スピンオフPink chanmery | ナノ


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出勤するとオーナーに呼ばれた。
部屋には組長と若頭。

「飛路、座って」
「……はい」
丁度向かいに若頭が座っている。貴大は目が合わないようにして座った。

「まず、飛路に報告があって、里香さんの事件は犯人が捕まりました」
「……ホントに?」
「先程、神谷さんから電話がありました」
「誰? 犯人、誰!」
じっと要オーナーは貴大を見て、答えた。

「マーメイドの店長だよ」
「……そう。あの人だったのか」
ソファーに崩れるようにして、貴大は目を瞑る。

里香の魂が空へ、自由になりますように。
心の中で祈る。

「飛路」
ぽんぽんと肩を叩かれる。

「リカ、もう大丈夫……?」
「きっと笑って天国の階段を登ってる」
要オーナーが呟く。それに小さく頷いた。


ありがとう、タカちゃん。
リカの声が聞こえた気がした。


顔を上げれば何もかも知っていそうな瞳を向けた要オーナーがいた。

「そうか、飛路は飛路のやり方で彼女を弔いをしていたんだね」
「え?」
「こう……、見上げるように天井を見て目を閉じて、酒を飲む。なんだろうって思ってた。空を見てたのかと今気付いた。大丈夫、彼女は飛路に礼を言って旅だったよ」
まるで彼はリカの霊がいて、視えていたかのように口にした。

「礼を言った……?」
「ありがとう、タカちゃんってね」

ああ、この人、視える人なんだと。普段なら霊なんて信じないし、胡散臭い。でも、リカの声とオーナーが言った言葉は一致していた。

「声だけ、聞こえた気がする」

大好きだったよ、リカ。
バイバイ、リカ。


暫くして要オーナーは組長に向き直った。その時、組長と若頭もこの部屋にいた事を思い出した。

「その腕の傷が治るまで一切の責任は東雲弾が取る。勿論、治療費も払う」
組長が静かな声で貴大に言った。

「弾も納得済みだ。掛かった費用を請求してくれ。病院への送り迎えもしよう。利き腕の怪我だし何かと不便だ。そこは弾がフォローする」
「えと……、フォローって」
「弾もホストとして蓮華の寮に入る。こき使ってくれ」
正直、やりずれーと思った。

「やりずらいだろうが、いて便利だ。もう怪我はさせない。それはこの俺が保証する」
組長に言われたら断れない。相手は極道だ。

「……わかりました」

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