「……今日の夢はクソ古いな……」

 最近夢を見るのは、ぐったりして意識を失う程のセックスのせいかもしれない。それも週1回どころではなく、連日だ。友隆はそう考えて、目の前のピンク色の扉を開けた。
 そこは、友隆が育ったソープの入るビルだ。母親の顔は写真でしか知らないが、ここの店長がフーゾク嬢と共に友隆と姉を育ててくれた。唯一救いだったのは、店長も多くの嬢も、子供たちに優しかった事だ。
 姉はもれなくフーゾク嬢になり、姿を消したと思えば赤ん坊を友隆に押し付けて再び消えた。
 まだ子供だった友隆が夏を育てる事が出来たのも、店長と嬢たちのおかげと言えた。
 廊下も扉も壁紙も照明もピンク色。少し甘い匂いと金を数える音。それが日常だった。
 友隆はゆっくりとピンクの道を歩いて、再び現れたピンクの扉を開けた。
 友隆が高校生になる頃、店長はヤクザと揉める事が増えた。
 ボロいアパートのひと部屋と、貯金を友隆へ預けて姿が見えなくなってしまった。『友隆なら大丈夫』そう残して。嬢たちもバラバラになり、友隆は夏を目の前に途方に暮れた事を思い出した。
 そして嘉苗と紫乃。ふたりがいつもそばにいてくれた。上手く、優しく出来ない自分の代わりに夏を甘やかし、自分に手を差し伸べる。変わり者のふたり。

「この頃の紫乃、メイクが濃すぎだな」

 見た目は完全に女。つけまつ毛やらエクステやら、とにかく派手なギャルだった。心は今も変わらず優しさと思いやりの塊。
 紫乃は女の心を持つ男の身体をしていた。特に感情のない友隆は見た目通り女として接した。紫乃は偏見の目を向けない友隆が心地良く、いつもひとりでいる彼を気にかけていたようだ。そしてその子をずっと支える嘉苗。
 友隆は懐かしく感じていることに驚いた。

「この頃はまだ……」

 夏も笑っていた。赤ん坊の頃も、ずっと。成長して笑顔がなくなった訳ではない。友隆を好きになって、笑えなくなっていた事を突き付けられた。
 言葉が出ず、ただ懐かしい様子を見つめていたが、友隆は頬に強い衝撃を受けて現実に引き戻された。
 夢が途切れた。

「……?!」

 頬が熱い。視線を上げると、友隆を覗き込むように晃志郎が驚いた顔でそこにいた。

「どうして泣いてる?」

 友隆は晃志郎の笑みに怪訝な顔を返してから顔を背けた。確かに、頬に濡れた感触がある。
 晃志郎はぐいっと背けられた顔を強引に戻した。

「怖い夢でも見たか?泣きも笑いもしねぇお前にも涙腺はあったわけか」

 ふっと顔が近付き、晃志郎は友隆の頬を舐め上げた。
 明らかな嫌悪を示して友隆は肘で上に乗る男を押し退けようと起き上がった。しかし、更に強い力でベッドれ戻され、両手首を掴まれた。
 無表情に、しかし眉を寄せて睨むような瞳を受け止める晃志郎の口許に笑みが浮かんだ。

「どんな夢を見たか知りたい。俺でも泣かせられない男の涙の原因は?」
「……生理現象だ。あくびでもすりゃ俺でも出るわ」
「へぇ。なんか勃っちまったよ。悪ぃな、彩子はいねぇが穴、使わせてもらうぜ」

 欲情した晃志郎の声が重くのしかかり、友隆は激しく身体を揺すって抵抗する。膝蹴りを腹めがけて繰り出したが、体勢的にも簡単に押さえ込まれた。

「……や、べぇな。合意じゃねぇって興奮するわ」

 完全に馬乗りになり友隆の動きを封じたまま、脱ぎ散らかされていたシャツで両手を拘束すると晃志郎はベッドの柵へ繋いだ。

「いーい身体してんよなぁ。彩子に言われてジムも増やしたか?今くらいが丁度いいぜ。キープな。これ以上ムキムキされると俺でも萎えるわ」

 言いながら晃志郎は友隆の膝裏へ手を添えると、ぐぐっと力を入れて足を広げ、アナルを広げるように晒した。友隆は全力で抵抗したが、敵わない。
 先程の激しい行為からまだ数時間しか経っていないソコは赤くなり、表面のローションは乾き始めていた。晃志郎が躊躇いもなく舌を捻じ込むと、友隆はビクッと身体を硬らせた。初めて、ソコを舐められる。

「あー、中はぐずぐずしてんなぁ。すぐ入るな、こりゃ」
「クソ野郎」
「お前も気持ちイイんだろぉが。淫乱便所野郎」
「はぁ?」

 そりゃ、身体の反応だろ。と友隆は言いかけてやめた。この野獣はここまで来たら何を言ってもぶち込んで来る。言うだけ、無駄な事。
 アナルに当てられた凶悪なほど硬く立ち上がるペニスを感じて、友隆は冷めた視線を向けた。

「便所相手にガチガチにしてるなんて馬鹿かサルだな。笑えねぇ」

 挑発された晃志郎だが、軽く受けとり楽しそうに笑うと友隆のアナルへ一気に怒張を押し込んだ。
 友隆は息を詰めて歯を食いしばり、縛られたままの手で拳を握る。訪れた痛みと異物間にキツく眉を寄せた。
 
「ーーーーーっ!!!」







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