スピンオフPink chanmery | ナノ


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「ここで何度かホストしたことあるんだよ」
嫌そうに、弾は呟いた。

「お前、上行きたいなら、よく見とけよ。周りを。んで、考えな。女の子が何求めてんのかとかな」
閉店まで弾は貴大に付きっきりだった。ホストとして弾に学ぶものは多かった。

明け方、弾と共に寮へ向かう。

そういえば、大地に会えなかった。

「来いよ」
蓮華専用駐車場に弾は車を置いていた。

「寮生活なんかできるかよ。お前の荷物取ったらおれン家な。一応、オーナーにはオッケー貰ってるから」
東雲組屋敷に行くんだと思ったが違った。

「一人暮らしだから」
弾の住む家は渋谷の道玄坂だった。

「駅前の人の多さと、松濤の住宅街の静けさ、どっちも好きでさ」
弾の家は一軒家だ。

中に入れば意外と片付いていた。

「軽くなんか食う?」
「何、あんの?」
「そうだな。作れば、パスタ。あ、生姜焼きがある。昨日の残りだけど」
「生姜焼き?」
「昨日、昼、作りすぎた」
「弾が作ったのか?」
「他に誰作るんだよ」

弾が料理するようには見えなかったから、驚く。

「お前は? しないの?」
「ヒモしてた時に、置いて貰ってるからたまに」
「できないわけじゃないんだ?」
「まぁな。一応、一通りはできる」
「じゃあさ、腕治っでここ出る時、飯作ってよ。いいだろ?」
弾は楽しげに言うと冷蔵庫から生姜焼きを出した。

あっためたご飯と生姜焼きに味噌汁、サラダ。

生姜焼きは旨かった。

「弾、マジ、一人暮らし?」
「ああ。まぁ、家出てるとは言え、飯も向こうで食うし、泊まるし、あんまり活用されてないけどな。ここ。でも、おれには必要な場所だな」
「ふうん」
そういう場所さえないのが貴大だった。手に入れたくてもできない場所だった。今の貴大には。

その後、弾は風呂場で髪を洗ってくれた。包帯が巻かれた腕にはビニールが被せられている。

自分で出来ることは弾は手を出さなかったが、出来ない事は至れり尽くせりやってくれた。

弾との生活は意外と楽しかった。縫った腕も日にちがたつにつれ良くなっていく。

その間も貴大は大地に会えていなかった。鍵を返そうにも返せない。大地は店に来ると書き置きを残していたのに。

「弾、病院行く前に新宿署に行ける?」
「新宿署? あの刑事に会うのか」
「無理?」
弾の問いには答えずに聞き返した。

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