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 想は熱に浮かされながら手を伸ばして水を含んで湿っている新堂の髪を掴んだ。そのまま引き寄せると、自然と唇が重なる。

「んん゙……っ、ふぅッ、ン、れん……!」

 噛み付くようなキスの間も、呼応するように想のアナルは新堂を締め付けた。
 夕食を終えて帰宅した二人は、シャワーを適当に済ませ、濡れたままベッドへ。
 押し倒された想は、泣きながらねだるまでしつこくローションと愛撫で慣らされ、身も心も頭もトロトロにされた。すでに何度か達し、今もスムーズに新堂のペニスを飲み込み、具合良く締まった。

「うあ゙ぁ……っん!!」

 深く侵入していたペニスがズルッと引き抜かれ、想は喉を反らせた。 
 握っている新堂の右手を更にキツく握る。
 荒い息を繰り返しながら、熱を失ったアナルは疼いて収縮を繰り返す。その感覚に想は頭を振った。

「ぬ、抜かないで……やだよ……!」

 髪を掴んでいた左手を新堂の背中に滑らせ、無意識に爪を食い込ませるほど力を込めた。背中の仏神に爪痕が赤く滲む。
 新堂は想の首筋を甘噛みし、舌をはわせて耳元で名前を呼んだ。
 甘い吐息とは逆に、ぎゅ、と想が目を閉じると、猛るペニスが奥まで捩込まれる。

「アァっ!っすごい、気持ち、いぃ……もっと、奥……して、ゆさゆさって……漣の、奥にッ……して」
「あぁ、分かってるよ想」

 想は何度も頷き、広げられていた足を新堂の腰に絡めた。自然に腰が浮き、挿入が深くなる。
 はぁ……はぁ……と酸素を求める想の唇が塞がれ、舌が咥内を蠢く。応えるように舌を差し出す想の声がキスで鼻から抜けた。
 ぬちぬちと絡み合う結合部の厭らしい音と、打ち付ける度にぶつかる肌の音が閉められた寝室に消える。処理しきれない唾液が口端から伝った。キスの合間に想は何度も新堂を呼ぶ。

「あぁっれ、んッ……も、イきそ……!」
「まだ待て」

 優しい声音とは逆に『ダメだ』と言われても、想は頷いてキツく目を瞑り、息を止め、腹に力を込めて耐えた。
 余計にアナルが締まり、新堂が息を詰める。
 身体中に力を込めて耐える想の目元に新堂はキスをした。
 うっすらと想が目を開く。

「あぁ……ホント、可愛いな。お前が離れていっても絶対に捕まえるから」

 後悔するなよ……と強く言い、鋭い眼差しが想を釘付けにする。
 想は一層鼓動が早まり、胸が潰れそうな痛みに涙が滲む。身体も心も喜んでそれを受け入れたがっていた。

「っ、漣の、方こそ……っ俺、離れない……からッ」

 想はきっと眉を寄せてキツく睨み付けた。
 新堂は愛しさが抑えきれず、噛み付くように口付けた。想の呼吸も奪いそうなほどのキスで口を塞いだまま腰を掴み、強く何度も突き上げた。ガクガクと揺さぶられながら、想は酸欠にくらくらしながら、全力で新堂の背中にしがみついて持っていかれそうになる意識を繋いだ。

「っく、想っ……!」
「ん、んっ………!ぷ、はぁッ……!あ゙ぁっ!」

 唇がふっ、と離れ、酸素を取り込む想の耳元で新堂が名前を呼んだ。
 びくっと大きく身体が跳ね、想は中に出された感覚に身体を震わせた。上がった息を上手く整えられず、新堂の背中から想の手が滑り、ベッドに落ちた。
 うっすらと開いた想の目を新堂が覗く。
 想は微かに笑ってのろのろと腕を伸ばして新堂の首に回した。繋がったまま新堂が想を抱き寄せ、向かい合って座る。
 未だ萎えない新堂のペニスに敏感になっている内部を抉られ、想は戦慄いた。ゾクゾクとしたものが腰辺りから背筋を、脳を支配する。

