スピンオフPink chanmery | ナノ


▼ 8

「大地」
「……俺、すごいいっぱいいっぱい。ごめん」
「俺だってそうだよ」
平気な振りをしてるだけ。

隣に大地がいて話してる。それだけで貴大は有頂天になっていた。

大地は疲れているだろうに、本当に閉店までいてくれた。眠そうにしていた。

それでも貴大を意識してるのかそわそわしている。

「帰ろう」
閉店の後の片付けの後、大地に声を掛けた。大地がびくりと顔を上げた。

「あ……、寝てた……」
「え、マジで?」
聞き返すと大地は恥ずかしそうにそっぽを向いた。

「仕事柄、どこでも寝れるようになった、から」
「大地の特技じゃん! すごいよ!」
「そかな」

駅まで歩いてタクシーを止めようとして大地に止められた。

「歩かない?」
大地の顔は、話ながら帰りたいと言っているように思えて頷いた。

「大地はどうして刑事になったんだ?」
「就活して受かったから。ことごとく就活の面接落ちまくったし。受かったのが警察だったってだけだよ」
「ええっ、こー、なんていうかドラマ観て刑事になりたいとか……」
「貴大、夢見すぎ。ドラマと現在は違うし、ドラマはドラマだよ。中にはそんな奴もいるけれど」
おかしそうに大地は笑う。

「俺、刑事ドラマ好きなんだよ」
「夢、壊してやる」
笑いながら大地は歩く。

「貴大は、なんでホストなの?」
「手っ取り早く稼ぎたかったから」
「そっか」
「でもなかなか……」
「稼ぐって大変だからね。頑張ろ」
「ああ」
今までヒモだった。だから手っ取り早く稼げるだろうホストになった。

「貴大、稼がせてあげる。何人か女の子、宛があるから。でも彼女らが、一度で終わるか続くかは貴大にかかってるのを忘れないで」
「あ、うん。どんな人」
「銀座のホステスだよ。プロだからね、彼女らは。楽しみにしてて」

大地の住むマンションに辿り着く。

鍵を開けてリビングに歩いていく背を追いかける。

リビングはこの前来たままのようなそんな印象を受けた。

ホントに忙しいんだなとわかる。寝に帰るだけの家。

もしかしたら、家主以外でこの部屋に滞在したのは貴大が次に長いんじゃないかと思わせる。それくらい、他人がいた気配はない。

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