15



「ァ、あぁ……っ、も…… きつ、い」

 力が入らずにされるがまま腰を新堂に差し出した格好でマットレスカバーに顔を埋めた。ペニスの先を指先で擦られるとビクビクと身体が跳ねる。腰を掴む手が繋がっている部分を指先で撫でた。それだけで想はイきそうになる程敏感になっていた。

「こっちは素直だぞ。抜こうとすると吸い付いて離したくないと」
「や、やだ……!ヘンなこと、言うな、ァ……」

 ゆっくり引き抜かれる感覚に戦慄き、浅い息が続く。支えているだけの膝もがくがくと震えていた。

「俺のことどう思ってるんだ?」

 ぐじゅ、と滑りを帯びて奥へ侵入してくる熱に想のペニスから先走りが溢れた。しばらく焦らすようにそんなもどかしい動きが繰り返されて想は無意識に自分から腰を揺らす。

「んン、ぅ……あ、あぁ、なんでぇ……」

 物足りなさに堪えられず緩慢な動きで後ろを向くと新堂の鋭い視線が想を見ている。熱を孕んだような眼差しに涙が溢れた。肉体的に痛くても堪えられるものも、内にある弱さは守れない。
 新堂は想の気持ちを知っていて言わせたがっている。

「な、んで……いまさら……言わせるん、ですか?」
「さっきも言っただろ。今まで出来なかったことも今なら出来る」

 背中に舌を這わせ、首筋に吸いつくと、想は甘い息を零す。

「今までも、ただ上に言われるまま仕事をしていたと思うか?」

 ちゅ、と肩にキスされ目を瞑る。新堂は頭がいい。きっと多くを手に収めて大抵のことは黒から白に変えるくらいの力を蓄えていたのだと考える。

「欲しいものは欲しい。ずっと我慢させられた」

 緩く動きが再開され、想の身体が歓喜に震えた。
 背中に覆い被さるように身体を寄せた新堂から煙草とお酒の匂いがする。いつもと違う、少し必死さを感じさせるよな新堂。
 こんなに言葉でも身体でも求められたのは初めてで、ただ戸惑った。

「ンんぅ……!!あ、あ、俺なん、か……あ、ぅあッ、ンああっ……!」

 何もない……と言う前に肩を掴まれ上体を引かれて背面座位にさせらる。想の声は言葉にならずにだらしのない音となって口から漏れた。

「どんな相手にも屈しないところがいい。目をそらさないように必死なところだ。昔からな」

 揺さぶられながら耳元言われて首を横に振る。そんなに強くない、と言いたいがやはり言葉にはならない。

「俺の傍にいてくれるだろう?」

 ぐっと引き寄せられて結合が深まり想は声を上げた。何度も頷きながら新堂の名前を呼び続けた。







「ああ、言ってない。こっちの都合で無理矢理気持ちを吐かせたんだぞ。聞いたら殴られるだろうな。……殴られるのはてめぇだからな、若林。……分かってる。大切にするに決まってる。任せろ。そっちは任せるからな」

 あれから、すぐに眠ってしまった想の身体を熱いタオルで拭いてやった新堂は想の部屋のシャワーを借りた。
 ぐっすりと眠る想の額にキスをして少し跳ねている赤茶色の髪を弄りながら通話を終わらせる。
 相手は若林で、先日『想が目標や将来を見失いそうで心配だ。お前の気持ちを伝えてほしい』と、想への思いを伝えてくれと土下座された。
 それはすでに一週間ほど前の事だが、跡目争いの優勢さから新堂は若林に言われるまでもなくそのつもりでいた。
 今までは散々関係を否定していた若林だが、彼は想に甘く、とことん心配してしまう所がある。お節介にもほどがあるが、家族思いの男だから仕方がない。横から口出しされたことは新堂にとってかなり腹立たしかったが起きたことは認めるしかない。
 本来、若林からそんなことをされる前に、思いを伝えなかった自分の力不足だと言い聞かせた。
 今日は本当に酔った勢いで此処に押し掛けたが、想の気持ちを知っており、手に入ると分かっているのに手に入れられない状況に我慢が出来なくなっていた。新堂は最初から想の気持ちに気付いていたが、ただ愛しいからと言って簡単に伝えられる程自由の身ではなかった。

「想……あまり信じてなかったな」

 耳から首、背中へ指を滑らせるがまったく反応を示さず、うつ伏せのまま深く眠っている。
 出会った頃は素直でよく笑っていたと思うが、成長と共に血沼に浸かって随分警戒心が大きくなったように感じる。
 想が対峙し痛めつける人間は大抵が裏切り者だが、裏切られた者もいる。狭間でいろいろ感じ、汚さや逆らえない権力を見てきただろう。
 育ちが良く、温かい環境で育った分、この世界は辛かったに違いない。

「おやすみ」

 新堂が狭いベッドに入り込んで想を抱き寄せた。一時間くらい寝れるはずだと携帯電話で時間を確認して目を閉じた。 









text top

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -