マーリは霧丘の物だ。人間という生き物に冷めていた霧丘は情夫や遊び相手もほどほとんどいない。その中でマーリは『物』だった。取引で大損を出した相手が差し出して来た物が13歳のマーリで、二人は十年近くの付き合いを持つ。今年で23歳になるマーリは幼い頃から美しく、今もそれは変わらない。
 マーリは閉じこめられているこの部屋でそれなりに身体を鍛え、美しい容姿に見合う身体を持っていた。それが霧丘の命令でもあったからだ。まだ幼かったマーリに性的な調教を施し、多くの男を陥れてきた。必ずしも性的な行為を求める客ばかりではない。美しく華奢な男を犯すより、いい男を卑下し見下し痛ぶることは意外とノーマルな男さえハマるものだと、霧丘はマーリに言っていた。マーリも長年の刷り込みにより、精神的にも肉体的にも打たれ強いマゾヒストと成り下がる。
 マーリは霧丘が好きだった。それこそ、ペットと主人、もしくはそれ以下の関係だったがマーリの全てが霧丘だった。一番痛いことも、気持ちいいことも、霧丘がマーリに与えていた。




「霧丘!すごいよ、もうっ…出ちゃう」
「うぐ、あ゙う…!や、めろ!」

 ローションにまみれたアナルへペニスを捩込んだマーリが涎を垂らしながら腰を振る。初めて挿入に使われたペニスへの刺激に、マーリはすぐに果てた。

「なにこれぇ…すごいぃ…」

 締め付ける内壁がピアスを引っ張り、マーリはゾクゾクとした痛みと快楽に浸る。霧丘は不快感や違和感に萎え、苦しそうに喘いだ。

「抜け…マーリ…」
「うん」

 マーリは言われたとおり直ぐにペニスを抜いた。厭らしくローションと精液か糸を引き、ピアスまでもぬらぬらと光った。霧丘が荒い呼吸を繰り返すのを見ながら、マーリは萎えている霧丘が可哀想に思えた。自分はアナルでいけるのに、と。

「霧丘、イイモノあるよ」
「ああ…?もう、やめろ…分かった、まだ飼ってやるからよ」

 霧丘がその場しのぎの言葉を穏やかに吐いたが、マーリは首を振る。マーリはアナルからディルドを抜き、バイブを代わりに埋めた。

「あっ、ひぃいっすご、っこれ好き!ぐいんぐいん、って!」

スイッチを入れ、自身で気持ちよくなりながらマーリは霧丘に笑顔を向ける。勃起しているペニスに、粉をまとわせ始めた。それが何か、霧丘は察して青くなった。

「ふふ、ちょーイけるからね」

マーリは霧丘のアナルを左右の人差し指で広げた。ドロドロとローションと精液が滑るそこに、ペニスをあてがう。

「バカ野郎っ!正気じゃねえ!マーリ、やめっ…ぐぁああっ!やめろ!」
「あぁ゙ーーっ霧丘のお尻の穴、いいよぉ…」

 マーリは腰を回して内壁にピアスを擦り付けた。ごりごりと中を掻き回され、霧丘は目を剥いた。叫んでいるのに声が出詰まる。
 浸透してくる薬物に、次第に二人は意味のない声を漏らしながら腰を揺らしていた。マーリが上体を霧丘に重ねると、拘束されている霧丘は苦しさに呻いた。だが、霧丘の唇をマーリが愛しく、優しく舐め回せば薄い唇が開き、舌を差し出した。お互いの唾液が混ざり合い、口端を伝い落ちる。
 霧丘の手首は鬱血し、背中は擦れて痣になっていた。その痛みを凌駕する何とも言えない悦楽が霧丘の脳を埋めていた。

「きり、おか…好き!…ボク、捨てられたくないんら…」

 マーリは乱れた呂律にくすくす笑いながら己の首に嵌められている黒い首輪に手をかけた。霧丘はぼやける視界でそれを見る。全てがスローモーションのように見え、霧丘は意味もなく口端をあげた。

「…きりおか…ボクの首輪、あげる」

 マーリはベルトタイプの首輪を外し、霧丘の首へ巻き付けた。少し緩く、首輪を嵌めるマーリの指先がカタカタと震える。ラリっているから視界がぶれているのかと、霧丘は思っていたがマーリから薄笑いが消えていることに曇っていた意識が瞬間的に冴えた。

「…好き好き、うるせえ…」

 絞め殺される。霧丘は覚悟して、最後に吐き捨てるようにマーリへ言った。優しい言葉より、マーリが悦ぶと知っているからだった。

「…マーリ?」

 首輪に手をかけたまま、無表情に霧丘見下ろしていたマーリは突然ペニスを引き抜き、立ち上がる。霧丘は疲れきって、静かに目を閉じた。己の醜態に自嘲する。飼い犬に噛まれるなんて笑い話にもならないと、口端をあげた。
 気配もなく霧丘の傍らにやってきたマーリは新品の注射器を霧丘の二の腕に突き刺した。霧丘はマーリの見たこともない表情を一瞬見て、諦めたように目を閉じたまま、それを受け入れた。







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