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「遅くなっちゃったな。きっと慶吾がめそめそしてる」
色んな話をしながら家まで歩き、時折パパの事を話すたいちゃんは、どこがいいのか理解できないけどパパのことが大好きだ。
ふたりの間には、あたしには分からない何かが深く繋がっていて、理想の恋愛像としてあたしの目に、脳裏に残る。あたしにもいつか……って。
「ホント、パパってたいちゃん依存だよね」
「慶吾は俺より愛美ちゃんが居なくなったら発狂しちゃうよ。彼氏はまず俺に紹介してね」
「彼氏がなんだって?」
家の前でパパは待っていた。今時そん親いるか!って思う。
「慶吾、ただいま!なんで外にいるの?」
「遅いから……」
「ふふっ、夕飯すぐ作るね」
パパに軽く身体を当てて笑い、軽い足取りで先に家に入ってしまたいちゃんをパパと追う。
パパに促されて中に入ったとき、寂しそうに聞かれる。
「彼氏できたのか?」
「教えない」
たいちゃんっていう恋人がいるらか、年の割にオシャレだし、父親ってものに嫌悪もない。
けど、過保護だし甘やかすし寂しがりだしホント面倒。
「たいちゃん、もらってもいい?」
「だめ」
「即答か!」
「うーん……愛美ならいいか」
「やめてよ、冗談だってば!」
パパに抱きついて後ろのポケットに箱を差し入れた。
今日、たいちゃんに付き合ってもらったのはこのプレゼントのため。
「意地悪ばっかり言ってごめん。パパたちが羨ましくて」
一方的に言ってリビングに入った。
たいちゃんが料理しながら視線で『渡せた?』と聞いてくる。
曖昧に笑って部屋に逃げ込んだ。
「……恥ずかしいっ……」
顔を覆ってパパを思い出す。
あの嬉しそうな顔。
ウザすぎる!
素直になるって難しい。
『ご飯だよー』とたいちゃんの声が聞こえて、気持ちが落ち着かないままリビングに戻る。
気まずいかと思ったら、いつも以上にいつも通り過ぎてプレゼントも『ありがとう』だけ。
大喜びでもなければ、理由も聞かれなくて拍子抜け。
それでも、次の日からパパは頻繁にプレゼントを身につけて、嬉しそうに笑ってくれた。
それだけで、満足できた。
*
「プレゼントのネクタイ、センスいい。にしても、愛美も年頃だね。やたらつっかかってくる」
「可愛すぎる。そのうち相手にされなくなったら悲しい……」
「想像したくないよ。このプレゼント……これって泰助と暮らし始めた記念日ってことでしょ?嬉しいね。俺たちの仲を理解してくれてるってさ。泰助は何もらったの?」
「ふふっ、俺が貰ったもの知りたい?」
ふたりの会話を立ち聞きして、嬉しそうなパパとたいちゃんを盗み見たら、心が温かくなって顔が緩んじゃう。
やっぱり二人の幸せであたしは出来てるんだなって。
反抗期は許してね。 だって、二人のことが大好きだし、あたしは好きな人を苛めたいタイプみたいだから。
ちなみに、たいちゃんにあげたものは『☆たいちゃん☆』って、ビーズで作ったストラップ。
いつもパパのを羨ましそうにいじってるから、欲しいのかと思って。
end.
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