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「そんなに焦ってどうする」
少し驚いたような、呆れたような呟きも想は無視してペニスから口を離すと新堂を座らせ、上に跨がる。対面座位の形でアナルヘペニスを宛てがう。
「待て」
『やだ』
少し強く言った新堂に噛みつくようにキスをして、そのまま勢いに任せて腰を下ろす。息が止まる感覚に、慌てて力を抜こうとするが上手くいかない。
「っ……、」
「想」
腰が引けそうになっている想の背中を新堂が撫でた。お互いキツい。想は呼吸を落ち着かせるように必死で息をする。いつもならもっと上手く行くのに、と戸惑っていた。眉を寄せて微かに動く想の唇を新堂は舐めた。
「謝るな」
様子が違うことはすぐに分かっていた新堂だったが、想の行動にはいまいち分かりかねていた。
「ん?」
抱き寄せ、ゆっくりと想のペニスを擦るように新堂の手が触れた。想の呼吸に合わせてペニスを刺激すると、いつものように上手く身体から妙な力が抜け、合ってくる。
「ほら、いつもの想はこうだ」
どうして欲しい?と耳元に囁かれた想が首に抱きついて腰を揺する。
『ほしい ごめん』
想の唇は何かをずっと言っているが、新堂が読み取れたのは二言だった。伝えようとしている様子はない。ただ声にならない言葉を放っている。瞑った目元に浮かぶ涙を舐めて、新堂が想の腰を掴んだ。
「全部聞くからゆっくり話せよ」
下からグッと突き上げれば、想の身体が跳ねる。想のペニスからじわりと先走りが溢れた。想が首を横に振るのを見て新堂が繋がったまま身体を押し倒した。
フローリングは冷たく、固い。ここでしたら新堂の膝が痛むと、想が己の上にのし掛かる彼の肩を優しく押し返した。
「悪い子だな。隠し事」
どこか楽しそうに言う新堂を想は睨んだ。どっちが!!という気持ちを押し留め僅かな抵抗と言わんばかりにそっぽを向いた。
「……煽ってるのか」
がぶ、と首に噛みつかれて想は痛みに身体を固くしたが、噛まれた場所は既に新堂か優しく舐めている。
「素直じゃない想もいいな。……わざと?」
そんな器用で駆け引きじみたことが想に出来るはずはないとわかっていて言った。
言われた想自身、よく分からないと言う表情だ。突然置いて行ったことを怒っているのかと思ったが、どうやら違う。
新堂は鎖骨をゆっくり舐めながら更に奥へと侵入する。内部は求めるように慣れた熱を受け入れていく。
想の身体は次第に甘い快感を拾い集めた。
細く半端な長さの呼吸を繰り返しながら新堂のワイシャツをキツく握る手を愛しく感じて、重ねた。
「……大丈夫」
明確に何が大丈夫なのかは言われていないが、想はその一言に心の波が凪いでいくのを感じる。
吐き出せない疑問や不安が溜まって、声にも出来ない。
それでも目の前、触れている相手の一言で楽になれる。想の奥深くに滲み出る黒い感情が大きくなり始める。誰にも渡したくない、と。
ただ、純粋に好きだと思うだけでは足りない。新堂のシャツを握っていた手を後頭部へ伸ばして自身へ引き寄せた。
想が舌を覗かせ、唇を奪う。同時に腰を使い始めた新堂に、翻弄されないように想は必死でキスを続ける。
荒い息と、肌のぶつかる音が部屋に存在を主張した。ズボンが絡まったままの足を更に開かされても想は自分から積極的にそうした。膝裏を押さえられ、結合部が上がる。深い挿入に性感帯を抉られ、想は息を詰めて達した。腰がビクビクと揺れ、アナルはぎゅっと新堂のペニスを締め付ける。新堂も耐えるように息を殺し、口端を上げた。
「想」
耳元で呼ばれる名前も、囁かれる言葉も想の熱を上げる。
達したばかりで甘い疼きを通り越し、強い快感で身体が震えたが、想は腰を押し付け『もっと』と強請る。動く度に床にぶつかるように擦れる背中が痛いだろうと、新堂は想を起こした。甘えると言うよりは、放すまいと抱きしめる想の様子に新堂が小さく笑う。新堂は手を身体の間に滑り込ませ、小さな乳首を指先で潰した。途端にきゅっと絞まるアナルと小さく反応を示すペニス。
想の頬が更に赤みを増した。
「ほら、腰動かせ」
言われた想は躊躇なく腰を揺らす。粘膜ががぬちぬちと音を立てた。
薄く開いた唇から漏れるのは甘い吐息だけ。
新堂が乳首をキツく摘むと、想の身体が跳ねた。引けそうになる腰を片手で引き寄せ、動くように促す。悩ましげに寄せられた眉にキスして耳朶を甘噛みする。
「想、すごくイイ」
こくこくと何度も頷き想は快感を追うように腰を揺する。キツく閉じられた瞼が、不自然な呼吸が、達するのを耐えている様に思わせた。新堂が乳首を弄っていた手を想のペニスへ移し、根元を強く擦った。ビクビクと反応し、先走りが溢れて精子を飛ばした。
想は嫌だと首を横に振ったが、腰は止まらない。がくっと大きく跳ねた後、ビクビクっと身体を震わせ、腸壁が痙攣しながら新堂のペニスをこれでもかと食んだ。
『れん』
大きく呼吸を乱し、想が達するとほぼ同時に新堂も中に熱を放った。想はとろけた顔を伏せ、掠れたような息を小刻みに繰り返し、長い余韻に薄く目を開いた。
『れん』
熱の籠もる鋭い眼差しで想を見つめる新堂に、想はしつこいくらいキスを求めて目を瞑る。
聞こえる新堂の短く小さな笑い声に想も目を閉じたまま口端を上げた。
求めた口付けが啄むようなものになり、じゃれるようにキスをされた想は声が聞こえてきそうな笑顔で笑った。
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