Aqua blue | ナノ


▼ 7

「知ってるのか、シンを」
「知ってる」
「そうか」
だって、シンはオレだもんな。
「この話しはこれで終わりだ。お前には喋り過ぎた」
そう言って屋上から出て行った。


わっかんねーっ!
アイツ、シンに会いたいんじゃねーの?
いや、もう会ってるけどさ。


ぶらぶらと教室に向かいながら廊下を歩く。
1時間目が始まってるせいか廊下に生徒の姿はない。

このままサボるかと方向を変えた。
バスケ部の部室。
そこにイケガミがいた。
なぜか咄嗟に隠れた。
イケガミはオレのロッカーの前に立って、ロッカーを睨みつけていた。


「シン、判らないはずないだろ。アラタが本名なのも知ってるさ」
イケガミの独り言。
タバコを取り出すイケガミ。
部室の窓を開け、窓に寄り掛かり、タバコを唇に置く。
「あっくそっ、ライターアイツに渡したままじゃん」
オレの手の中にライターがある。ずっと持ったままだった。
イケガミは内ポケットからジッポを取り出し、タバコに火を着けた。
窓の桟にジッポを置いた。ジッポには十字が彫ってある。
そのジッポに見覚えがあった。失くしたと思っていたオレのジッポだ。
なんでイケガミが持ってる?
しかも、判ってたんじゃん、オレの事。
「バカじゃん、俺」
ぽつりと呟くイケガミの声。

携帯電話を取り出して何やら打ち始める。
誰かにメールを打っているのだろう。
「シン」
名前を呼ばれてドキリとする。気付かれたか。
じっと携帯の画面を見ていたかと思ったら、イケガミは携帯電話を投げた。
「忘れろ、スバル」
イケガミはため息をついて窓の外を見上げた。
イケガミはこっちに背中を向けている。
携帯はドアのすぐ側。
手を伸ばせば取れる。
打っている途中で投げたから、上手くボタンなんかに当たっりしてなかったら、イケガミが何を打ったのかわかる。

なんとなくメールの内容が気になった。

そっとドアの隙間から手を伸ばす。
音をたてないよう気をつけながら、ゆっくり携帯に手を伸ばしていく。

ガンッ

びくりと手を引っ込めた。
イケガミが側にあるロッカーを拳で殴った音だった。
「あーーっ、くそっ」
叫ぶと窓の桟でタバコを捻り潰した。

そこでイケガミの携帯がなった。
聞いたことのない曲が着信音だった。

やばいとオレはその場から離れた。

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