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 ブーッ……ブーッ……

 想は機械の振動に半ば強制的に現実に引き戻され、淡い光を発する携帯端末を見て眠気そのままの様子で通話をタップした。

「新堂さん……ご用件は?今すぐ?何時だと思ってるんですか……俺は女じゃないんです。用があるなら来て下さい。来ないですよね。明日行きます。おやすみなさい」

 後半は一方的に話して通話を終わらせて再び毛布にくるまると、また着信を知らせる振動が始まった。想は次第に覚醒し、怒りを込めて電話に出た。

「新堂さん!酔ってるんですね。いい加減に……して、下さい……?」

 ガンっ!!と鉄製の扉を蹴る音が現実とデジタル機器から重なって聞こえ、慌ててクローゼットから這いだす。やはり玄関と通話口から同じ音がする。

「早く開けろ」
「新堂さん……?」

 慌てて扉を開くと新堂が無理やり押し入ってきて入り口を閉めた。
 きついと感じるくらいの酒と煙草の匂いが想の鼻孔を犯す。一週間ぶりに会う新堂は疲れが見て取れた。

「……幹部会とは聞いてましたけど、そんなに飲んだんですか?大丈夫?」

 玄関に座り込む新堂をそのままに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してきて差し出した。だが新堂は水より想の腕を掴んで抱き寄せた。煙草の匂いに想は顔をしかめる。

「次の白城会を仕切るのは俺にほぼ決まった」
「それで出された酒を断れずに?」
「想、傍にいて欲しい」

 一瞬何の話かと想は思いを巡らせたが、極道になれ、ということかと溜め息を吐いた。

「あの……」

 想が腕の中でもがくと、更にキツく抱き締められた。苦しいくらいの抱擁に想が抗議すると玄関先の床に押し倒される。
 強かに背中を打ちつけ想が呻くが、新堂の唇によってそれも消えた。角度を変えて咥内を犯す舌に想が戸惑いながら応えようとするが、それを無視して貪るように深くキスを続けられ、呼吸が乱された。苦しい、と新堂の肩を押し返すが強い力で抑え込まれ、内股を冷たい手が撫で上げる。Tシャツにボクサーだけだった想は冷たさに震えた。手は確信を持って下着越しにペニスを撫でる。

「想、好きだ」

 カッとなるほどにその言葉に想は揺さぶられた。
 ただの酔っ払いの戯れ言と思えればいいのに、と解放された唇をきつく結ぶ。息を整えて新堂の下から逃れようとするが、首に噛みつかれて身をすくめた。

「痛……ちょ、新堂さん……!」
「名前で呼んでくれ。昔は呼んでくれただろう」

 まだ10代の頃のことだ。想はイヤだと首を横に振った。名前を呼んだら自分は新堂を求めてしまう気がするし、今酔っている新堂が想を求めるのは気が高ぶっているからで、本心ではないと知りたくない。

「じゃあ命令だ。たくさん借りがあるだろう?……名前で呼んでくれ」

 少しの沈黙の後、『漣……』と声が絞り出された。嗚咽の混じった声に新堂が謝る。

「悪かった……想、すまない。無理矢理、言わせたいわけじゃねぇのに……」
「漣、れん……」

 此処に来て初めて新堂が想を見た。赤茶色の髪が寝癖のように跳ねていて、夜中に起こした事を察する。
 そんな無防備な想は力なく手の甲で顔を隠しながら泣いている。気持ちが制御出来なくて想は悔しかった。ずっと新堂に恋をしていることに、彼の告白に、酔った勢いでも彼が自分を求めたことを喜んでしまったことに涙が溢れた。

「何で、泣くんだ……泣くな」

 手を取り、指を絡めると無意識に想は握り返した。新堂は想の涙を舐めてそのまま頬にキスをした。
 そのまま抱き締められた想はじっとしていたが、一向に動かない新堂にもしやと思ってみると、安らかな寝息を立てていた。

「は?!」

 想は声にならない怒りを爆発させて新堂の身体をどかし、壁を殴りつけた。拳の痛みより、壁紙のクロスに穴が空いてしまった事に慌てふためき自己嫌悪してし暫くその場で落ち込んだ。
 しかし、新堂を玄関に放置するわけにもいかず、ベッドまで引きずるようにして運んだ。

「のん気に寝てるし……なんなんだよ」

 ひとりで馬鹿みたいに感情的になってしまった自分を忘れたいと思ったが、無防備に寝姿を晒す新堂を見て悪戯してやろうと決めた。
 想は新堂の高そうなスーツを脱がせた。下着を下ろして半立ちのペニスを柔く揉むと、すぐに硬さを増す。口に含んで先端を舐めながら根元を手で擦ると更に大きくなり、時折ぴくっと反応を示した。裏筋に舌を這わせてゆっくりと下り、唇で袋を愛撫しながら扱く手は休めない。寝ぼけながらも感じているような吐息を聞き、想は携帯電話のカメラを点ける。

「イくとこ撮ってやる」

 がぶりと深くペニスを咥えてじゅぷじゅぷと唾液を絡めながらディープストローを繰り返すと頭上に呻くような声を聞こえた。更に浅く咥えて先端を舌で圧すように舐める。反応を示すペニスをとっととイかせたい一心でフェラチオを続けたが、髪に指が絡んで舐めるのを止めた。

「……なんで止めるんだ?」
「……起きちゃったんですか」 

 ペニスを放し唾液にまみれた唇を拭って想ががっかりした顔を上げると、指で髪を遊ぶ新堂の不敵な笑みが向けられたいた。










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