2
友隆。彼はAV業のモデルを主に扱う事務所の社長だ。男も女もモデル達の質の良さから売り上げもそこそこだ。そして夏に取っては育ての親でもあった。夏の母の弟が彼だった。
「明日は人と会う。お前も外で遊んでこいよ」
「はい」
マンションに着いて上着を脱ぎ捨てた友隆は薬箱を漁っている。夏もジャケットを脱ぐと手を洗い、口を濯ぐ。何度も何度も繰り返していると、夏を手招きする友隆が視界に入って夏は彼の元へ向かった。
「なにしてる」
「今日のあの男優、口臭かった」
「はははっ!そら気の毒」
夏の遠慮のない言葉に友隆は声だけで笑った。夏は友隆の笑顔を殆ど…全くと言っていいほど見た事がない。
友隆は人形のような整った顔で自分の座っているソファへ来るように促した。夏が隣に座って友隆を見つめると、夏の身体を引いて後ろから抱き込むように座った。
夏は一気に心臓が高く跳ねるのを感じた。背中に密着する友隆の体温。彼の匂いは野性的で、夏を少し興奮させた。
赤ん坊の頃に母から、当時まだ13歳の中学生だった友隆へ預けられ、今まで母は一度も現れない。友隆は何も言わないが夏も小学校上の学年の頃には二度と会うことはないのだろうと理解していた。そして、その頃には友隆へ恋心を持っていた。母もいなかった夏は、友隆が全てだった。
友隆は夏に乱暴をしたりすることは無く、保護者として接して居たが職業柄性的にマニアックなことが家にも存在していた。友隆はAVモデルを教育していた。伸び悩むモデルを使い物にするため、身体をいじくりまわすのだ。自宅で。夏はそれをしょっちゅう耳にし、覗きもした。
保護者という関係を壊したのは夏だ。高校を卒業する頃、ソファで寝ていた友隆のスラックスを寛げ、肌に触れ、ペニスを咥えた。それを目の当たりにした友隆は、大して驚いた風も無く夏の髪を撫でた。そして友隆のペニスを咥える唇を指先でなぞり、もっと深く、と囁いた。友隆は自分に向けられる夏の視線に気がついていた。一線を越える気はなかったが、夏から越えた。夏は見様見真似でフェラチオをしながら友隆に触れて欲しいが為に、AVに出たい、と彼に強請った。友隆は夏に触れる事はあっても、本番をする事は一度も無かった。
思えばそれが始まりだったのか、終わりだったのか。夏にはもう分からなくなっていた。
受け入れられない、許されない気持ちだとしても、今はこうして自分に触れている彼の手を、肌を感じられる事が夏には全てだ。
友隆は夏にするように決してモデルと肌を合わせることは無いようで、医療用の手袋を嵌める姿ばかりが夏の記憶に強い。けれど、夏に触れる彼は素手だった。直接触れられていると思うだけで夏は自分が特別なのだと思えた。AVに出る様になって1年、既に成人はしたものの夏は未だに友隆に強い恋をしていた。
「と…ともたか…」
何度も己を翻弄して来た相手の身体を感じて疼き出す。
それを察した友隆が夏のベルトのバックルを指先で叩いた。
「さっさと脱げ」
「え…?」
「新しいアソビだよ。教えるって言っただろ。次の撮影でしっかりエロく鳴けるように準備だ」
「ま、待ってよ…さっきまでしてたのに…?」
すっと細められた友隆の瞳に夏は渋々頷いた。ゆっくりとズボンを脱ぎ、下着も下げた。下半身だけ露出し、上には黒いシャツ。友隆は両足を広げると膝に夏の足を掛けて強制的に開かせた。
一瞬息を呑んだ夏だが、逆らう気持ちを押し殺し友隆の太腿へ手を置くと縮む己のペニスから視線を外して目を閉じた。何をされるのだろうか、バイブは嫌だな、など頭の中で言葉を回して居た夏のペニスを友隆は袋ごと握り込み優しく、強く揉み込見始めた。夏は腰を捩らせ、その手に腰を押し付ける。
「自分で勃たせろ」
夏は二度と頷き、半立ちの自分のペニスを刺激し始める。
「やらしい奴だな。さっき散々鳴されて、まだ立ちつんだ」
耳元で冷たく言われ、夏は友隆の声に腰を震わせた。耳の中に舌を捻じ込まれ、甘い声が喉を通った。
「あっ!あぁ、んっ、ん、んぅっ…」
「本番のときも、そうやって鳴けよ」
小さく主張する乳首を爪で抓られ、夏は自分で擦っていたペニスから先走りが伝うのを感じて、口許が緩んだ。締まりの無い顔で、友隆の声と乳首への刺激を材料に夢中でペニスを擦る。片手で竿を、片手で先端をぐりぐりと刺激すれば腰が淫らに揺れた。友隆の脚に開脚したまま固定され、思う様に動けない事がもどかしい。
「おい、すぐイくなよ?手を離せ。手は俺の脚に置いて俺に背中を預けてろ」
止めたく無い。夏はそう思ったが友隆に、言われるがまま手を離した。震えるペニスが時折跳ねる様に頭を上げる。
「そういやコッチは弄ったことねえな…」
目を半開きにして、はふはふと短い呼吸を繰り返し友隆に甘える様に背中を預けていた夏だったが、ふとペニスの先端をに触れたものにハッと目を見開いた。怖くてペニスは見れず、困惑の表情で友隆を見つめる。友隆に表情は感じられないが、その目は夏を見つめた。
「尿道だ。分かるよな」
夏がちらりと自分のペニスを見れば、ローション濡れの綿棒がゆっくりと排泄の穴へ埋まって行くところだった。
← →
text top