ーーーパッ……
 明るい光に想は顔を上げた。続いて低くドンーー!と響く音に花火が始まったことを察して新堂は想のアナルに深く埋めてあった指をゆっくりと抜いた。

「いいところだったのに。残念だ」

 どこか楽しそうに言いながら、新堂は想の乱れた浴衣を綺麗に直し、背後から頬にキスをして身体を離した。
 想は中途半端な状態から動けず、窓に額をゴツ、と当てて花火を見つめた。冷たさに一度目を閉じる。
 周りの建物もあまり無いいい部屋からのいい眺めなのに、想はもやもやとした感覚に静かに深呼吸をした。数秒間そうしていると、連続で花火が打ち上げられ、目を開く。
 意を決して後ろへ視線を変えると、新堂はベッドの端、足元あたりに座って花火を見ている。
 想と視線が合い、新堂は目を細めた。

「あ、……」

 想が初めてその視線を感じた時、冷たそうに見えた。だが、今ではこの視線の熱さを知っている。涼しげな顔をして常に欲など感じさせない彼のその視線が実は貪欲なことを知っている。
 想は身体が震えた。
 気が付けばベッドに座っている新堂の膝に跨がり、想は恥ずかしさを超える欲求のまま新堂をベッドへ押し倒した。

「花火はいいのか?」
「……ん」

 想は新堂に乗っかり、首元に顔を擦り付けて彼の香りを吸い込み、そのまま首筋を舐めた。
 想の髪を撫でるように新堂の手が優しく頭に触れ、それだけで想はじわっとペニスを濡らした。
 時折響いてくる花火の音と、窓際を照らす光を横目に、想は新堂の浴衣を肌けて下着の端を噛むと、ずらすように下げる。固くなり始めているペニスが現れ、想は根元をちゅ、ちゅ、と軽く吸い、舌を這わせてゆっくりと先端まで舐め上げた。
 新堂は上体を起こして想の髪を優しく撫でたり、耳元を指先で撫でたりしながら想の恍惚とした表情を見つめた。
 ぢゅぱぢゅぱと厭らしい音を立てても気にせず、想は口に含んで頭を動かした。
 深くまで咥えて舌を動かし、浅く変えて先端を唇で甘噛みしたり、はぁ……っと甘くとろけた顔でそそり立つペニスに唇を寄せた。
 期待に寂しがるアナルに入れて欲しいのに、ずっと舐めていたくて無心に新堂をしゃぶる。
 ぴく、と反応を示して甘い呼吸を静かに繰り返す新堂を感じて、想の身体は一気に熱を上げた。
 ぢゅっと先端をしつこく吸えば、新堂は微かに笑って想の顎を上げさせた。

「いつまで舐めてるんだ。欲しいだろ?」

 想は外れかけれてる箍をなんとか外れないように押さえ込み、新堂の言葉に微かに頷く。
 欲に濡れた二人の視線が絡み、想は腕を新堂へ伸ばした。

「漣が、欲しい……奥、いっぱい……して」

 新堂は想の腕を引き、身体を抱き寄せた。

「花火が見えるように後ろからな?」

 想は耳まで赤くし、俯くように頷いた。
 ベッドに座る新堂へ背中を預けた想は新堂に支えられながらゆっくりと熱いく滾る新堂のペニスをアナルに埋め込んでいく。押し広げてくる感覚はやはり圧迫感があるが、それも始めだけだと知っており、先端が埋まれば想は唇をきゅっと結んで腰を下ろす。

「ンンッ、ん、……ふ、ぁあ!すご、い……」

 腰がビクビクと跳ね、ベッドという不安定な場所に着いている膝に上手く力が込められず、想は自身の腰に添えられている新堂の手を掴んだ。
 ドンー……ドンー……、と花火の音を耳に聞きながら想は花火どころではなく、目を瞑っていた。
 新堂はそんな想を見て奥までがっちりと飲み込んでいるアナルを軽く突き上げた。小さく短い声を上げ、想は内股に力を込めて引けそうになっている腰を奮い立たせる。

「あ、う……っひ、ぁ、アッ!!」
「花火、せっかくなんだから見ないと」

 俯いている想の顎を指先で撫でた新堂が肩に噛み付いた。

「ぁ゙あっ、いた、ぁ……れんっ……!」

 噛み痕に舌を這わせ、吸うように口付ける新堂の行為に、想は甘い吐息が零れ、熱く勃ち上がって震えているペニスから先走りを溢れさせた。

「想は花火の方が好きなのか?花火の音が聞こえる度に反応して中が締まる」

 新堂がとろとろになっている想のペニスを握って刺激すると、想は首を振って腰を揺らした。
 イきそうなのか、だめだ、いやだ、と言う言葉も甘えたような喘ぎに混ざって意味をなさない。新堂は想の首筋を舐め上げ、下から腰を使い始めた。
 肌を打つ音が時折花火の音の合間に響く。想の両手は後ろの新堂に繋がれ、膝の力は抜けてガクガクと震えている。それでも新堂の手に指を絡めてしっかりと握っていた。 