「すごいな。いつまでも中がうねって放さない」

 気持ちよさそうに言う新堂に、想は答えたかったが声が出せないほどくたくたになっていた。新堂の肩に頭を乗せ、殆ど寄りかかる形でいる想のペニスを熱い手が刺激する。想はびくびくと震え、締まるアナルは新堂の熱の存在を主張する。

「あ、あっ……も、むり……」
「もう一回だけ。想、愛してるよ」

 想は無理だと言ったが、甘えるように唇を舐められてゆっくりと舌を差し出す。

「れん……おれも……」

 想は目を閉じて新堂を感じた。









 うとうととした感覚と、現実に想が目を擦る。身体が重く、怠いが嫌な感じてはない。
 想はリビングのソファに横になっていた。
 新堂の姿は無いが微かに聞こえるシャワーの音にホッと息を吐く。
 身体は綺麗に拭かれていて新しいシャツになっていた。想が起きれずに眠い視線だけを巡らせると、寝室のベッドが綺麗にされている。昨晩の時間が甦り、微かに頬が熱くなった。
 ふと近くを見るとすぐ側にもち太が伏せていて、腕を伸ばして頭を撫でると、一瞬耳を動かしたが、心地よさそうに目を瞑った。

「……血の、匂い……」

 もち太を撫でる指先を見つめて寝ぼけていた想は急に頭が冴えた。
 血の匂いがする。焦げたような匂いも。
 想はソファから降りたが、ズキ、と鈍い腰の重みによろける。ふらふらとキッチンに行くと、シンクには所々血が飛んでいた。フライパンと注射器とナイフも。

「漣……?!」

 壁伝いにバスルームへ行くと、シャワーの音は止まり、丁度新堂が出てきた。
 すぐそこまで来ていた想を見て少し驚く。

「想……起きてたのか」
「漣……」

 想が水を滴らせている新堂の上から下まで視線を巡らせ、左手に止まった。

「指……っ!!」

 想が動揺を隠せず大きな声で言うと、新堂は微かに笑って平気だと言った。
 タオルで体を拭きながら近付き、立ち尽くしている想の頭を撫で、新堂はシャツと下着を身に着けた。
 あれ?一本ない?などではない。薬指も無く、ビニールテープで巻かれていた。

「無理させて悪かった。ほら、ベッドまで運んでやる」

 想は固まったように動けず、新堂に抱えられて初めて我に帰り、腕を首に回した。

「そ……そんなに優先させる仕事ってなに……」
「言いたくない」

 想の問に、新堂はいつものように迷い無くハッキリと答えた。曖昧な答えではないが、想は胸の奥が少し痛んだ。
 拒絶を感じる。

「今日は……俺が夕食作るから」
「……」

 答えず、頷いただけの新堂に想は抱き着いた。

「早めに、帰って下さい」
「帰りたいと思ってるよ。想のところに」

 ソファに下されたが、想は新堂を放さずに腕に力を込めた。

「……離れたくない」
「俺もだよ」

 新堂は薄々気付いている様子の想に複雑な気持ちを抱いた。
 ギロアとの取り引きの為にそばを離れなくてはならない。詳しく伝える事も出来るが、想がじっとしていられるとは思わない。伝えた内容から自分を追って来たり、危険な状況に巻き込まれるのだけは避けたかった。
 三咲に信頼され店を託され、島津や蔵元と社会で働く。普通に生活出来る想の姿が新堂にとって理想だった。
 新堂は想が悲しむと分かっていても、話さないと決めていた。こんな風にお互いに執着し、何よりも大切だと思う存在になってしまった事が誤算だった。
 金と力で狡く生きてきて、これからもそうだと思っていたのに。
 新堂は自分を抱き締める想を、同じようにきつく抱いた。







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