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「俺も、頑張ってみる。父親の機嫌の為にずっと勉強だけしてきて、弟も苦しんでる。でも…遼平さんみたいにきっかけを逃さないようにしないと。きっと今だよね?」
「ダメだったらいつでも泊まりにきて。何度でもチャレンジ出来るよ。幹汰くんは俺よりしっかりしてるから大丈夫」

 幹汰は頷いて遼平と唇を重ねた。
 「好き」と囁いた言葉は幹汰の本当の気持ちだった。
 啄むようなキスを繰り返しながらシャツの裾から手を滑り込ませて乳首を押し潰すように弄ると、遼平の身体はビクッと震えてじわじわと広がる快感に甘い息を漏らした。
 遼平が幹汰のベルトを外してズボンを寛げ、下着越しにペニスに触れると少しずつ熱を帯びて硬さを増す。

「かん、たくん…舐めたい」

 言われて幹汰は一気に身体が熱くなる感覚に目を閉じる。

「俺も…」

 遼平を大切に、気持ちでも繋がりたいと強く思ってそう言ったが、フェラなどしたことがない幹汰は正直不安に声が震えた。それを察して裸になった遼平が向き合うように座って幹汰のペニスをゆっくりと扱きだした。
 触りながら服を脱がせて幹汰の首にキスをする。

「無理しないで。嫌じゃなかったら…俺のに触って」

 耳元に甘く聞こえる遼平の声に、幹汰は優しく彼のペニスに触れて先端を指の腹で擦るように弄るとすぐに先走りでトロトロになりはじめた。

「あ、ん、…ん…幹汰くん…気持ちい…嬉し、ん」

 素直な遼平の言葉に幹汰は彼の肩や首にキスを繰り返しながら行為を続けた。
 遼平にされるように根元から先端へ大きく動かし、先走りを絡めて先端を擦ると甘い疼きに身体が震えた。遼平の声が更に幹汰を高める。
 ふと視線が交わり、遼平の快感に潤んだ眼鏡の奥の瞳が幹汰に微笑んだ。幹汰は噛みつくようにキスをするとそのまま遼平を押し倒す。遼平の眼鏡をローテーブルに放り、舌を絡めてお互いに貪るようにキスをした。
 ほぼ同時に達すると、幹汰は愛の言葉を彼に向けた。遼平も何度も愛しい人の名前を呼んだ。





「兄ちゃんっ…!昨日大丈夫だった!?」

 次の日、学校を休んだ幹汰 は喜義の下校時刻に中学の前に待っていた。
 気が付いた喜義が走ってきて幹汰を上から下までチェックした。

「野宿なんてしてないから心配するなって。喜義こそ、ちゃんと、お礼してきたか?」

 大きく頷いて笑う弟を守りたいと幹汰は強く思った。学校の友達に手を振って別れた喜義は幹汰の雰囲気が柔らかくなったことにほっとしていた。
 家を出てから喜義は不安で泣いたが、絶対に幹汰も不安だったに違いないのにこうしていつも自分を気にかけて迎えに来てくれる。 そんな強い兄が居てくれるだけで喜義は安心できた。隣を歩きながら泣かないようにがんばろうと心に決める。

「幹汰…!喜義!」

 二人を呼ぶ声に足を止めると母親が外に立っていた。泣いたのか目元が赤い。
 幹汰も喜義も母親に抱き締められたのは久しぶりすぎて驚いていた。彼女は泣きながら謝罪を繰り返し、帰ってきてくれてよかったと言った。父親に怯えていたが、二人を失うと思った母はこれまで何も言わなかったことをとても後悔していた。

「母さんの実家に行きましょう。少し距離を置けば父さんも冷静になれるわ。電車を使えば学校も変わらずに通えるし、母さんも…二人と向き合いたいの。父さんとも」

 揺らがない瞳に、今の状況を変えられるなら何でもしたいと二人は頷いた。






「ちょっと静かに言って、分かってるよ。うん…いつもの『ふくや』だから心配いらないって。じき終電だから間に合わないし。明日は土曜日だから映画見て帰るよ。え?遼平さんとだから心配いらないって」

 じゃあ、と母親との通話を、終わらせて読んでいた本を閉じる。
 くすくすと笑う声に溜め息を吐いた幹汰の後ろに遼平がやってきて、顎を上げて遼平を確認した幹汰の額にキスが落ちる。

「お母さん泊まるって言うと心配する?」
「うん、悪い友達がいるんじゃないの?って。でも『ふくや』って言うと安心するみたい。どう見ても遼平さんは悪い友達じゃないってことだね」

 コンタクトにして髪も切った遼平はサッパリとして、初対面でも好印象を与える風になっていた。
 一度、母親が心配で『ふくや』を一緒に訪れたが、寂れた古本屋だと分かるとそれ以来安心して遼平に預けるようになった。
 いつか関係も打ち明けられたらいいな、と幹汰は思う。母親とは上手く行っているが、父親とはまだ別に暮らしていた。少しずつ時間をかけるしかないと、遼平も見守っていた。

「明日、楽しみだな。あ、今日は一緒にお風呂入ろうよ」
「すぐそれだ。ヘンタイ…あんまり舐められてイかされると次イくまでに結構かかるんだもん」
「俺は大歓迎だけど…?」
「…ヘンタイ。俺、こんな人のことが好きなんてヤバいのかな」
「…意地悪。そんなこと言っていつも毎週泊まりにくるくせに」

 二人で笑って店の扉を閉めて、幹汰はそっと鍵をかけた。




おわり
→遼平の過去の話



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