旧、拍手お礼の小話です。時系列的にこのあたりなので、こちらに。






 新堂は灰色と紺が混じった肌触りの良い浴衣に袖を通しながら時計を見た。
 5階建てのオフィスの窓際に立つと、まだ約束の15分も前だというのに待ち合わせ場所にいる想の姿が見える。
 早くに着いても『着いた』などと連絡してこないところが想らしいと思い、新堂は口許が柔らかく緩んだ。
 通りは人で賑わい、浴衣や甚平姿が多い。少しオフィス街を離れれば、商店街の方には屋台が並び、大きな川沿いでは花火の準備で通行止めとなっていた。消防車が時折通りを通っている。
 帯を締めていると、ノックのすぐ後に中野が部屋に入ってきた。

「社長、この書類……あ!申し訳ありません」
「あぁ、ごめん。書類が?」
「前年度の物と比較してクライアントへの提示ファイルに入れてもいいですか?」

 頷き、新堂は浴衣の丈を整えた。
 中野が後ろの結び目をきゅっと直して、にこにこと笑う。

「素敵ですね。今日は切りの良いところでって言ったら殆どの社員が帰りましたよ。社長もお祭りデートなんて、若い。びっくりです」

 中野は浴衣姿の新堂にわざとらしく驚いた顔をして見せた。
 新堂は微かに笑って窓から下を示した。

「若いのはあっち。そわそわしながら『お祭り行きたい』って誘われてみな?浴衣まで用意されたら断れないですよ」

 照てるのを隠すようにお願いされて、嫌だと言えるはずもない。
 中野は微笑ましい二人のやりとりを想像しながら、オフィスビルの外にいる想の姿を見つけて頷いた。

「あはは、有沢さん見つけた。楽しんできて下さいね!」









「20時半から花火だって!」

 新堂の一歩前を歩きながら想は視線を向けた。
 はしゃぐまいと自制しながらも、キラキラした目をしている。浴衣姿はどこからどう見ても今時の若者で、時折向けられる女性からの視線に新堂の方が気付いていた。
 想は恋愛ごとには疎く、お祭りの雰囲気の相乗効果で人目を引く異性への高ぶる気持ちの籠もった視線にも気が付いていない。
 そんな普段と変わりないはずの存在が妙に愛しく感じて、新堂は口端を上げた。自然と目元が緩む。

「想、浴衣も似合うな」
「えっ、ホント?……漣もすごく似合ってます」

 想は楽しそうに微笑み、新堂の浴衣の袖を引いて人混みを進んだ。
 屋台は百近くが並んでおり、人でごった返しているが嫌な顔もせず想は雰囲気を楽しんでいた。提灯や電飾の灯りと、溢れる音。普段は嫌になる人混みも不思議と不快感がない。新堂は怠いと思いながらも、想の嬉しそうな様子を見るとただただ和んだ。

「……想、なにも買わないのか?てっきり端から食べまくってそうな姿を想像したが」
「あ……ごめん。お腹空いた?何か食べますか」
「俺はいい。想のことだ」

 想は新堂の隣を歩き、行き交う人にぶつからないようにしながら眉尻を下げた。

「お祭り、小さい頃は春とよく行ったんです。でも、春は小麦が駄目だったから屋台で買ったことは無いんです」
「なるほどな。想は平気だろう?」
「うん。なんていうか、もう習慣かな。漣は食べますか?」
「……早く帰って想が食べたい。今夜の想は堪らなく旨そうだ」
「……オヤジっぽい」

