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▼ 8

「おぅ」
幸い、イケガミはオレに気付かなかった。
電話はすぐ切れ、窓際に戻って行った。
携帯はイケガミの手の中。
打っていたメールの内容は判らずじまい。


「いた」
窓の外に髪を茶色に染め、耳にはピアスをした男が顔を覗かせた。
その顔に見覚えがあった。
レンジだ。
タキガワレンジ。
中学の時、教師が手を焼いていた生徒。
よく生徒会室にも来た。

「サボリか?」
「見りゃわかんだろ」
タキガワは窓を乗り越え部室に入る。
「お前、まだ持ってたのか」
窓の桟に置かれたジッポを見てレンジが手を伸ばした。
「触るな」
「はいはい」
レンジはイケガミの手の中にジッポを落とした。
「なぁ、レンジ」
「あん?」
「たぶん来月、名字が和月<ワノツキ>になるから」
「え! 何、さえちゃん再婚するの!」
「そー」
「そうか。お祝い持ってかないとな。でもよくヒナタが再婚にオッケーしたな」
「ワノツキダイチ。ダイチさんが再婚相手だからだろ」
「ダイチさんて、ワノツキって名字だったんだ。ふーん、それなら大丈夫か」
二人の会話はそれで途切れた。

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