずに眉尻を下げて青い目を見つめた。
 困ったような顔に、ティエルは微笑む。
 頬を染め、目を潤ませて優しく笑みを向けるティエルに胸が熱くなり、ガドは激しく首元に顔を擦り付けた。

「ティエル、好きだ…好き!」

 その仕草にティエルも益々身体が熱くなり、頭がくらくらし始める。ティエルは意を決してガドのベルトへ手を伸ばした。震える指先に焦りながらもズボンの前を緩める。下着をずらすと雄々しいペニスが脈打ちながら姿を現し、ティエルは頬を染めた。

「うそ、だろ…でかすぎ…」

 心の声が漏れ、一瞬固まった。しかし、ティエルの様子を見ていたガドがティエルのベルトを緩めるのを見て、ハッと顔を上げた。
 ガドはずっとティエルを見つめている為、ティエルがガドをみるとバチっと視線がぶつかる。

「い、一緒に…」

 恥ずかしさに視線を逸らそうとしたティエルの顎をガドは許さずに止めた。唇が触れると、深く、甘く、溶かすようなキスがティエルを翻弄する。
 最初は遠慮がちなガドの仕草もティエルがするように真似をして何倍にも甘く返ってくる。ティエルは深いキスに乱されっぱなしで、逃げる事も叶わず、疼く快感に思わず腰が揺れた。

「は、ぁ…っガド、キス…すごい…慣れてない…?」
「…?分かんないよ。ティエルと初めてした」

 恐ろしい。ティエルは大型種の本能に少しばかりの恐怖を覚えつつ、自分とガドのペニスを擦り始めた。お互いが硬く、大きさも違う為擦り難い。どちらともなく溢れた先走りを絡めて、控え目に腰を揺らしながら手を使っていると、ティエルの手を包むようにガドが触れた。大きなガドの手がペニスを擦り、ティエルは腰が跳ねた。

「んっ、…!」
「はぁっ、すごい…気持ちいい…ティエルは、いい?」

 口を開けば甘い声が漏れてしまいそうで、ティエルは唇を引き結んで何度も頷いた。
 にちゅっ、ぬちゅっ、といやらしい音が静かな夜の林に消える。
 
「や、だ…も、出そう…っ!」

 ティエルは上擦った声で言うと、両腕をガドの首へ回して抱き着いた。甘い呼吸の合間にガドの名前を何度も呼ぶ。
 その声と感じている様子のティエルに、ガドは興奮を掻き立てられた。己にしがみ着き、甘えるように名前を呼ばれ、ぐぐっとペニスが硬さを増す。

「…んんっ!ガド…!!」
「っ、ティエル…」

 ティエルが息を詰め、達した。腰を押し付け、ぎゅっとガドを抱き締める。耳元で聞いたティエルの甘い声につられ、ガドも精液を放った。ガドの手のひらでふたりの精液が混ざり合い、動くたびにいやらしい音が、にちゅ…と存在を主張した。

「……」
「……」

 ふたりは乱れた呼吸を整えながら身体を寄せ合い相手の体温を感じた。
 ティエルがゆっくりと身体を離し、視線をガドへ向ける。
 青い瞳と金の瞳がお互いを見つめ合って離れず、ガドはそっと細めた。

「ティエル、好き」
「…ん」

 ちゅっと触れるキスをされたティエルは照れながら小さく頷いた。こんな風に身体が熱くなったのも、性的な快感を得たのも、誰かの体温を近くに感じたのも初めてで、胸の辺りが重く痛むような、けれど温かい感覚にティエルの目元からゆっくりと涙が溢れた。

「ガドが好きだよ」

 ティエルの涙を見てガドは慌てて舐めた。幸せの匂いの中に苦しさを感じて、ガドはハンカチで適当に手を拭うと細い身体を抱き締めた。

「ティエル。明日も一緒にいようね」

 大きく頷いてから顔を上げたティエルは涙を拭ってガドへ微笑んだ。
 ティエルの笑顔は森で二人きりで居る時のそれで、こんなにも違うのかとガドは胸が痛んだ。人間の中にいる事がどれだけストレスを溜め込ませるか、少し分かった気がする。そっと鼻先を触れさせ、名前を呼びながらガドは八重歯を見せて笑みを返した。








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