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心臓の音が聞こえる、達志はぐっと拳を握った。
「なんでそんな事聞く?」
「好きだから。」
答えてしまってはっと顔を上げた。
ああ、これで友達も片思いも終わりだ。
優生は達志の顔を無表情で見ていた。
「ゆっ」
優生の名前を呼ぼうとして止めた。
何を言うんだ?
「…ごめん」
好きになって、ごめん。
達志はそう言うと食堂を出た。
食堂にあまり人がいなくて良かった。
食堂を出た途端、涙が出て来た。
「…っ」
ひとつ。またひとつ。
止まらない。
涙を誰にも見られたくなくて走った。
誰もいない所でようやく落ち着く。
「ふっ…」
わかってた事じゃん。
自分に言い聞かせる。
「っつ…」
あいつは女が好きで。
「ゆっ、せい…」
好き。好き。好き。好き。好き。
好きなんだ。
大好きなんだ。
でも、優生からしたら気持ち悪いだけ。
空を見上げればアオイソラ。
それがなんだか憎らしい。
「くそっ」
止まらない涙。男も泣けるんだな。
誰かの足音に顔を上げる。優生が追って来たのかと思った。そんなはずないのに。
立っていたのはミクだった。
「一緒に泣こ?」
なんでミクがいる?
なんでミクが泣く必要がある?
「ミク」
「聞いた、よね?」
止まらない涙をミクがハンカチでぬぐってくれる。
「ミクはミクモっていうんだ。ホントは。
ずっとずっと女になりたくてね」
頷く。ミクはニコリと笑う。
「高校の時、すごくバイトして。女になる手術、早くしたくて…あとちょっとなの」
「うん」
「せめて女になってからバレたかった!でも、これで良かった気もする」
「うん、」
「振られちゃった……ね」
ぽろっとミクモの目から一粒の涙。
綺麗だと思った。
「たっちゃん、バレちゃったんでしょ?優生に。たっちゃんの気持ち」
「うん。なんでミクは俺の気持ち知ってたの?」
「優生を好きだから、かな。自分と同じ瞳を優生に向けていたから」
「そっか…」
その後、気が済むまで二人で泣いて。
ミクに聞いた。
女になったら付き合うのに?
ミクは、バカねと達志の額をこずく。
自分の隣にかわいい顔が欲しいだけ。
それを聞いて気付いた。優生の周りにいる女友達、みんなかわいい。
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