 想は少し赤くなった顔を隠すように俯いて笑った。









 今夜の花火大会は有名で、この時期の近隣ホテルや宿泊施設は満室だった。しかし想はその内の一つ、眺めの良さそうな高さの階へ上がり、部屋の扉を前に眉をひそめた。

「あれ、満室って言われたような……?」
「何かあったときの為にそれなりに部屋は空けておくものだ。俺みたいなのが来たときにも困らないだろう?」

 予約なしでもいいんだ……と、想は苦笑いして部屋に入った。
綺麗な室内と作りには目もくれず、大きく開けたはめ込みの窓に飛び付いた。

「すごいっ……!商店街の方まで見える。あ!あの辺り、三咲さんの店がある!……はぁ、灯りがすごく綺麗だ。ここからなら花火もよく見えそう」

 窓際に張り付く想を、優しく見つめながら新堂はその背中を後ろから抱き締めた。うなじに唇を当てて軽く噛む。
 想はくすぐったさと温かさにに一瞬目を瞑り、首を後ろに向けて新堂を見た。
 唇が触れ、どちらともなく舌を絡めてお互いの唇を甘く求める。ちゅ、と唇が離れるとき、想は新堂の口元を追った。
 そんな姿を見ていた新堂は僅かに口端を上げて触れるだけのキスをもう一度行った。
 想は背後の新堂のキスを必死に受けていたが、浴衣をはだけて下着越にペニスを大きな手に包まれ、ハッとして顔を真っ赤にした。

「は……花火、始まる……」
「それじゃあ、始まるまで」

 新堂は後ろから想の身体に腕を回し、控え目に主張する乳首を右手で遊びながらペニスを擦る。すぐに先走りが溢れ出し、想は悩ましげに眉を寄せて新堂の手に感じていた。
 ちゅっと頸を触れ、優しく名前を呼ばれると想はビクッと身体を強張らせ、新堂の手で達した。
 想は羞恥に顔を染め、目をぎゅっとつむって慌てて謝った。

「んうっ、ぁあッ!っ……す、すみません……」
「なんで謝る?俺の手に感じてくれたんだろ?」
「ん…………好き、です」

 耳元に触れる唇と柔らかな言い方に、想は頷いて新堂の顔に頬を擦り付けた。
 新堂は甘えるような仕草に可愛いと思いながら、想の出した精液を指へ絡めると下着の隙間から手を入れ、アナルへゆっくりと塗り込むように中指を入れた。
 昨晩も想が意識を飛ばすギリギリまで欲望を受け入れていたアナルは程良い柔らかさと、キツい締め付けを味わえる。人差し指とすんなりと咥えた。
 きゅ、と締まるアナルをゆっくりと押し広げるように中で指を開けば、くぽっと可愛らしい音が鳴り、想は腰を揺らして首を振った。

「ん、ん……っこんな所で、ダメじゃ……」
「大丈夫、心配するな」

 少し戸惑いつつも頷いた想だが窓際と言う恥ずかしさに俯いた。
 焦らすようにゆっくりと指を深くまで埋め込み、締め付けを味わいながら新堂は指を引き、これまたじわじわと指を埋め込む。
 想は声を耐えながら窓ガラスに手を突き、指先が白くなるほど力を込めていた。

「は、はぁ、……れんっ……指、やだぁ……」

 じれったい指の動きと、乳首を弄る指先に想のペニスは完全に勃ち上がりとろとろと先走りが滲んでいやらしい音を立てている。もどかしさに想は無意識に新堂の手に臀部を押し付けた。
 確かな熱が。新堂のペニスが欲しい……想は口端から垂れそう唾液をごくりと呑み込んだ。
 乳首を弄る新堂の指先が摘むように動くと、想のアナルは締まり、トロトロとペニスから一層先走りが漏れた。

「ん……、あっ……!れ、ん……もっと……」
「もっと?どんなこと考えてるんだ?」

 とろけた表情が窓ガラスに映り、新堂はその色気の滲む姿に自分のペニスが固くなるのを感じた。
 耳元で囁く新堂の声と、アナルに彼の熱いペニスが埋まる瞬間を想像した想は指を根元までくわえ混んで腰震わせた。甘い息を吐く。
 愛しい新堂から何度も甘く激しく与えられている快感を心も身体もしっかりと覚えており、想は素直に望みを言葉にしようと唇を開いた。








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