霧丘は酷い頭痛と眩暈と吐き気の中、じわじわと意識を取り戻していた。痛む頭に手を当てようと動くが、それは叶わず霧丘は首を傾げた。

「ぐ、う…ってぇな…」

 手首はコードで拘束されており、ひっくりかえされたリビングのテーブルの足へ右、左とそれぞれが違うコードで縛り付けられている。固いテーブルの裏に背を着け、張り付けられている状況に霧丘は頭痛と戦いながら目を開けた。腹の上に感じる重みと温かさにぼやける視線を向ける。

「…マー…リ…?」
「おはよう、霧丘」

 マーリと呼ばれた若い青年が霧丘を見下ろして綺麗な笑顔を向けた。青い瞳が細まり、長い指が霧丘の頬を撫でる。美しいブロンドの青年は首に黒い首輪をつけられ、身体にはワイシャツ一枚、手には卑猥な男根を模したディルドが握られていた。少し大きいそのディルドはマーリのお気に入りで、慣れた様子で舌を這わせながらマーリは自身のペニスをゆっくりと上下に擦る。シャツから覗く均整のとれた身体が、色気を滲ませていた。

「あはぁ、霧丘…」
「何やってる変態」
「…霧丘が意地悪するから…」

 マーリはいじけたように言いながらも、薄笑いを浮かべたまま唾液にまみれたディルドを霧丘の口へ押し付ける。霧丘は口を開かず、鋭い眼差しで睨み付けた。
 霧丘は30を過ぎたばかりの若さだが、名の知れた大きな広域指定暴力団の中に 入る組の舎弟だった。跡目争いに名が上がる上司のために海外資金を作ることを任され、来週にでも日本を発つ。数多くの修羅場を踏み、狂気を纏う、そんな霧丘に睨まれ、震え上がらない人間などいない。しかし、マーリはゾクゾクとした愉悦に、ペニスを震わせた。

「見て。霧丘が睨むからボクのココすごくなってる」

 ペロリと唇を舐め、マーリは勃起したペニスを霧丘のズボンへ擦り付ける。ペニスには裏筋に沿うように幾つものピアスが皮膚を貫通していた。ひときわ目を引くダイアの嵌まる金のピアスが鈴口に存在している。

「霧丘…ボク考えたんだ。霧丘が着けてくれたピアスは飾り物じゃないってこと」
「ああ?んなこたいいから、さっさとほどけよ。悪ふざけも大概にしろや。金は置いてあったろ。早く出ていけよ。俺はそう命令したぞ」
「…フライパンで殴ったこと怒ってるの?」

 マーリの声に霧丘は頭痛の原因を察して盛大に溜め息を零した。フライパンか、と呆れる。

「だって、霧丘には力で適うか分からないから…」

 マーリが真剣な声で言いながら霧丘のベルトをはずし始める。

「いきなり…ペットを捨てるなんて飼い主として最低だよ。ペットはね…ご主人様が居ないと、存在する意味も分からない」
「は、犬猫だって飼い主を失っても生きていけるわ」
「…ボクは無理だよ。犬猫以下だ」

 マーリは蔑まれ、見下されることに慣れており、擦り込まれた本性は自分自身を卑下することさえも誇らしげで、胸に手を当て目を瞑る。

「どんなにイイ子にしてても、捨てるなら…ボクも手段は選ばない」

 にっこりと笑い、霧丘のズボンと下着を取り払う。霧丘は腰を捻り、足で暴れたがマーリも成人男子。加えて両手の拘束されている霧岡が不利だ。何より、マーリは自身が思うほど弱くはない。霧丘の命令で毎日軽い筋力トレーニングや運動をし、霧丘の部下が持ってくるバランスの取れた食事をしていた。それは、マーリが相手をする客の要望のためだったが、マーリは霧丘の思いやりだと信じていた。
 マーリは片足だけ霧丘自身のベルトでテーブルの脚のひとつへがんじ絡めに縛り付けた。萎えているペニスへ頬を寄せ、マーリの行動を睨みつけていた霧丘に見せつけるように、厭らしく口へ含んだ。はむはむ、と息も荒くしゃぶりつけば、次第に勃起し始める。霧丘のいきり立つペニスをマーリは爪先で根元から先端までなぞった。ひくっと震えるペニスに、マーリが笑う。

「あはは!何百人もチンコ見てきたけど、やっぱり霧丘のが一番好きだな」

 口には含まず、焦らすように裏筋や袋を舐め、唾液まみれにしていく。マーリが霧丘のアナルへ舌を当てると、鍛えられた霧丘の身体がびくっと反応を示した。マーリはれろれろと固く閉じているその入り口をしつこく舐めまわし、舌をねじ込んだ。

「ぐぁ、あほんだら!やめ、っ!」
「あーらお。ん、んっ」

 楽しそうに舌を動かすマーリとは逆に、霧丘は青くなって拳を握り締めていた。脚にも力が入っており、アナルも比例してキツく抵抗を示す。

「力抜いてよ。ちゃんと慣らすよ?大好きな霧丘が気持ち良くなるように頑張る。ボクのピアス付きでいっぱいグチャグチャしてあげるから、ね」

 暴れる霧丘の足を押さえつけ、マーリはローションの口を霧丘のアナルへ押し付けた。先端がつぷ、と侵入するとボトルのボディを握り潰した。ヂューっと粘着質な液体が勢い良く注がれ、霧丘は呻いた。

「ひ…く、くそっ!冷てぇよバカ野郎!」
「大丈夫だよ」

 なにがだ?!と霧丘は反射的にツッコんだが、マーリが手にする大きなディルドを視界に捉え、押し黙る。コードが食い込むことも気にせず、逃れようと暴れた。マーリはそんな様子にくすくすと笑ってディルドをゆらゆらと揺らして見せた。

「これ、おっきくて最高だよ。抜けた瞬間、腰が砕けちゃうから」

 マーリは霧丘の顔の上で見せつけるように己の足を開き、卑猥なアナルを指で広げて見せた。すでにローションで滑り、糸を引いて収縮をくり返す様は誘っているようだった。

「これ、いつも霧丘のチンコだと思ってオナニーしてるの」

 太いディルドがゆっくりとマーリのアナルへ入っていく。

「んあっ!あーーっあ、あっひぃ!入るっ」

 腰を揺らしながらマーリは恍惚の表情で喘いだ。

「はう、あっ!お、おっき…!」

 これでもかと言うほど深くまで押し込み、ぐっぽりと咥えているアナルを霧丘に見せつける。鈴口にわざとピアスの丸い飾りを押し入れているマーリのペニスから精液が静かに溢れた。マーリはハァー、ハァー、と深く呼吸しながら滴る精液を手のひらに絡め、霧丘の顔に塗り付けた。

「ボクのチンコ、挿れてあげる」

 マーリは至極美しく微笑み、ピアスが無数に光るグロテスクなペニスを霧丘の鼻先へ擦り付けた。





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