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「も、むり…イく、イ、ちゃう…ッ漣、…っ!!」

 それでも耐える為に無意識に脚を閉じようと抵抗したが、新堂が許さない。想は腰を捩って逃げようとした。ズルルっと奥まで侵入していたペニスが抜かれ、想はビクビクっと背を反らせた。イってしまった。
 新堂は、肩で息をする想の身体を反転させると、ベッドに押さえつけ、濡れて誘う小ぶりな尻を左右に開いた。
 想は息を詰めたが、もう抵抗も出来ずされるがまま。完全にベッドにうつ伏せた体勢で、再び新堂が割り入ってくる。角度が変わり、ダイレクトに感じる場所を圧迫されて想は喉を反らせた。身動きが取れない体勢が、求められているようで想の快感を煽る。

「ひ、あっ…!!あたっ、て…ッ…!」
「当ててる。…っ、締めすぎだ……すげぇな」

 新堂の乱れた呼吸が耳を掠め、想は甘く重い感覚に腰が支配されていく。彼が感じている。それだけでペニスははしたなく涎を垂らす。決して激しい動きではないのに、逃げられない体勢で腰をぐいぐいと押し込まれ、想はシーツを握り締めてただただ、鳴くことしかできない。
 奥まで挿入されたペニスが抜ける感覚に想は甘えたような声が鼻から抜けた。それを察して新堂は再び深くペニスを打ち込む。

「ん"あ"ぁあっ、あ"ぁ、ん、んっ、いぃ、っ気持ちぃ、お尻、だめぇ……れん、やだ……っへんになりそ……やば、ぃ……から、ぁあっ……!!」

 新堂は滑らかな想の背中に左手を這わせた。均整の取れた身体にほんのり染まる興奮の色。触れる自分の手の義指にも感覚が有るようにさえ感じさせる。
 自身の下で悶えるように快楽に抗いながらも貪欲に味わう姿はエロい。
 微かに想がうしろを見やり、快感に囚われた表情で新堂を呼んだ。そっと背中に身体を寄せ、涙や唾液に濡れた頬を舐める。
 
「…想、もっと欲しい」

 耳元で囁く声に新堂の欲と熱を感じて、想は腰が跳ねた。

「ぅ、あ!イッ、てる…!から、だ、めッ!やだ、も…イキたく、な…いッ…!あぅっ
あ、あ…ッイく、イ……くぅ……!れんっ…れんっ!」

 ぐっと奥を暴かれ、想は何度も首を横に振った。身体はもっと、と新堂のペニスを締め付けて離さない。ローションや体液でぐじゅぐじゅにとろけたアナルは貪欲に新堂のペニスを貪る。想は何度も新堂の名前を呼んだ。

「…っ、出すぞ」

 熱い息遣いが想の耳元にかかり、想はぞくぞくと腰が痺れた。期待して、ベッドに擦り付ける形で常に刺激されていたペニスから先走りが溢れた。ベッドも肌もぐちゃぐちゃだ。
 新堂は低く唸ると、ペニスをギリギリまで抜き、奥まで打ち込んだ。何度か繰り返し、想が達するのとほぼ同時に体内に熱を注ぐ。
 熱いものを感じて想は声も出せないほどの快感に攫われた。酸素を取り込もうと必死に呼吸を繰り返す。シーツを握る指に力が込もり、腰が痙攣する。自分を失うかと錯覚する程の快楽に耐え切れず涙が頬に伝った。
 背中に新堂の身体が触れ、抱き締めるように包まれた。肩やうなじに触れる唇の熱さと、新堂の吐息を感じる。想はゆっくりと脱力し始め、心地よい甘いキスに目を閉じた。

「想、…大丈夫か?」
「ん、気持ち…いぃ…疲れ…た…」

 想の正直な言葉に、新堂は小さな笑い声を立てた。
 その声に想のとろけた顔に微かな笑みが浮かぶ。未だに中に居て、萎えていない様子の熱に、身体が反応しそうになるが、それよりも先に意識が遠のく。甘くふわふわした眠気と背後の体温が想を満たす。

「想…」

 愛してる。そう囁く優しい声が耳に残り、想は安心して腕の中で目を閉じた。

 



 想と島津、蔵元はそろって清松家を訪ねていた。香典を渡し挨拶を済ませると、好き勝手盛りの息子のバイト先と知っていた家族は、『大変お世話になりました』と深く頭を下げた。
 帰りの車の中で静かに蔵元は話を振った。

「西室、辞めないって。ふたりが居ない間も働いてくれてたよ。凌雅さんも様子見に来てくれたし」
「そっか。よかった…西室は辛いよね」
「寂しいだろうな。世話の焼けるダチがいねぇと」

 いつもふたりでふざけて、連んでいた姿が思い浮かぶ。
 日常が繰り返されるように戻っても、そこに無いものがあるのだ。それは一生戻る事はない。
 
「そう言えば、カズマくんの調子は?」
「薬は断ててるが、まだ普通には戻れないな。アイツが社会復帰できたら、一緒にリョウの散骨する約束してるから、それを目標にして頑張ってる」
「よかったねぇ。俺はてっきり後追いしちゃうかと思ってた」
「正直、俺も」
「俺もそれが心配だ」

 蔵元は場を和ませようと言った冗談に、更に深刻そうに同意したふたりを見て焦った。

「ねぇ、なんか明るい話ないの?!」
「あー……俺、ももちゃんと結婚するわ」

 運転しながら、島津のさらっと言った一言に想も蔵元も思わず後部座席から乗り出して驚きの声を上げた。

「こんな顔怖いのに?!あんなふわわっとした可愛い子と?!」
「蔵元てめぇ、ぶっ飛ばすぞ」
「塩田さん、許してくれたの?」
「いつプロポーズしたんだよぉ、島津ぅ!」
「俺も結婚を考えた事はあったが、帰国したらももちゃんにプロポーズされた。…塩田さん了承済み。まだ大学生だから、ももちゃんが卒業したらな」
「すごい!おめでとう島津っ!お祝いしたい!」
「いや、まだ気が早ぇよ」
「逆プロポーズぅ!?ももちゃんカッコイイー!!子どもは?まさか…もう?!」
「蔵元、後でマジ許さねぇ…」 

 ハンドルを握る島津の拳が震えた。
 怒っているのに恥ずかしそうな島津に、想は緩む顔が抑えきれずに両手で顔を覆って笑いを耐え、後で腹に重い一撃を喰らうことになる蔵元も呑気に笑っていた。






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