「はぁっ、あん、イイ…っ?気持ち、いい?」

 夏は下の男に問いかけた。男はいいよ…と色気めいた吐息を吐き出す。
 寝そべった相手の腰に乗った夏は、体重を後ろの方へ掛けてベッドへ手を着き腰をグイグイと揺らしながら意識して内壁を締め上げた。激しいグラインドに男が息を詰める。腹筋の割れたガタイの良い自分より年上の男が気持ち良さそうに顔を歪める顔を見下ろして、微かな優越感が夏に戻る。
 やられっぱなしでたまるか。
 目を瞑り快感に浸りながらも腰を振る、薄く開いた唇から夏の吐息が弾んで零れた。

「ねえ、こっちも舐めろよ」

 復活したもうひとりの男が勃起したペニスを夏の唇へ押し付ける。夏は口を開いて舌を出した。そこにペニスが入り込む。れろれろと咥えたまま舌を絡めれば、挿入している男がサボるなと言う様に腰を突き上げた。夏の声は頭を押さえつけペニスを口へ押し込んでくる男のせいで漏れることはなかったが、苦し気に呻く声が微かに漏れた。

「んぐ、ん!んぅっ!」

 苦しさに涙が滲み、夏は苦しさを訴える様にフェラチオを強要する男を見上げ首を横に振る。イラマチオ経験のない夏は喉を突かれ、呼吸がままならずもう無理だと視線で訴えた。けれど男は口許を上げるだけで腰を更に押し付ける。
 そんな夏の様子にカメラマンの嘉苗が男に止めるように手で指示を出した。だが、男はノッているようで微かに首を振った。
 嘉苗は気分をシラけさせないように滅多に途中で止めることはなかったが、一旦止めようとカメラを下げる。

「横になれ」

 嘉苗のストップが入る前に夏の下にいた男が夏の身体を引きずり下ろして正常位に戻る。口へ咥えさせていた男は渋々下がり、夏の手に握らせた。

「はぁっ、…は、はぁ…っ」

 苦し気な呼吸を繰り返しながら夏はただ頷いた。酸欠からくらくらしている頭でなんとか演技をと思うが、身体も自由にならず腰を打ち込まれれば唇から漏れるのは甘い声だけ。制御のきかない身体のはずが、腰だけはもっとと求めるように蠢く。
 夏は撮影で初めてイかされていた。
 いつもはコントロールできる射精ももはや夏の意思ではどうにもならない。

「ふぁっ、あ!あぁあっ!そこ、当たって…!」

 夏の絶頂に合わせて男が中に出す。トクトクと脈打つペニスが引き抜かれ、もう一人がすかさず夏を犯す。とろけ切った身体と思考で夏は代わる代わる様々な体位でアナルにペニスを受け入れた。





「初めて言われましたよ。あんなに感じてるのに『気持ちいい?』なんて。大抵こっちが聞いたことそのまま返す子が多いっすからね」
「新開くんはやっぱプロなだけあるね。そう言うところみてんだな。夏はあれでも男だから主導権握りたいの。いつもされてるけど実はさてれあげてるって言うね、なんつうのかな…ひねくれてんのかね」

 さっそく撮った映像を編集する嘉苗の隣で、先程夏と絡んでいたひとりが編集を眺めながら笑った。
 新開と呼ばれた男はゲイビデオの中でタチ役として人気のある男優だ。いつもは他のプロダクションに所属しているため友隆たちのビデオに出る訳が無いのだが、いつもの会社が倒産したためフリーで仕事を始めたばかりだった。

「まぁ、新開くんのテクに蕩けない子はいないって有名だから、夏もくやしかったんじゃねえかな。倒産さまさま」
「まぁゲイビ専門の制作会社でしたからね。本数も知れてたし俺もいつ辞めようって考えてたんで。今は動画サイトとか普通にえげつないらしいっすからね、そりゃ潰れもします」

 ははっと笑う新開は、どこの会社でもうまくやれる自信がうかがえる。嘉苗は映像を切って切り替えてと作業しながら新開の言葉に頷いていた。

「うちだって同じだ。今はまだ自分たちで撮影した分で稼いでるけど、殆どは友隆の女優や男優の斡旋で稼いでるからな。うちの子の質は保証しまっせ」
「…さっきの子、嘉苗さんの特別っすか?もうひとりのヤローのイラマチオ止めようとしましたよね」

 にやにやと笑う新開の頭をプラスチックの下敷きで叩き、嘉苗は椅子の背もたれに身体を預けて伸びながら笑った。
 






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