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 次の日、智也はバイトを休んだ。
 一日中ベッドに転がり、胸の痛みに顔をしかめていた。
 理玖が帰って間もなく、内田からメールが届いていた。文面には勿論別れが綴られていて、分かっていたのに智也は涙が溢れた。
 内田との別れも虚しいものを感じたが、理玖の好意を汚したことに涙が溢れる。
 内田の浮気をずっと悩んでいた智也は、浮気なんてクソだ、最低だと思っていたのに、智也が理玖にしたのはそれより最低だと思った。寂しさを紛らわせようと、相手の好意を利用したような気がする。
 理玖が自分に寄せていた好意は、智也にとって居心地がよくて、甘えてしまった。
 けれど、キスされて思い出した。彼は友達と思っていないこと。
 内田が智也と別れてから他の恋人を作っていれば、智也は悩まなかった。浮気ではないから。
 智也が内田と早く別れて、それから理玖と仲良くなれば、こんな葛藤はなかった。

「まじで頭爆発する…もうやだ…」

 智也は一人呟いて目を閉じる。

「江崎…」

 彼は優しいから、別れたから付き合おうと言えば受け入れてくれるかもしれないと思う。反面、そんな都合のいいように扱われたら嫌がるかもしれないとも思う。
 今までのように友達でいたいと言うのは、キスした後では不自然な気がした。
 智也は見つめていた携帯電話で理玖を呼び出す。相手はすぐに電話に出た。

「江崎、もう連絡しないで…バイトも辞める。家にも来んな」

 言いたいことだけつげ、通話を終わらせて智也は目を閉じる。
 早く夏休みが終わって学校が始まればいい。
 何も考えなくても受験が迫れば毎日追われて過ぎていく。早くこんなぐるぐるの思考が消えてくれればそれでいい、と智也は半端な気持ちを無理やり終わらせて胸を押さえた。



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