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「粘膜からの摂取は薬もヤバいようにアルコールもやばいよー?お酒強い?あ、未成年か!あー……急性アルコール中毒になったらごめんなぁ。酒と一緒に薬も飲ませちゃったけど、まぁ合法のやつだし大したこたぁねぇか」

 ぎゃはは、と笑う男たちに怒る気力が早急になくなっていく。意識が朦朧として、ただ身体中が沸騰しそうなくらい熱い、と想は思っていた。身体から力が抜けて膝立ちもろくに出来ず、縛れた手首に体重がかかって痛む。その痛みが、なんとか想の意識を現実に留めさせてくれているものだった。
 目隠しされたままで、体内を出入りする無機物の唸るような振動が脳まで響いている。突然その塊が引き抜かれ、想は飛びかけた意識を引き寄せた。
 バイブが少し大きいものに変わって、執拗にアナルをいじられる。始めは一人、恐らく伊藤だけだったが、今は三人くらいに身体をいじられていた。様々な手の感触に、吐き気と嫌悪が腹を渦巻く。けれど抵抗する体力が痛みと熱に削がれ、想は動けなかった。
 既にペニスを起たせている男たちは抜いたのか、想の髪やシャツには精液が付着している。不快な臭いが車内に漂っていた。

「ん、んン……ぅあ……んん……」

 もはや抵抗出来ず思考も覚束ない想に男の声が遠くで聞こえた。そろそろ突っ込んでやろうぜ!と想の脚を開かせる。目隠しを外されてぼやけた視界には袖山の他に四人の男が興奮した様子で想を見ていて。その間抜けな様は何故か笑える。そこで、想の意識は一度途切れた。





 想が次に目を開けるとそこは寝心地のよいベッドで、暖かく少し汗ばんだ大きく硬い手に手を握られていた。首だけ動かして見ると若林がキツく手を握ったまま、いびきをかいていた。

「ちょ、……馬鹿力……手が外れない」

 起き上がろうとするが、身体は怠く熱っぽい様子でもう少しこのままでいようと考えた。若林の手を解こうとするがそちらも無理そうでため息をついた。反対の腕には点滴がされていて、液体はそろそ、終わりそうだ。

「起きたか。息苦しさは?」

 邪魔だ、と若林を足蹴にして新堂は想の顔色を確認する。新堂はいつもと変わらず黒髪を緩く後ろに撫でつけ、切れ長の目を細めて想を見た。新堂に蹴飛ばされても寝たままの若林をほっておき、寝たままでいいからペンライトを目で追え、と言われて言われた通りにする。脈を取られて額に手を当てられるとその冷たさに目を閉じた。

「まだ熱がある。点滴は外すぞ。刺された足は痛むか?」
「……身体中痛いです」

 点滴針を抜いてテープを止められる一連を見ながら素直に答えると額の手が頭を撫でた。

「……新堂さん?」
「なんだ?」
「俺、なんでここに居るんですか……」

 あのまま死ぬと思ったが、どう言うわけかまだ生きている。男たちに好き放題ヤられて捨てられた所を拾われたのか、と嫌な想像をした想は不快な気持ちに眉を潜めてから申し訳なさそうに自分の傍で眠る若林へ視線を移す。

「俺は運ばれてきた想を手当てしただけだから……鼻水垂らして泣きながら想を抱えて俺の所に来た。俺は医者じゃないって言ってるのに……」

 腕時計で時間を確認した新堂が想に時間を教えてくれる。明け方の三時を少し過ぎた頃だった。

「想が若林と約束していて助かった。事務所の前から連れ去られるのを組員が見ていたから早く見つかった」

 新堂の話を思い出しながら聞くと、自分がどうなっていたか鮮明に思い出される。あやふやな部分もあるが、大方男たちにいいようにされただろう。想は目を伏せた。嫌な記憶なのに、身体の奥がまだ熱いように感じる。熱の所為だと誤魔化すが、違った熱だと理解してしまうと尚更気が滅入った。

「あいつら……俺をボコボコにして気が済んだかな……」

 独り言のように呟いたが、弟が想の所為で自殺したのなら、言葉通り殺さなければ気が済まないだろう。想自身、家族のこと思うと醜い憎しみばかりが身体中を這い回る。それを消し去りたくて暴走しそうになる気持ちも分からなくはなかった。
若林が助けにやってきたとして、あいつらはどうなったのか。考えたくない想は若林の手を捻るようにしてなんとか外し、その手で目元を覆った。泣きそうだった。想は身体中が痛くて熱くて、頭の中も溶けそうだ。

「……俺、へん……」

 こんなに痛いところだらけなのに、芯をもった確かな熱に戸惑う。

「トイレ借りていいですか……?」
「そうだな、アルコール流すためにずっと点滴もしていたし。立てるか?」

 新堂に肩を借りてなんとかトイレまでたどり着く。
 用をたしてもやはり身体は奥の方から熱く、酔ったままのような感覚とむず痒い感覚に戸惑いながら、目を瞑ってクスリで熱さの篭った立ち上がる自分の性器を擦った。







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