21


 

 想は無言で身体を反転させた。新堂の指が未だにうねる様に蠢めく内部から抜け、ビクッと腰が震える。
 普段は着ないような少し派手なパーカーから伸びた足を少し広げ、台に手をついた。そして先を促すように背後を見た。

「漣、はやく…」

 先ほど男の色気を放っていたかと思えば、ほんのりと頬を染め、少し恥ずかしそうに強請る。新堂は思わず笑いそうになった。振り回されると言うのはまさにこの状態なのではないかと。
 立ち上がった新堂は手触りのいい肌に手を触れ、尻から腰を撫で上げる。鼻に抜けるような想の甘い声を聞き、新堂も自身の中の熱が一気に上がるのを感じた。
 最近は忙しく時間もすれ違いが多かった事を思い返す。欲しいのはお互い様だろうか。新堂は自分が触れている想の腰から脇腹を撫で、胸元へとすべらせた。

「まだキツいんじゃないか?最近していなかったしな」
「だ、大丈夫です。少しくらい痛くてもいいから…どうせ打撲傷で身体中に違和感はあるんです。それより漣からの痛みのほうがいい」 

 痛いだけじゃないから…と想は背後の新堂へ手を伸ばし、頬に触れた。想の黒い目は少し潤んで欲情を匂わせているが、それ以上に新堂の存在を求めているようだ。
 新堂は身体を寄せて振り向く想の唇を奪うと、その体勢のまま自分のペニスを想の入り口へと押し付ける。
 上体を後方に捻った体勢で腰を押さえられると、想は動きが制限された。それでも新堂からの口付けをもっとと求めて舌を追う。甘く優しく舌を舐られ、疼く腰が震えた。
 ぐぐっと想のアナルを押し広げるように大きな熱が侵入してくると、想は微かな痛みとその存在に息を詰めた。調理台に置かれた手に力がこもる。

「ゆっくり息を吐け。いつも上手くできるだろう?そんなに急くな。俺はここにいるだろうが」
「ん、っふ…は、はい…んっ、ん、っく…」

 ハァ、ハァと想は乱れる呼吸を必死で整える。新堂は想の吐息さえ奪おうかのように唇を塞いだ。想はビクッと身体を震わせ、目を見開いた。呼吸をしろと言っておきながら、それをさせない新堂。想を翻弄する舌に意識をやれば、ぐんっとペニスが奥へと突き込まれ、目尻からゆっくりと涙が伝った。
 新堂の脈を確かに感じて身体よりも心が深く満たされる。想は安心感に涙腺が緩み、瞼を閉じると涙が溢れた。
 ずるりとペニスが引き抜かれ、大きな熱をしゃぶっていたアナルはひくひくと喪失感を訴える。しかしすぐに深くまで熱を収められ、歓喜に震えた。そのまま肌を打つように何度も想の内部は硬く滾るペニスを突き込まれる。翻弄されるままに塞がれた唇の隙間からくぐもった声が漏れいく。
 想はいつもより少し強引で激しいその腰つきにただ翻弄された。しつこいくらいに甘い口付けに必死で応えようとするものの、敏感な内部を突き上げられると立っているのがやっとだった。唇を解放されると、途端に想の声がキッチンに響いた。

「あぁっ、ん、ん"ン…あぅ"、も…イく…っ!」

 ガクガクと膝が震え出し、想のアナルが新堂を締め上げる。背後で聞こえる新堂の息遣いひとつにさえ想は快感を増幅させられるような錯覚を起こす。必死に震える足腰を立たせた。
 もう限界だと訴えかけたが新堂がペニスをギリギリまで引き抜き、動かなくなる。アナルの淵を擦るように浅く出し入れされて唇が震える。

「っ、…あ…?」

 想は不意に激しい突き上げが止まり、あと少しで達することができたのに…と一瞬呆けた。だが、新堂のゆっくりとした動きにハッと息を飲む。新堂が腰をゆっくりと進め、ぐっぐっと押し込むように想の性感帯を押し上げ始める。

「っあぁ…!そこ、や…いや…だ、れんっ」

 射精を伴わない絶頂を何度か体験しているが、一瞬怖くなるほどの感覚だと覚えていた。それは決まって新堂にしつこく内部を愛される時や、今まさに押し潰されている場所への刺激だ。あまりにも的確な新堂の動きに、抗う事も出来ずに想は頭を振った。
 ぬちぬちという厭らしい音と自身の乱れた呼吸が想の耳を支配する。目の前が一瞬眩しく感じたと思った時には絶頂に達していた。

「ーーーっく!ん"んっ…あ、あ…ぅ、あ…っ!」

 ビクッと何度も腰が跳ね、身体の制御が利かなくなる。想のペニスはとろとろと先走りを垂らしながらも射精はせず、アナルで達した事により、快感の波がなかなか引かない。微かに漏れる声が新堂の名を呼び、それに応えるように新堂も想の名を呼んだ。
 脚に力が入らなくなり、想は完全に上体を調理台に預けていた。意識もふわふわと留めて置けない。そんな想の身体とは逆に、ひくひくと痙攣しながら新堂のペニスを締め付けるアナルは貪欲だった。
 脱力しかけている想の、まだ硬いペニスを掌で包み擦ると想は甘い吐息交じりの声を上げた。

「ん"ぁっ…あ、んん…っん…は、ぁっあぁ」

 されるがまま、今度は射精を促されてあっという間に達してしまった。続く絶頂により想のアナルが締まると、未だに内部に居る新堂のペニスを熱く大きく感じてしまう。乱れた呼吸と同じくらいガクガクと膝が震え、新堂に支えられてなんとか体勢を保っていたが、崩れ落ちる寸前だ。

「良かったか?」

 頸や肩甲骨に何度もキスをしながらゆっくりと腰を引き、新堂が聞く。
 想は答えることが出来なかったが、イエスとしか言いようがない。だがまだ新堂は達していない。なんとか彼を良くしたいと思考の端で思ったが、想は身体を制御出来なかった。
 意識までがボヤけてきた想は落ちてくる瞼を上げることが出来ずに、一度目を閉じた。それと同時程に想の中から新堂が出て行く。
 新堂はくたっと力を無くした想を抱くとベッドへと運び、常温で置かれていたミネラルウォーターを開けて口に含んだ。そのまま想に口付け、少しづつ流し込む。ゆっくりと嚥下する想の髪を撫で、一度唇を離すと再び口移しで水を与える。よく休めるようにと軽い眠剤を共に流し込んだ。

「少し休め」

 新堂の声はいつも通り、優しい。しかし表情はあまり穏やかと言えないものだった。


 



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