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 小さな無人島に渡ったソイルは、毎日魚を釣り、キッチンに立っていた。スパリゾートの屋敷さながらの別荘に、多少の不便は誰も気にしなかった。共に島へ渡った仲間は観光地の島と屋敷を行き来していたが、ソイルは仲間が料理の腕前を褒めることが心地良く、閉じこもって料理ばかりをしていた。

「ソイル、ただいま」
「ん、おつかれー」

 観光地の島までボートで15分。買い出しへ出ていたクラークがキッチンへ荷物を置きに現れた。軽い挨拶を交わしてキッチンで夕食の下拵えをしていたソイルはクラークの持ち帰った袋を覗いた。

「あ!レモンさんきゅ」
「いえいえ」

 鶏肉にハーブを纏わせ、一旦冷蔵庫へしまったソイルの腰をクラークは引き寄せた。驚きの声を上げたソイルに、クラークは微笑む。

「う…?」
「しよ」
「は?!コリンとカルデロかいるだろ!」
「2人は明日まで帰らないよ。美人をナンパしてたからね」

 ソイルの置かれた状況を仲間は理解し、この島へは誰も呼ばず話さないことに決めていた。楽しむのは外で。仕事もしない。
 クラークはソイルの頬にキスすると、ゆっくりと耳へ唇を滑らせて甘く噛んだ。ソイルは色っぽい吐息を吐き出して視線をクラークへ向ける。

「俺も楽しみたいな」
「…女の子ナンパしとけよ」
「金にならない女はいりませーん」

 最低だな!とソイルは大笑いしてクラークのネクタイを引っ張り広いリビングのソファーへ背中から倒れた。引かれるがままにソイルの身体に覆い被さったクラークはネクタイを解いて唇をぺろりと舐める。

「たまには街へ出たら?」
「…ここが気に入ってんの」

 クラークが優しく頬に触れるとソイルは微かに口端を上げて答えた。
 厄介な自分を抱えても変わらず、今までより仲間らしく居られるのは皆の優しさだと実感していた。マフィアのごたごたに巻き込みたくはないし、数年もすれば忘れられてしまうだろうと、今は安全なこの場所に籠もることを決めていた。
 ソイルは首に下げている御守りのような鍵を首から外してシャツと共に床へ落とした。捨てきれない気持ちの現れのように、こっそりと持ってきたギロアの部屋の鍵に価値はなくともソイルには大切な物だった。口や態度では未練は無いと示せても、身体の内側の奥底にソイルは綺麗な想いを沈めていた。ソイルに自覚はなかったが、そのギロアへの想いがあるからこそ屋敷に閉じこもりマフィアから逃げ、日々を過ごせていた。支配者の薬から助けられ、自分を認めてくれたギロアからもらった新しい毎日。鎖はまだ引きずっているが、ソイルは確実に自由に近い場所に立っている。もうボスという暴虐な者の命令に従い危ない橋を渡ることも貴重な宝飾品や絵画を盗むこともしなくていい。
 ソイルがクラークのワイシャツを脱がせて背中へ手を滑らせた。クラークは誘われるままソイルの首もとへ唇を寄せて舐めるようにキスをする。互いにズボンと下着を脱ぎ捨て、立ち上がり始めているペニスを擦り合わせるように身体を密着させた。

「すっげ勃ってんじゃん」

 からかうようにソイルが口端を上げるとクラークは微笑み、ソイルもだろ、と囁いた。ソイルは久しぶりの感覚にぞくぞくしたものを感じながらゆっくりと身体の力を抜いた。

「…たまんねぇ」

 欲しいと強請るようにクラークの腰へ脚を回して尻を押し付けるソイルの腰をクラークの冷たい手が這い回った。

「はは、ヤらしいね。ひとりでしてた?」

 アナルへ指を這わせたクラークが肌を啄みながら訊ねた。ソイルは首を横に振りながら腰を揺らめかせてクラークのペニスに自分のそれを擦り付ける。厭らしいソイルの姿にクラークは微かに笑って優しく頬にキスをした。

「そう。それじゃあたっぷり慣らしてあげるよ」

 クラークの甘い言葉にソイルはごくっと喉を鳴らした。
 潤滑剤代わりになるものを探しに立ったクラークの背中を見ながら、ソイルは俯いた。しっかりと興奮し、立ち上がる己のペニスが視界へ入る。クラークの事は好きだが、それはギロアに対する気持ちとはハッキリ違う。こんな風に求められる相手はクラークだけだ。ギロアの前では上手く誘えないどころか、相手の反応ばかりが気になっていた。ギロアの肌を感じたいと強く思っていたが適わずに終わり、 思い出は唇が触れただけの子供のようなキスだけ。彼はどんな風に人を抱くんだろうか。色々と考えながらソイルは萎えてしまった自分自身を鼻で笑った。 

「…だっせえ」

 クラークがローションを手に戻り、ソイルは気を戻すためにクラークをソファへ沈めて彼の下腹部を弄った。硬さを維持するクラークのペニスをゆっくりと頬張り、遠慮も何も無い視線を感じているクラークへ向けた。いつもの笑みの中に少しの快感わ汲み取り、ソイルは夢中でペニスを舐めた。ぢゅぱぢゅぱと敢えて音を立てながら卑猥に唾液を絡めてペニスを吸い、喉奥まで時折咥える。次第にソイルの身体も反応を取り戻し、下腹部の熱さと微かな重みに腰が震えた。

「ふ…あ、すげ、欲しくなってきちゃった…」
「じゃあ、お尻上げてこっちに向けてごらん」

 わざとらしく腰を撫で上げたクラークの手にソイルは 導かれるまま脚を広げて腰を前に折り、ソファに座るクラークへアナルを晒した。 

「ソイル、エロすぎるよ」

 クラークの声が真剣な色を滲ませていることに、ソイルはこっそりと口端を上げた。自分は恥ずかしげもなくこんな事が出来る。それが虚しくもあり、馬鹿になって快楽を求めることが出来る便利な身体だと笑みを向けた。





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