「も、……イくっ、れん……れ、んン!!」

 イく。
 そう思った瞬間、これでもかとペニスにしゃぶりついていたアナルからジュルッと音がするほど勢いよく熱が抜かれた。

「っぅ?!あ、や……っ!な、なんで……?」

 どろっとペニスから精液を滴らせ、想は涙が溢れた。

「もっとよくしてやるから。泣くなって」
「や、ぁ……欲しぃ……」

 ヒクヒクと桃色に腫れたアナルに新堂のペニスが押し付けられ、ズンッ!と一気に突き込まれた。
 寸前まで高められ、切なげに熱を持て余していた身体は簡単に達した。アナルでの絶頂に、想は目を見開き、腰がビクッ!と跳ねた。
 新堂は奥に入れたままぐっ、ぐっと腰を押し付ける。
 良い角度で突き上げられ、腰から湧き上がる快楽の甘く、重たく痺れたような感覚に翻弄され、想は上手く酸素が取り込めない生き物のように呼吸を乱した。

「……ッ、あ、あ"……?ん"ん、ぅ、すご……いっ……イ、ってる、の、止まんな……」

 びくっ、びくっと震える身体と、激しく収縮するアナルを感じ、新堂は抵抗の抜けた想を優しく抱き締め、名前を呼びながらベッドへ倒した。
 甘く消えそうな声に答えるように名前を呼ばれ、新堂は胸が熱くなる。

「ごめん……止められない」

 新堂の声音が微かに震え、想はのろのろと背後へ視線を向けた。

「……やめ、ない……で……漣、好き、だよ」

 想は乱れた息の合間に言葉を紡ぐ。優しく髪を撫でる新堂の手に、幸せそうに目を閉じた。
 背中に、首にキスを受けながら、想はうつ伏せで全身をベッドに預け腰だけ新堂に差し出したような格好で甘美な絶頂の余韻にひくひくと震えた。
 想が落ち着くまで、新堂は想の背中に指先を滑らせ、肌の感触を楽しみながらすべすべのお尻を撫でた。未だに新堂を深く咥えてビクつくアナルを観察するように指で結合部を押す。瞬間、想は腰を跳ねさせ鳴いた。

「っあ、や……っ」
「嘘付くなよ。いいって言ってみろ。もっと良くなるよ」

 新堂がゆっくりと腰を揺すり始めると、想はシーツにしがみついて荒い呼吸を繰り返した。イったばかりで敏感な内部が新堂のペニスでゴリゴリと擦られる感覚に身体が戦慄く。

「良いだろ?想のここはイイって言ってるけどな」
「んあぁ……っ気持ち、いぃ……すき、れん……花火より、れんが……ゔぁっ、イく、イく……ッ!!」

 飲みきれない唾液が口端を伝って想の顎を流れた。後ろに腕が引かれ、不安定な格好のまま激しく腰を打ち込まれた想は耐えきれずに再び達した。
 譫言のように新堂の名前を呼びながら打ち込まれる度に息を乱していく。それでも新堂が達しそうになっているのを察した想は膝を叱咤して腰を押し付ける。

「ぬ、抜かないで……っそのまま、中に……!」
「……ッ想」

 新堂は想の身体を引き寄せて背後から抱き締め、唇を重ねた。想はされるがまま限界まで背後の新堂へ、舌を差し出し、離れた片手を愛しさを込めて新堂の髪へ絡めた。

「俺の想はとんだ魔性になったもんだ」

 キスの合間、新堂は口端を上げて囁き、熱く締め付ける想の内側に欲望を吐き出した。
 想は新堂の熱を感じて僅かばかりの精液をペニスから垂らした。荒い呼吸とふわふわする意識が一瞬で現実に戻される。
 いやらしい水音を伴い新堂のペニスが抜かれ、想は仰向けに優しく返された。視界を覆う新堂の胸に手を伸ばして触れる。
 肌けた浴衣から覗く鍛えられた身体は汗ばみ、色気が滲んでいた。

「まだまだだ」

 想はごく、と渇いた喉をひくつかせ、トロけた表情で頷いた。








 新堂によって身体隅々まで洗われた想は、ぼーっと薄く開いた視界で真っ暗な夜空を眺めていた。もう日付も変わり、お祭りの跡形もない。想は下着一枚で新堂の膝に頭を乗せたまま目を閉じた。
 指一本動かすのも臆測で、今にも寝てしまいそうだ。優しく髪を撫でる新堂の手が唇に触れ、指先がなぞった。想はその指をぱくりと咥え、新堂は想が寝ていると思っていたのか笑った。

「…お腹空いた…漣の和風な朝ご飯が食べたい」
「じゃあ帰るか」

 想の為に用意した着替えのワイシャツをビニールから取り出し、身体を起こして着せてやりながら新堂は想の耳にキスをした。

「浴衣、ちゃんと綺麗にしてやるから来週の湖畔花火大会にも行くか?船を用意しておく」

 想の顔は一瞬で赤くなり、新堂の肩に顔を埋めた。花火と聞いて先程のことを思い出した想は、のろのろと腕を首へ回して小さく頷く。

「……その……花火、見てからにして下さい」
「なんのことだ?今夜だって想から誘っただろ」

 新堂がからかうように笑うと、想は一層恥ずかしくなり新堂の肩へ顔を押し付けて、がぶ、と噛み付いた。




閑話。夏祭り。





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