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「…好きです」
服を脱がされた智也は理玖に乳首を舐められて身体を震わせた。敏感に反応する身体に呼応するように理玖の言葉に何度も頷く。
「…れ…も、好き…」
「マジで嬉しい」
真剣な理玖の声音にズクンと腰が疼く。
心も身体も苦しいくらいに理玖を求めていた。
乳首から、腹やへそにキスをしながら下腹部へ降りた理玖が智也の下着を取り払う。内股キスして、反応を示すペニスを口へ含んだ。
「りく、…りくっ」
「ここにいます」
穏やかな言い方に智也は理玖の髪に指を絡めた。理玖はベッドの傍に置いてある薬箱からローションを取り、手に垂らし、アナルへ塗り込む様に指をゆっくり挿入する。
それこそ焦れったいくらい丁寧に慣らすのか理玖だった。ゆっくりゆっくり慣らす。
頭の中が真っ白になって身体中が敏感になるまでトロけさせる。
智也は早く欲しいのに、この甘くしつこい愛撫が堪らなく好きだった。
こんな事、内田センパイはしなかったな、と頭によぎった事実に智也は振り払うようにキツく目を瞑る。
こんな時にまで内田の事が頭にあるなんて信じられないと智也は唇を噛んだ。
理玖の指が前立腺を掠めながら内側を押し広げる感覚に身体が戦慄いて声が漏れた。
「は、はぁ…りく…」
内股を吸われ足を閉じそうになるが、理玖が押さえているため叶わない。智也の良いところを悪戯に外したりせず、容赦なく快感を引き出す指を身体は勝手に締め付けている。
「バカっ…もー…いいからっ」
ダメだと言われると分かっていて智也は理玖の肩へ足を絡めた。予想に反して内側を確認するように擦りながら抜かれる理玖の指。智也の片足を担いだまま、理玖が身体を上げる。
熱を帯びた視線が智也を捕らえ、智也は理玖の頭を引き寄せた。理玖はきつかったズボンを適当に寛げ熱く滾る熱を求めるようにひくつく智也のアナルヘ押し付けた。
いつもと違う、性急な理玖の行動に戸惑いながら智也は髪に絡めたままの指を解き、優しく撫でた。
「り、理玖…?」
「俺、智也先輩しかいらないから」
智也の腰を掴み、熱いペニスを奥までねじ込む。ローションで慣らしたアナルは狭くてもお互い痛みは無く、肌が触れるほど深くまで貫いた。
「ひ、ぁ…あッ!」
はぁ、はぁ、と小さく呼吸を繰り返す智也はイった。アナルはきゅっと締まり、理玖が快感に目を閉じた。少し眉を寄せ、感じている表情を見て智也は頬が赤くなる。
「先輩もそうでしょ?」
切なげに聞かれた智也が何度も頷いた。
「俺、も…理玖だけ…バカっ理玖の所為だ…!」
溢れそうになる涙がみっともないと、ごしごし目元を擦る智也に理玖が腰を打ち付ける。
駆け上がる快感に涙どころではなくなり理玖にしがみついた。揺さぶられ、激しい動きに智也は息をするのが精一杯になる。
智也は絶頂を迎え深く酸素を求めたが、ぐい、と足を掴まれたかと思うと唇を塞がれ、角度を変えて理玖の舌が智也を翻弄した。
智也は上も下も分からなくなるほど求めてくる理玖にされるがまま、必死に応えようとするが上手く出来ているのかいないのかも分からなかった。
「先輩、好き」
智也は理玖のその言葉だけが残り、それを最後に意識も飛んだ。
「あはは、先輩の黒髪、なんか幼いですね」
「ぶっ飛ばすぞバカ!あーこんなのイヤぁー…」
智也の愚痴がドライヤーの音に揉み消される。コンビニで買った髪色戻しで黒く染め、シャワーを浴びて着替えた頃には外は明るくなり始めていた。ドライヤーで指に絡まるピンパーマを優しく乾かしながら理玖は小さな溜め息を零す。それはドライヤーにかき消されたが、理玖は冷えた目で智也の髪を乾かす自身の指先を見つめていた。
優しくしたかったはずなのに、と目を伏せる。
智也はそんなこと気にしていない様子どころか、理玖の肉食面に驚きながらも、いつもより燃えた!と言った。
一方で理玖は酷くしてしまったのではないかとかなり気にしていたのだが、相手の智也は何もなかったかの様。戸惑ってしまう。
理玖がいきなり帰ってきことにも理由があり、智也の普段では絶対に有り得ない恋人に甘えるようなメールに勘が働いた。それが良い勘なのか悪い予感なのかまでは分からなかった。とにかく身体が動いてしまったのだ。
理玖にとって今回の試験は大人たちの為に一応受けたようなものだった。それをほっぽりだして帰ってきてみれば、自分のベッドで涙しながら『センパイ』の名前を呼んでいるではないか。
智也は眠っていたため、寝言であるし、どうすることも出来ない。理玖は悔しさからコートも脱がずにその背中を抱き締めて、めそめそと泣くしか出来ずにいた。
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