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「んう、ぁ……っあ゙」

 圧迫感と違和感に想は目をきつく閉じる。
 それでも内側に感じる熱を思い、想は力を抜くように努めた。
 速まる呼吸を落ち着けて、弱くだがゆっくりと息を吐く。

「狭いな……もう少し慣らすか」

 みっちりと新堂のペニスを咥えてひくひくと蠢くアナルの縁を、新堂の指先が撫でる。
 その指にさえ感じて、想は息を詰めた。

「へ、いき……っ」
「でも」

 焦らすように、ゆっくりと腰が離れ、抜け出ていく感覚に想はゾクゾクとした快感を感じてペニスから先走りを溢れさせた。
 そのまま、再び深くまで抉って欲しいと、視線を向けるが新堂は微かに口端を上げて額を合わせた。
 鼻先が触れるほどの近さで新堂が目を伏せた。
 密かに一人微笑むような仕草に、想は無意識に新堂の髪に指を絡めた。

「その顔、なに……」
「え?」
「……なんか笑ってた」

 幸せそう……と思ったのは自惚れも甚だしく、恥ずかしさもあって想は言葉にはしなかった。
 新堂は言われて微かに笑い、想の震える唇を舐めた。

「帰ってきたなって、実感して。幸せだ」

 ポツリと想の目から涙が溢れた。

「……れん、好き」

 瞼を閉じ、想は微笑んだ。
 『俺もだよ』と囁き、想の胸から腹を撫で、肌に触れながらベッドサイドの薬箱から潤滑剤の代わりになりそうなものを探す。取り出したワセリンを指に絡めるのを見て想は恥ずかしさに小さく溜め息を漏らした。

「そんなのない方がいい……」
「気持ち良くなりすぎるもんな」

 耳元に囁くように残された言葉に想はゾクッとして腰を引いた。
 新堂は想の足元に移動し、立ち上がりトロトロに濡れるペニスを口に含んだ。
 想は息を詰め、甘い快感に眉を寄せた。

「厭らしい目で見るなよ」

 ちゅぽ、と音を立てて唇を離し、舌で裏筋を舐め上げた新堂が笑う。想は新堂が自身のペニスに舌を這わす様から目が逸らせない。
 内股を震わせて、ぎゅっと目をつむる。
 先端を舐め回していた舌はゆっくりと下り、つつ……とアナルまで降りた。
 想はビクッと身体を揺らしたが、新堂が舐めたと同時ほどにワセリンの滑りを帯びた中指と薬指がぬち、と音を立てて入った。指は簡単に奥まで入り、想は腰を揺する。

「ひ、あぁっ……う、いやだ」
「嘘だな」
「ンッ……!」

 咎められた想が鼻に抜ける様な声で鳴く。人差し指が増え、中をかき混ぜるように動かす行為に、想の腰が時折微かに跳ねる。
 荒い呼吸を落ち着けようとする様子が新堂の欲望に油を注いだ。

「想は変わってないな」

 前立腺を押しながら中を広げるように指で内壁を擦ると、想は声を上げて逃げようと腰を捩った。
 内部は広がる度に厭らしい音が漏れ、想はシーツを握りす締めて羞恥に耐える。

「指っ、もういい……からぁ!」

 みっともなく、甘く鳴いてしまいそうな想は怒ったように短く言い、ぎゅっとアナルを締めた。
 新堂の指を締め付けシーツを握る指に力を込める。アナルだけではなくペニスも物欲しそうにひくひくと震え、想は頭の中がどうにかなりそうで唇を噛んだ。

「入れたのにっ……また、指にするなんてヒドい……っ」

 言葉とは裏腹に想のアナルは新堂の指をもっともっとと締め付け、離すまいとして奥へ誘う。
 新堂が中で指を広げると、中が反発するように収縮する。こそを狙ったように新堂は指を引き抜き、滾る熱をあてがい入り口を擦る。
 お互いの求めるような視線に二人の鼓動が一際大きく鳴った。名前を呼び、新堂が想を貫く。

「っあぁ……!イく、……んんッ」

 想はガクッと腰を跳ねさせ、白濁を己の腹へ吐き出した。
 はぁ、はぁ……と呼吸を繰り返す合間に新堂の名前を呼び、身体からゆっくりと力が抜けていく。
 想は涙が滲む目元を手の甲で擦り、とろけた顔で甘く小さな息を吐いた。
 腹へ新堂が想の精液を塗り広げながら身体を寄せ、新堂は想の耳を甘く噛んだ。想は身をすくめる。

「熱いな……」

 新堂の声音が色気を帯び、その声と共に耳を舐められ、想は呼吸を乱す。
 無防備な耳を厭らしく舐められ身体が震えた。
 イったばかりの身体に熱が再び灯った。

「あ、あ、耳っや……め、やだ!れんっ!」

 滑りを帯びた新堂のペニスが突き入れながら、しつこく耳を舐められ、背筋を這い上がる快感に耐えきれず想は新堂の身体を押し返す。

「やめる?」

 ずるる、と抜けそうな際まで引き抜かれる。想は声を耐え、慌てて脚を新堂の腰へ絡めた。

「やめない?」

 新堂の意地悪い問い掛けに想は何度も頷く。やめないで、と反抗していた腕を背中へ回した。
 耳への悪戯を止めた新堂は首筋へ唇を滑らせた。鎖骨の上辺りに赤い小さな跡をつける。肌をキツく吸われる感覚に想はもっとと強請った。

「ん、ん、んン……っキス……して」

 促されるまま、新堂は想が求めるようにキスに答えながら熱くキツい締め付けに腰を打つ。想の脚を肩に担ぎ、深くへ打ち込むと、キスの合間に漏れる息遣いが乱れ、比例するように内壁が蠢いた。

「っ、想……!」

 パン、パン、と肌を打つ音が激しくなり、想は衝撃に耐えるために新堂の身体に手を伸ばした。
 その手はしっかりと彼を離さない。
 『出すぞ』と新堂から告げられ、想の背筋を一気に熱が走り抜けた。
 まるで身体が欲しがるように熱くなり、アナルは激しく収縮する。
 締まる内部を強引に押し広げて支配するような新堂のペニスが、一際奥に突き入れられ、熱を放った。
 何度か達していた想も、ペニスを震わせて絶頂に似た高揚感を深く得る。

「ん、ぁアッ!!……は、ぅ……なか……あったかい……」

 想は快感に震える睫毛を伏せ、新堂の背中を覆う仏神に爪を食い込ませる。
 新堂は何度も『漣』と名前を呼ばれ、自分の身体を強く抱く腕が愛してやまない男だと実感する。叫びたいほどの衝動と、溢れる思いを閉じ込めるように瞼を閉じて、微かに涙を滲ませた。









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