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「このことは聞かなかったことに。いいですね?」
こいつは顔だけのお飾りオーナーじゃないと感じた。
ジャニーズ顔をした幼顔の要オーナー。甘く幼い顔に騙されるそうになるが、侮れない人なのかもという考えが浮かぶ。オーナーになるくらいだ。
有無を言わせない何かを、この要という人は持っていた。
コンコンとノックの音がして、貴大が顔を出した。
「おかえり。早かったね」
後ろから組長と若頭も入ってきた。
警察と極道が相(アイ)まみえるオーナールーム。なかなか見れるものじゃないなと他人ごとのように思った。
「警察に電話したのか、要」
組長の問いに、
「いえ。飛路に用があったようで」
と、答えていた。
組長がソファーに座る。
「話?」
貴大は大地に目を向ける。
スーツを着ているせいでどこを怪我をしたのかわからない。スーツで隠れてしまう場所なのだろう。
「盗難の事で他に知ってる事ないかと」
大地は貴大を見る。
「え、他に? あったかな……」
「他に誰かが盗難にあっていたとか、誰かが怪しいとか」
「はっきり言ったわけじゃないけどいるのかなって思わせる言い方はしたよ。怪しいなら店長」
「店長?」
篠山が、大地が口を開く前に聞き返す。
「セクハラして来てキモイとかさ、言ってて。セクハラしてんなら怪しいじゃん。そういえば、リカが体調崩して休んだとき、家に来たぜ。毎日。フツー来る? まぁ、リカは店長嫌ってたし部屋には俺いたから部屋には入れなかったけど」
「ふうん、店長ね……。ありがとう、すごく参考になったよ」
「そう?」
首を傾げて篠山を見て、その目が大地を見た。
「飛路、今日は帰りなさい」
そこに要オーナーの声が貴大に飛んだ。
「え」
「飛路の代わりに若頭が店に出てくれるそうなので」
「はぁ!?」
若頭が声を上げる。
「あれ、若頭、言いましたよね?」
にこりと要オーナーは若頭に笑いかけた。
「やってやれ、弾」
組長がクッと笑った。
チッっと舌打ちして若頭はオーナールームを出て行った。
「あ、刑事さん達、もう用はないですよね。飛路を寮まで送ってあげてください」
要オーナーの瞳は、さっさと出て行けと雄弁に語っていた。
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